世界を救いし英雄は今日も気儘に生きてゆく

黒砂糖は甘い

第1話 これまでの世界

神記歴1348年

キルベターナ帝国を形成する自治領の一つであるアルチュニス自治州の州兵が帝国に独断で西ルカアギュア連合条約の加盟国であるアシュリティア第四共和国国境を越境。それに対し共和国は軍を動員しそれを迎撃、殲滅。この国境紛争にて自治州は700名、共和国軍は1500名が動員され死者は両軍合わせ1000名を超えた。クラール連合王国を通じ即日、帝国に抗議文を送付。ただ、帝国はその抗議文を無視。反対に共和国に対し全土併合を求める最後通牒を送付。だが、やはり共和国は拒否。もともと共和国とアルチュニス自治州のあるグロール地方では紛争が絶えず過去に帝国が失った土地の一つでもある共和国との開戦理由ができたことにより神記歴1349年2月21日、キルベターナ帝国はアシュリティア第四共和国に対して宣戦布告。共和国と同盟を結んでいた連合王国、そして連合王国が盟主を務める西ルカアギュア連合条約の殆どの加盟国が即日参戦。帝国はまず、共和国を総勢37万人の兵力にて侵攻を開始。それに対して共和国は15万人で応戦。だが、平和ボケしていた共和国と軍事国家として完成されていた帝国の軍では天と地ほどの質の差があり魔導機甲師団を用い約1か月半で共和国全土を制圧。その後、帝国南部にある連合条約加盟国主要な国であるルードア共和国を魔導軍集団麾下第七、八、十五魔導騎兵師団、第一、三、七、九、十四、二十魔導歩兵師団、第二歩兵軍集団を動員し簡易的な電撃戦を実行。これにより不意を突かれたルードア軍はここで七割以上の軍が壊滅。その後、帝国は大陸上にあり国境を接している連合条約加盟国を制圧していった。ルカアギュア大陸における最大ともいえる軍事拠点であるルードア、アシュリティアが陥落したことによりまともに抵抗できず直ぐに制圧されていった。これにより、連合条約は大陸での橋頭保を失い、この後数年間、海峡を挟み帝国と連合王国はにらみ合うこととなる。連合条約が大陸から撤退していったことにより大規模な陸戦が発生することがなくなり約二年程度大陸にはつかの間の平和が訪れた。

この二年間は後に『幻想の二年』と呼ばれることとなる。

神記歴1352年8月14日、帝国はアルステリアール共和国連邦に対し宣戦。これにより、再び大陸にて戦端が開かれることになる。1352年から1354年にかけては帝国側が優勢であり主要都市を抑えたが共和国連邦は広大な領土を生かしそれ以降戦線は停滞することになる。

1356年5月7日、クラール連合王国の要請によりザドラム連邦が参戦。ただし、帝国と国境を接していたことと膨大な工業力を保持していたこともあり帝国はザドラム戦線には約100万人の歩兵、そして、約2000両の魔導戦車を配置していた。これにより、参戦と同時に帝国による大規模な攻勢が仕掛けられた。だが、連邦は総兵力約300万の兵力により迎撃。ここから数年間続く地獄の戦端が開かれる。






「はぁ、はぁ、はぁ…」

何で、私はこんなところに…

私は世界のために、連邦の為に軍に志願した。前線に配備されたときやっと戦えると私は歓喜した。でも、実際には前線は戦場ではなかった。地獄だ。生きて帰れる人間の方が少ないかもしれない。私の所属していた隊はすでに私以外全滅した。敵が仲間を撃ち殺し仲間が敵を殴り殺しその仲間を敵が絞殺す。そんなのがそこらで繰り広げられている。この戦線は特に帝国の攻勢が激しい地域だと聞いているが今どきどこでもこうだろう。味方も恐らく壊走している。もうこの戦線の維持は無理かもしれない。私も死ぬかもしれない。嫌だ。こんなところで、死にたくない。そう思い私は走る。

「う…」

誰かにぶつかった。

「お、こいつ、連邦兵じゃねぇか」

不味い。帝国兵だ。死ぬ。もう、弾も何も残ってない。誰か…助けて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

世界を救いし英雄は今日も気儘に生きてゆく 黒砂糖は甘い @satouhaamai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