短歌 連作

独楽 税込み5円

傷のあるベイブレードを探し出し一人で回す一つで回る

何度目の『燃えよドラゴン』擦り切れて 鏡よ鏡 僕とは何だ

こう見えて母ちゃん美人だったのよ いろいろあってこうなったのよ

夏の夜 花火を空に固定して例年よりも暑い昼です

5年越しミッキーのカチューシャを折る 賞味期限の切れてる空気

思い出とともに生きたいはずなのに残留思念と暮らしてしまう

「おかえり」のおばちゃんいずれ見なくなり、訃報を家の解体で知る

錆びついた星に置いてあるラジオ 「独りでも楽しめる独楽 税込み5円」

マヨネーズ 入れていいのかだめなのか 正解のなくなったキッチン

君となら通信障害起きたって 矢文で乗り越えられる気がする

踊り場に突き刺さってる日本刀 切り刻まれたラブレター屑

グラウンド 鉄棒 裸眼 子供たち 見たい見れない金環日食

インスタに載せて保存する青春 22年と24時間

鍵だけが私の居場所 お守りの代わりそれでも貸家。いつかは

思い出があるたびキティちゃん増えるリュックが少し開けにくくなる

空を飛ぶ思い出抱え眠ってるプテラノドンを抱き回る地球

病弱な少年イーブイを抱えて満員電車に揺られる午前

つまらない夢オチなんか乗り越えてもっかい一緒に夢見ちゃわない？

海岸に打ち上げられたヒトデ見る昼まだ空は高い 汗ばむ

擦ってる跡あるサイドミラーを見る安全運転で海に行く朝