第5話不審者?
私が一人で下校していると、前方の駅前の街路樹の側で慎城が黒のプルオーバーパーカーのフードを深く被っている人物と向かい合って佇んでいるのが視界に入った。
慎城と黒のプルオーバーパーカーを着ている人物は微動だにせず、佇むだけだ。
彼女達を通り過ぎていく通行人は怪訝な反応を見せる。
プルオーバーパーカーの人物が男性か女性か、判断が難しい。
フードで隠れていない部位は、鼻から下で、唇と顎しか判断材料がない。唇は女性らしい膨らみが窺え、日焼けしてない白い肌だ。
私が建物と建物の物陰に隠れて、偵察を続けているとようやく慎城達が動き出した。
プルオーバーパーカーを着ている人物が慎城の右腕の手首を掴み、連行していく。
私が慎城達を尾行すると、20分も経たずゲームセンターの前で不審者が脚を止め、立ち止まる。
はて、と首を傾げた私だった。
慎城に素性を隠したままにゲームセンターへと連行するような、物好きな不審者が居るのか?
私は尾行を続け、ゲームセンターへと脚を踏み入れた。
二人は格ゲーをプレイし、振動する銃で出てきたゾンビを撃ち合うゲームをプレイし、クレーンゲームでアニメのフィギュアを獲ることに熱中し、首の下から腰までのサイズほどの動物のぬいぐるみのクレーンゲームに移動した。
最後に二人が向かったコーナーは、プリクラ機が密集した場所だった。
二人がプリクラ機に入ってカーテンを閉めたのを確認し、椅子が置かれたスペースで偵察する私。
私が自動販売機でカルピスを購入し、喉を潤わす為にひと口飲んだ瞬間に、スマホがSNSのメッセージを受信した通知音を鳴らし、ペットボトルを落としそうになった。
『魁華、ゲーセンに居るってこと、ないよね?』
スマホの画面に表示された慎城からのメッセージに、身体が震え出した私だった。
はっ……はわわわぁあぁぁあああ。
私は恐怖で指が震えて、上手く打ち込めずにスマホの画面と慎城が入っているプリクラ機を忙しなく見た。
「槇村さんっ、やっぱりゲーセンに居たぁ〜!私を尾行とは——」
「しぃっ……ししっ、しんじょ……慎城ぅせんぱぁいぃ……すぅ、すっすみませんでしたっ!」
慎城の声が頭上から聞こえ、見上げると彼女が私を絶頂かせようと画策した際のにんまりした笑みを浮かべ、腰に手を当て、佇んでいた。
「槇村さんは、バレた際の精算を心得ながらも尾行を決行したんだよね?」
「それは……そのぉ〜」
「隣の奴は……訳アリの奴なだけで、槇村さんに興味なくなったわけじゃないから。嫉妬しなくて良いのよ」
「嫉妬は……」
「私が恋しくなったのなら、それはそれで嬉しいわね……今日のところは、一人で帰ってくれないかしら、槇村さん?」
「はっはいぃ!そうさせていただきますっっ!」
私は慎城からの深い追及を逃れ、ゲームセンターを飛び出した。
あぁぁ……慎城先輩がお怒りだぁ〜……
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