第107話 聖なる迷宮、光に包まれし場所
あれ? ダンジョンの中って、こんなに明るかったか?
それにしても、やたら大きなダンジョンだな。明るいから奥までよく見える。
取り敢えず進むか。
僕が奥まで進んでいくと、巨大で筋肉質の見事な体躯をした、二足歩行の竜の翼が生えた獅子がいた。
間違いない。あれは僕が探していたマディーンだ。
意味ないと思うけど……
ん? マディーンの奥が光り輝いている。
あれは──城? いや、でも歩いてるぞ。
まさかっ!? もう見つけたのか? でも間違いないと思う。
多分アレキサンダーだ。にしてもデカい。
まあ、城だから大きいよな。
だが、マディーンは大丈夫だと思うが、アレキサンダーって話すのか?
とにかく、近づいてみよう。
「む? ただならぬ魔の存在感。人の姿に化けた悪魔か?」
げっ! ゆっくり近づいたのに、マディーンにバレた!
「だが不思議な奴だ。魔と聖の力を宿している……」
なんかマディーンが、考え込み始めた。
ちょっとマディーンに話しかけてみるか。
「あのさぁ。奥にいるアレキサンダーって言葉を話すの?」
「ん? アレキサンダーに興味があるのか?」
いや、マディーンにも興味あるけど。
「アレキサンダーなら言葉を話すが……その前に、なぜこんな場所に?」
「強い仲間を集めにね。お前はマディーンだろ?」
「むむ、なぜ私の名を知っている?」
やっぱりマディーンだった。前世のゲームの記憶が少し役に立ったか。
「まあ、マディーンって言ったら有名だから。所でさ、僕の仲間になってくれない?」
そう言うと、マディーンは馬鹿にするように笑い始めた。
「私を仲間にだと? 愚か者が。この聖なる場に土足で踏み込み、仲間になれだ? 馬鹿も休み休み言え」
やっぱりマディーンにも、魅了はダメか。
「おーい! 奥の巨大な城さん! お前はアレキサンダーだよな?」
「いかにも……」
「頼みがあるんだけど! 僕の仲間になってくれない?」
「────神聖審判」
ん? アレキサンダーが輝き始めた。
その輝きが一気に広がると、ダンジョン全体が輝きに包まれ──って!熱い! 熱い! 熱い!
え? 爆燃者のスキルを持ってるから、全ての炎属性は吸収されるんじゃないの?
【伝えます。個体名アレキサンダーの神聖審判は聖属性の権能なので、爆燃者のスキルは機能しません。続けて伝えます。能力複製の権能により、個体名ピーター・ペンドラゴンは個体名アレキサンダーのアルティメットスキル、神聖之大城塞の権能の一つ、神聖審判を獲得しました】
あっ! この凄い技もゲットしたぞ。と言うか、聖属性も熱の攻撃があるんだな。
と言うか、いきなり攻撃してきたと言う事は……アレキサンダーにも魅了はダメか。
まあ、強い仲間集めだから、魅了無効は当たり前なのかな。
せめて、マディーンだけでも魅了で仲間に──あれ? マディーンがいないぞ。
「光の裁きを受けよ。巨神聖砲」
うおおお! 無数の光り輝く巨大な砲弾が飛んでくる!
しかもこれ、光だから……直撃したら、熱で死ぬぞ!
【伝えます。個体名ピーター・ペンドラゴンは、個体名マディーンのアルティメットスキル、光輝之幻聖獣の権能の一つ、巨神聖砲を獲得しました】
ちょっと至高者さん! 獲得したって、使う前に死んだら意味ないでしょ!
【伝えます。神聖審判の権能で、巨神聖砲を相殺できますが、神聖審判の権能を行使しますか?】
もちろんYES!
おお! 僕の体中から光りが──って、いきなり光りが辺り一面に広がった! しかもマディーンの光り輝く巨大な砲弾が、光りの中に消えていくぞ。
「むむ、それはアレキサンダーの権能ではないか。やはり魔と聖を持っているのか。不思議な生き物だ」
────それから半年後────
だあああああ! もう光りで相殺し続けても、終わりが見えないぞ!
何とかして──まあ、何とか出来る技はあるけど。あれは使い方を間違えると、マディーンもアレキサンダーも殺しかねない。
至高者さん! マディーンとアレキサンダーを殺さずに、戦闘不能状態にする事ってできる?
【答えます。個体名ピーター・ペンドラゴンのアルティメットスキル、魔王竜之逆鱗の権能の一つ、消滅崩壊を行使すれば、殺さずに戦闘不能状態にさせられますが、消滅崩壊の権能を行使しますか?】
YES!
