第4話 追放された英雄
…ここは?
私は確か資料室で襲撃を受けて…
そう考えていた私は体を起こそうとする。そうすると体に違和感がある。
「魔力が…使えない」
それに加え手首に鎖が付いている。
「シルフィーは…!!」
辺りを見渡してみると私は牢屋に入っておりシルフィーは反対側の牢に入れられていた。
息はしている。
生きてる。よかった、と私は安堵する。
シルフィーの無事を確認できたので私はどうやってこの場所から脱出するのか考える。まず、手に付けられている鎖には吸魔の力が備わっており力ずくでの脱出は困難だ。だから、他の策を考えないと…ヘアピンでもあればピッキングができるんだが生憎、私はヘアピンを持っていない。
「…起きてたのか」
兵士が入ってきた。
「飯だ」
食料とスプーンを渡してきた。
「…ありがとう。それで?なんで私は捕まっているんだ?」
「しらばっくれるつもりか?反逆者が」
「反逆者…」
そうか。そうなのか。私は嵌められたんだな。ああ、やられてみれば案外何も思わないもんだな。憎いとか悲しいとかより虚無感が先行している。国に対する忠誠心が特別高いわけではないけれどこれ程、国に貢献したのに私は仲間にも、国にも裏切られた。もういい。とにかく逃げる。国とか仲間とかどうでもいい。今すぐ逃げよう。
「食い終わったか?」
「ええ」
私は食器を看守に差し出すふりをする。そして、看守が十分に近づいた瞬間にスプーンの先の部分を千切り首筋に刺した。
「が…な、ん…魔りょ、くは…使えない…はずじゃ…」
「これくらいなら素の力で出来るわよ。これ、借りるわね」
そう言いつつ看守から鍵を拝借する。
鍵で自分の手枷を外し牢の外へと出た。
「さてと、シルフィー!起きなさい」
私はシルフィーを叩き起こす。
もちろんシルフィーの手枷も外してある。
「ここは…」
「たぶん魔導連隊捕虜収容所だと思う」
「何で…」
「私たちは反逆者に仕立て上げられた。早くここから逃げるぞ」
「…どうして」
「すまないな。私がもっと本気で対策していれば…」
「…大丈夫です。私はシェラーさんがよくて付いてきたんです。だから、謝る必要なんてありませんよ」
「…ふふ、ありがとう。じゃ、逃げようか」
私達は廊下に出る。
「誰なんでしょう…私達を反逆者に仕立て上げたい人なんて」
「いるよ。たくさんいる」
でも、そいつらは私達をどうこうできるだけの武力を権力も持っていない。
「軍人が協力していたってことは軍属の人間の可能性が高いですよね」
「軍属…まさか、参謀総長…」
「…噂が本当なら一番怪しいですね」
「少しここの事務室にでもよっていくか」
「…来ますよ」
「なるべく音は出さないように、奇襲する」
シルフィーは先ほどの看守から拝借した拳銃を構える。シェラーは立て掛けてあった剣を構える。
「なぁ、本当にシェラー元少将は反逆したのか?」
「参謀総長殿が直接、確保したんだぞ?嘘な訳あるか」
「…」
『ルーイ・アル・シェラー、ライヒアルト・シルフィーが脱走!!繰り返す!!ルーイ・アル・シェラー、ライヒアルト・シルフィーが脱走!!職員は戦闘準備をせよ!!』
アナウンスでそう叫ばれている。
「3,2,1で行くよ」
「分かりました」
「3,2,1GO」
廊下の角から私とシルフィーは飛び出す。
「なッ?!」
「撃てッ!!」
奇襲に多少の動揺こそあったものの直ぐに反撃の態勢を整えてきた。
私は近くの兵士二人を叩き切る。
そして、シルフィーは拳銃で離れていた三人を撃ち抜いた。
「クソッ!!こんな…」
最後の兵士を斬る。
「これで全員かな」
「恐らく」
「んじゃあ少し資料を漁っていこう」
…これは
「この
「貸して」
「はい」
私は
「少し待って」
この魔道具はとても多くの封印術式を施されており一筋縄ではいかないようになっている。こんなものは市井では売っていないだろうしそれにこんな素材でこれができるなんて参謀総長しかいない。
「あ、開いた」
カチンと音を立てて鍵が開く。
「…」
私は中から出てきた資料を見て絶句する。覚悟はしていた。予想もしていた。だが、実際に見てみると来るものがあるな。
「…首謀者は参謀総長だ」
「そう、ですか」
「首謀者が参謀総長となると国内にいるのは危険ね」
「そうですね。少なくとも陸軍は敵に回ることになりそうですね」
「となると国外に行かないとね」
「取り敢えずここから出ましょうか」
私達は道中危ない場面こそあれど発見されることはなく外に出られた。
「さて、ここからどうする?」
「そうですね、国外に行くことは確定としてどこに行くかですね…西ルカアギュア諸国は論外として元帝国領であったキルターナ連邦共和国、アルステリアール共和国連邦ですね」
「共和国連邦はダメじゃないか?秘密警察に私たちが共和国連邦にいることがばれたら追い回されるわ。消去法でキルターナね」
「そうですね。でも、どうやって国境を越えましょうか…」
「最悪、強行突破するけど一つ、心当たりがある」
「何ですか?」
「キルターナ連邦共和国諜報部に少し伝手があってね、そこに取引を持ち掛けようと思う」
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