第6話休日も変わらない先輩

私は恐怖と緊張を抱きながら、慎城家の前で深呼吸を繰り返し、落ち着いてからインターフォンを押した。

現在の時刻は9時40分だ。

一度押しても返事がなかった。三度鳴らして、玄関扉が開き、寝癖で所々跳ねた髪のままで黒の腹部が露出し、臍が出たキャミソールを着て太腿の付け根まで露出するグレーのドルフィンパンツを履いた慎城茉央が姿を現した。

「はいはぁ〜いっ、こんな朝からだぁ——魁華ぁあーっっ!?来るなら連絡してよ、魁華ぁっ!」

「ご、ご迷惑でしたか……?ご迷惑でしたよね……すみません、慎城先輩ぃ」

不機嫌な声音だった彼女が私の姿で普段の高い声へと変えて、笑顔を浮かべた。

「迷惑なんてことっ……謝らなくて良いよ。どうしたぁ?今日、魁華を呼び出してないのに来て?」

「えっと……そのぅ、慎城先輩を尾行したあの日から呼び出されなくて、なにかあったのかと……」

「あははぁ……そうかぁ。なにもないよ。魁華が私のこと、独占したくなってるなんて……私の躾が上手くいったようね。私と気持ちよくなりたいなら、もっと——」

ご満悦そうに恍惚な笑みを浮かべて、誤解したことを発し続ける彼女。

「私はそういうことを言ってるんじゃ……!あのっ、変な目で見られてますから!そろそろ上がりたいっ……」

「そうね、此処じゃあれだから。さぁさぁ上がって!」

「はいぃ……」

私は慎城の近所での評判が気になった。


私は用意されたスリッパを履いて、彼女の背中について行く。

リビングに脚を踏み入れると、彼女に飲み物を聞かれた。

「何が良いかしら、魁華?遠慮せずに飲みたいものを言って。もしかして、私が気持ちよくなって出す濃厚なアレをご所望かしら?」

「朝からそんなことやめてくださいっ、慎城先輩ぃっ!うぇっ……」

私は声を荒げて、思い出し、えづいた。

「えづくことないじゃない、魁華ってばぁ〜!はいはい、水よ。飲んで、ほら」

えづく私に水道水を注いだグラスを持って駆け寄り、背中を摩り、グラスの水道水を飲ませる彼女。

「はぁ、ふぅ〜!私は慎城先輩と違って、あの臭いは苦手で慣れないんですよ……!」

「じゃなんで断らず、飲んでくれるの……魁華?」

「それは……」

私は彼女の投げかけられた疑問に、右手で顔を隠し、言い淀む。

「それは?何よ、魁華……」

彼女は勢いのある追及をせずに、静かに訊いてきた。

「……なぁっ、なんでもありません!こ、紅茶が良いです!」

私は彼女に要望を告げ、リビングを出て、慎城の自室に駆けた。


私は認めたくなくて、本音を彼女に告げなかった。


私は彼女の自室に駆け込み、勢いよく扉を閉め、両手で顔を隠し、呼吸を整える。

扉に身体を預け、はぁぁあああぁぁぁぁ〜〜〜と羞恥心が湧いて溢れてきた。


私は自慰行為オナニーで慎城茉央に絶頂かされているのを思い出しながら致している。

私は慎城茉央かのじょに絶頂かせられるのが、気持ちよくなっていた。

私の普通ノーマルな性癖は既に破綻していた。

好きになった男子に抱かれて——といった憧れは、慎城茉央の手に、舌によって終えた。


日曜日の朝、思考が乱れていた槇村魁華だった。



慎城先輩、責任……取ってくれるよね?

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