第6部 4202年06月06日
外は真夏の様相だった。僕は部屋に閉じ籠もって、一人で本を読んでいる。最近の僕の毎日は、そんなふうに読書に費やされがちだった。インプットというのは、ご飯を食べるようなものだから、そればかり続けていると必ず太る。太るのを回避するためには、運動、すなわちアウトプットをするしかない。ではどうやってアウトプットをすれば良いのかというのが、僕が今考えていることだった。
考え事をするには、外を散歩するのが一番だ。けれど、この時間帯は暑いから、到底出かけることはできない。この辺りは、どうも割と頻繁に季節が変わるようだった。春から夏、夏から秋というふうに規則的に変化するのではなく、夏の次に冬、冬の次に秋というように、不規則に変化する傾向にあるらしい。それは、もしかすると、彼女のせいかもしれない、と僕はなんとなく考えている。彼女は妙な質の人間(?)だから、彼女が季節に何らかの影響を与えていてもおかしくはないと思うのだ。
部屋のドアが吹っ飛ばされて、その彼女が姿を現す。
「ちょっと」薄く昇った煙の向こうに立つ彼女に向かって、僕は言った。「何やってるの」
「soto ni, ikou」
「ドアをこんなにして」僕は立ち上がり、向かい側の壁に接触して停止したドアの傍に向かう。「あああ、壁までぼろぼろになってしまった」
「sugoi deshou ?」そう言って、彼女は自分の腰に両腕をやって仁王立ちになる。「kanshin shita ?」
僕は黙って彼女の傍に近寄る。正面から彼女の目を睨みつけてから、思いきり身体を抱き締めた。
「nani ?」
「きっと、嫌なことがあったんだね。いいだろう。話くらいは聞いてやるさ」
「betsu ni, nai kedo」
「ないのにこんなことをしたのか!」僕は抱き締めるのをやめ、彼女の両肩に腕をやって上半身を揺する。「どういうつもりなんだ!」
「watashi, chikara ga tsuyoi kara sa」
「力が強い、で済まされたことじゃない!」
「nani o, sonna ni, hisuterikku ni natte iru no ?」
「消えてしまえ!」
僕がそう言うと、彼女はたちまち物体としての姿を消し、粉になって部屋の中を泳ぎ回った。やはり、これは本物の彼女ではなかったようだ。それでは、本物の彼女はどこに行ってしまったのだろう?
「彼女をどこにやった?」空中を遊泳する粉の群れに向かって、僕は尋ねた。
「doko ni mo, yatte inai yo」
「彼女を返せ」
「kanojo wa, suki de, koko o satta n da. kimi no sei da yo」
「何だって?」
僕がそう言うと、粉は空中の一点に安定して、もう一度言った。
「kimi no sei da to, itte iru n da」
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