第2話 連邦の英雄

誰か…助けて…


ぐちゃ


肉が潰れる音がする。

「え…?」

いつまでたっても弾が飛んでこない。恐る恐る目を開けてみると帝国兵は潰れてい死んでいた。

「大丈夫?」

「?!」

全く気配がしなかった。でも、私を助けたから味方なはず。声のする方へと顔を向けるとそこには私よりも少しだけ年上の女性がいた。

「ありがとうございます。貴女は?」

「私はルーイ・アル・シェラー中佐です」

「ライヒアルト・シルフィー大尉です」

私は少し疑問に思った。この戦域に配置されている佐官にこんな名前の人はいないはずだった。欠員も今回の戦いまで出ていない。今回の戦いでは恐らく佐官からも死者が出ているだろうが参謀本部がそんなすぐに事態に対応できるとは思わない。要するにこの人は事前に此方に配備される予定の人員だってことだ。

「援軍ですか?」

「う~ん…そうねぇ…連れてきたのは50人ほどよ。これを援軍と呼べるかは分からないけどね」

「まさか、第三位階…」

「いいえ。私は第一位階。大隊員の皆が第三位階ね」

「え?」

この世界の魔法を使う魔術師がおり魔術師には階級がある。第一位階から第五位階まである。魔術師は常人よりも圧倒的に強い。第五位階ですら一個小隊に匹敵し第一位階であるならば最低でも一個大隊レベルの戦闘能力はある。

「まさか、精鋭の第一魔導大隊…」

「その中でも精兵揃いとされるνニューよ。ほら、呆けていないで早く立って後方に下がるわよ」

「は、はい」

丁度、移動を始めようとしたところに多くの人間の声が迫る。

「…」

「味方…ではなさそうですね」

シェラーはシルフィーに弾薬を渡す。

「戦闘準備をして。貴女の拳銃じゃ心許ないから私のSMGを使って」

「ですが、それでは中佐が…」

「私、剣の方が得意なのよね。だから心配しないで」

そういう問題ではない、と大尉は思った。たが、魔術師は何かとかさばる銃器を持って戦うよりも一撃一撃に威力を込められる剣や斧、弓などを好む。

「さーて、お相手さんは…」

シェラーが魔法で索敵する。

「不味いわね。中隊規模よ」

「退避しますか?」

「いいや、貴女は少し下がって戦闘に巻き込まれないようにしながら援護射撃をお願い。直接の火力は私がやるわ」

「…はい」

有能である、とシェラーはシルフィーの事を評価した。いくら軍人とは言え自分と同じくらいの歳の人間をおいて逃げろと言われれば多少迷うだろう。だが、シルフィーは一瞬の逡巡だけで済ませ口には出さなかった。軍人としてはすこぶる優秀と言えるかもしれない。

「さて、君たちはどこまで耐えれるかな?」

「総員、突撃!!」

「…灼熱地獄ヘル・バーニング

「く…」

シェラーの周りには途轍もない温度の炎が現れる。だが、相手も優秀な帝国軍人。その魔法の危険性を見抜き後退する。

「…射撃用意」

「ずいぶん悠長ね」

「斉射!!」

「魔力障壁」





side:シルフィー

「大丈夫かしら」

私はそう呟きながらサブマシンガンに弾を込める。

「…呆けてないで撃たないと」

私はSMGの射程ギリギリの場所から相手を狙う。

「っ?!新手か?!」

帝国兵は誰もいない森林から撃たれたことに混乱している。今がチャンスとばかりに私は接近し手榴弾を投げる。手榴弾が爆発すると同時に私はSMGを乱射する。

「クソっ!!只でさえあの魔女の相手で手一杯だってのに!!」

どうやら中佐は上手くやっているらしい。







side:シェラー

「チッ」

弾幕が激しく反撃の隙がない。防ぐだけではいつか魔力切れを起こす。耐えてばかりではダメだな。



ドォォォォン



近くで手榴弾の爆発音が聞こえる。

「…大尉、後方支援に徹してと言ったのに…」

だが、非常に助かった。これで隙が出来た。

「反撃と行きますか」

私は魔方陣を組み上げる。

「『黒嵐雷雨ブラックストーム』」

この魔法は広範囲に雷と竜巻を起こさせるものである。これにより相手の部隊は多くが戦闘不能となり撤退していった。

「ライヒアルト大尉、さっさと撤退しましょう」

「そうですね。中佐」

そうして私たちは後方拠点にまで撤退した。

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