第3話ホテル休憩タイム2
「シャワーを浴びたばかりだからか、いい匂いがするね」
園崎さんを後ろから抱きすくめながら、耳元で囁く。
園崎さんの首元からは甘くていい匂いがして、俺の脳を
「前原さんって……間近で見ると、とても整った顔をしていますね」
園崎さんは、真っ赤な顔で照れながら言った。
顔が整っているのは、俺の種族特性だろうか? よく見たら、は余計だが。
俺は、捨て子だった。出自はわからないが、日本の吸血鬼は
「ありがとう。じゃ、いくよ?」
「優しくしてくださいね」
初めてだからだろう。彼女の表情と体は怯えを含んでいて、硬い。
そんなところも、可愛くて愛おしいと思う。
「俺にこれをされるの、むしろ気持ちいいらしいよ?」
彼女を安心させるように囁いた。
そして、固く尖った俺のものを彼女に押し当てて、ゆっくりと慎重に挿入していく。依頼通り、優しく。挿入前に十分濡らしておいたので、痛みはそれ程無いと思う。
「あっ。あー〜♥」
♠
「もっ、もうダメ〜」
俺の内ももを軽くつねる園崎さん。
名残惜しさを感じながら、俺は彼女の首につきたてた牙をゆっくりと抜いていく。
俺の体液は、催淫効果と治癒効果がある。固く尖った牙を突き立てても挿入時に痛みを感じるようなことはなく、むしろ、とても気持ちいいらしい。
園崎さんの首を舐めて、穴のあいた首筋を治癒させる。
「蚊みたいな生態をしてる」とは、ヒーロー協会・主任科学者である詩音の
蚊が吸血するのは、産卵期のメスだけだし。
「美味しすぎて、つい」
園崎さんの血は、高級な美酒に酔いしれるような余韻がある。滑らかで、ビロードのような味と形容するべきか。ビロードを飲んだことはないし、こんなに美味しい人間の血も飲んだことがないが。
(病みつきになりそう。しかし、この味は……)
血を飲む前に俺が吸血鬼であることを説明し、量も献血程度と説明したが……。園崎さんの血が美味すぎて、ワイングラス1杯分くらい飲んでしまった。
確かに人間の血でこれほど質が高くて美味しいのは、飲んだことがない。だが、人間に限定しなければ、経験がなくはないのだ。
この味に匹敵するのは……
(もしや、あのお方の……??)
血の味が“ヒーロー”や“怪人”の遺伝的素質の高さを反映するか? この仮説、詩音に話したら、とても興味を示しそうだ。
「ハァハァ……私の血は……そんなに…美味しかったですか?」
俺に血を吸われるのは、本当に気もちいいらしい。園崎さんは、上気した、いわゆるメスイキ顔で言った。
なんか、とてもエロくて素晴らしい雰囲気である。
「うん、最高に美味しかった。病みつきになりそう。……園崎さん、早く大人になってお母さんに楽をさせてあげたいって言ったよね?」
俺は、園崎さんのエロいメス顔を堪能しながら聞く。
この血をもう吸えないってのは、おしすぎる。是非ともこの娘との、縁をつなげなくては!
「言いましたけど」
俺の身の上話のついでに園崎さんの身の上話も聞いたのだ。必死で働く母親の助けを早くしたい。と彼女は健気に言った。
「俺のところでバイトする気はない?」
「献血のアルバイト……ですか?」
「……社会見学という意味もあるかな? 君、ヒーローの素質があると思うんだよね。給料もはずむよ」
「本当の……ところは?」
「ヒーローの素質があると思ってるのは、本当だって! 献血もして貰えると、大変ありがたいのも確かなんだけど。俺が飲む血の分は、栄養価の高いご飯を提供することで補うし。まかない付きってことで」
「これを…しょっちゅう…されるわけですか?これ、けっこう、そのぅ……きついんでけど。……何か、開けてはいけない扉を無理やりこじ開けられてしまったような? これは…前原さんに責任を取ってもらわないといけない事案なのでは?」
上気した顔で俺へ顔だけ向けながら可愛くにらみつける園崎さん。
事案って……
「責任……それは、不死者の世界を体験して貰うことで果たすとして……献血もしょっちゅう、というわけでは。満月の時以外は要相談ってことで、どう?満月の夜だけは吸血衝動が押さえられないんで、ごめんなさいだけど。給料はそうだなぁ……時給3千円でどう?
学生であることを考慮して週2日程度、1日4時間働いていてもらうとして、月9万6千円程の収入になる計算だけど。お母さんに楽をさせてあげたいんだろ。君の将来のために、お金を貯めてもいい」
悪くない話しだろう。
俺の身の上話しを聞くついでに園崎さんの身の上話しも聞いた。なんでも、お父さんを早くに亡くされたとか。
そして、
園崎さんは、「早く社会に出て、お母さんに楽をさせてあげたい!」と言ったのだ。
だから、献血も込みで時給も奮発したつもり。
S級ヒーローは、独立開業することが許されている。その仕事の内容は、日夜のパトロール。怪人の犯行は見つけ次第、討伐もしくは、捕縛することも許されている。主な収入源は、ヒーロー協会から支払われるその報酬である。(契約料/月100万円の他、怪人討伐報酬が随時入る)。その他、怪人関係の事件は、警察から捜査協力を求められるなど探偵業のような仕事もしている。ヒーロー協会の非常勤講師もしている。今のところ収入には全く困ってない。園崎さんの給料も問題なく払える。
「月9万6千円……時給1000円超で4時間アルバイトしても、週3回で5万円くらいにしかならないし…いかがわしいバイトの収入程でもないし。うーん……」
「ヒーローの仕事は、いかがわしくないよ(苦笑)。危険が伴わない。とは言えないけど、君の安全は絶対俺が守る」
そう断言して、園崎さんを抱く力を少し強めた。
「ま、守る? 絶対?」
園崎さんは、抱きしめる俺の手をぎゅっとつかんだ。
(お、何かが刺さったな)
ここだ!
「うん。絶対だ!」
「あの筋肉で……守って貰える♥ ……いい♥ そういえば…さっき横抱きされたのも、とても良かった♥」
後ろからでも、園崎さんが恍惚の表情を浮かべているのがわかった。
――筋肉か? 園崎さんに刺さったの、俺の筋肉なんか??
釈然としない。
「じゃあ、これからよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。あの、息が整うまで、このままの状態で休ませて貰っていいですか?」
俺の腕に頬づりする園崎さん。
「俺もなんか離れがたかったし。園崎さんさえ良ければ」
「はい♥」
俺が後ろから園崎さんを抱きしめている腕に園崎さんの頬がぴったりくっついている状態のままで、お互いにくつろいだ。
こうして、俺に美人で気立てもよくナイスボディな助手ができたのだった。
その後、事件の話しを細かく聞いてから連絡先を交換しあい、園崎さんをきちんとご自宅まで送りとどけた。
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