その瞬間、光りの存在が消え、ダンジョン内が暗黒に包まれるたと思った時──アレキサンダーとマディーンが持つ、全ての光りが凝縮された球体が、僕の目の前に現れると同時に、光り輝く球体が破裂し……その球体内に凝縮された光りは消え失せた。
「うぐぐ、な、何をした?」
マディーンが地面に倒れ、何とか声を絞り出している。
「この私が、消えるとでも言うのか?」
アレキサンダーも苦しそうな声を出した。
なるほど、この技は相手の属性を吸収して破壊するのか。
いやいや、ちょっと待て。
このままだったら、マディーンもアレキサンダーも死んでしまうぞ。
【伝えます。神聖審判の権能を行使すれば、聖属性が回復し、絶命することはありません。神聖審判の権能を行使しますか?】
う〜ん、ちょっと待って。今はNOで。
「おい二人とも。このままだったら、お前らは死ぬぞ。だが、僕の仲間になるなら助けてやる」
「こ、この聖なるマディーンが、こんな奴に、だが……お前の力は本物だ。お前の仲間になり、我の力を貸してやろう……」
「私もだ強き者よ……神聖なる力を超えし者よ。私もお前の仲間になると誓おう」
やっぱり聖なる力の持ち主でも、自分より強い者だと認めたら仲間になってくれるんだな。
と、そんなことを考えている場合ではない。早く助けないと!
「神聖審判!」
うお! 眩しい! さっき消滅崩壊で聖なる光りを消しちゃったから、ダンジョン内が暗かったけど、いきなり輝き出したぞ!
「むう、この光りは。体から力が漲る」
お、マディーンが回復したみたいだ。それと、アレキサンダーは?
「まさか、私の聖なる光りを超えし者が、この世にいるとは……だが、体に聖なる光りが集まり力が戻っていく」
アレキサンダーの方も無事みたいだな。
はぁ……長かった。数ヶ月も光りの出し合いで、疲れたぞ。
取り敢えず、インベントリからエリクサーを出して飲むか。
僕がエリクサーを飲んでいると、マディーンから話しかけて来た。
「約束通り仲間になろう。それで、お前の名は?」
「ピーターだよ。ピーター・ペンドラゴン」
「ふむ。ピーターか。おいアレキサンダー。お前もピーターの仲間になるのに、異論はあるか?」
「いや無い。強き者との約束を違えるなど、聖なる力を宿した私がするはずが無い。私もピーターの仲間になろう」
やっと、聖属性の中でも最強の奴らが仲間になったぞ……!
「それで、なぜ我らを仲間にしたいと思ったのだ?」
「実は、僕は一国の教皇で、これから大きな戦争が起こりそうだから、強い聖属性の仲間を探していたんだ」
「うむ、戦争か。確かに戦争では悪しき心の者たちが──むっ? ピーターは教皇だったのか? 神聖の象徴ではないか! それを早く言えば、戦わずして、仲間になったものを……」
え? マジで? じゃあこの数ヶ月間、無駄な戦いをしてたの?
てか、一つ疑問が……。
サイクロプスに、フェンリルに、マディーンに、アレキサンダーを倒したのに、レベルが上がらないのはなんで?
【伝えます。魔王竜にはレベルの概念が存在しないので、レベルそのものがありません。もしステータスを向上したい場合は、加護を授かる以外に方法はありません】
ちょ! レベルの概念が存在しないって! 何じゃいそりゃ!
ただの骨折り損じゃん! あっ! そうだ!
「あのさぁ、マディーンとアレキサンダーにお願いがあるんだけど。どちらか加護を授ける事ってできる」
「加護か……それなら我が出来るぞ、確かアレキサンダーも出来ると思うが」
「うむ。確かに私も加護を授ける事ができるが。ピーターは充分に強い。が、加護が欲しいのか?」
「欲しい!」
僕は即答した。
「そこまで言うなら、仕方ないな。ピーター・ペンドラゴンに聖神の加護を授ける」
【伝えます。個体名ピーター・ペンドラゴンは、個体名アレキサンダーから、聖神之加護を授かりました】
「では我からも、ピーター・ペンドラゴンに聖獣の加護を授ける」
【伝えます。個体名ピーター・ペンドラゴンは、個体名マディーンから、聖獣之加護を授かりました】
よし! これで加護が六つだ──って、なんか、これじゃあ仲間集めじゃなくて、加護集めに来たような……。
まあ、でも。加護以外にステータスが上がらないんだから、仕方がないよね。
「それで、ピーターは一国の教皇だと言っていたが、このまま一緒に、お前の国まで行けばいいのか?」
「えっと、その事なんだけど。まだ仲間にしたい奴らがいるから、ダンジョンの外で待ってて、サイクロプスやフェンリルもいると思うから」
「うむ。解った」
「では、私もダンジョンの外で待つとするか」
なんかアレキサンダーが歩く度に、ダンジョンが壊れるんじゃないかと、心配になるのは、僕だけか?
と言うか、僕の国の教えを伝えてないけど……まあ、コイツらは聖属性だし、弱い人間や亜人を襲う事はないだろう。多分ね……。
まあ、でもこれで。サイクロプスに、フェンリルに、マディーンに、アレキサンダーを仲間にしたぞ。
しかも全員が星創級だ。でもまだ仲間が足りないんだよな……。
あと半分ぐらいかな?
とにかく、気配感知の権能を使っても、この階層にはもう魔獣も魔人もいないから、第二階層に進むか。
てか、本当に無駄な数ヶ月を過ごしてしまった……。
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