第102話 お祭り当日の朝、国民たちが祭り会場に全員集合


 なんだか緊張して眠れなかったぞ。それにしても、長いようで短い一ヶ月だったな。


 この一ヶ月はかなり忙しくて、時間を忘れる程だったから、気がついたら祭り当日になっていた。


 一応、祭りを始める前に、首都モンテス完成の記念祭りだから、軽く挨拶しなくてはいけないよな……そう言うの苦手なんだよね。


 取り敢えずだ、まだ朝だし、甚平を着てモンテスの街の外にある、屋台の準備の方を確認するか。


 そして、僕はモンテスの街の外に出ると──野外に広がる祭りの、のぼり旗に1000万台の屋台からは、様々な料理に使うソースやタレの香りがモンテスの街の野外に溢れていた。


 よし。順調そうだな。

 それに、ちゃんと伝書鳩で記念祭りだから、飲食は全て無料と書面に書いておいたし。国民全員が食べたい物や飲みたい酒を、いくらでも飲み食い出来るようにしておいたから、金の心配はしなくていい。


 ミストスの住人20万人も、僕が魔王竜に進化して准真祖じゅんしんそになったから、陽光克服のスキルで、太陽の下でも活動できる。


 つまり、夜を待たずして昼から参加できるわけだ。


 まあ、今まで戦争などがあったので、これだけ大規模な祭りは、束の間の平和の時にしか出来ない。今日は思いっきり楽しむぞ。


 「ピーター様! ドラゴンの里から全てのドラゴンを連れてきました!」


 その声のする方を見ると、擬人化して甚平を着たファフニールがいた。


 しかも、その後ろには、驚くほどの数のドラゴンたちが擬人化して、甚平や着物を着ている。


 もちろん六怪ろっかいも全員集まっている。ティアマトだけ着物姿だが、かなり似合っているな。きっと、元々が美人さんだからだろう。


 「皆よく来てくれた! 今日は楽しんでくれ! それと食材集めに協力してくれた、六怪の皆には本当に感謝している。ありがとう!」


 『ピーター様のご命令なので、当たり前の事をしたまでです!』


 やっぱり息ピッタリだな。


 「所で、エンシェントドラゴンは来てるの?」


 「ピーターよ! 我ならここにいるぞ!」


 その声の主は、僕と同い年ぐらいの青年だった。


 「は? お前……本当にエンシェントドラゴンなのか?」


 ドラゴンの時は、かなり威厳のあるドラゴンだったが、擬人化すると威厳と言うよりも、青年の姿なので親しみやすさを感じるな。


 「本当だ。我はエンシェントドラゴンである。擬人化した姿に驚いたか? まあ、無理もなかろう。我はまだ6000年しか生きていない、小僧のようなドラゴンだからな」


 「そ、そうなんだ……」


 6000年も生きていて小僧って……ドラゴンってどんだけ長命なんだ?

 そう言えばエルは1万2000年も生きてるけど、擬人化すると若い大人の女性姿なんだよな。


 ドラゴンとは一体……。

 そして、いつになったらドラゴンオーブが完成するんだ?

 まあ、今日は祭りの日だし、そんな事を訊くのは野暮ってもんだろ。


 「「おーい! ピーター!」」


 あっ、ソルとルーナだ。でもテネブリスが居ないな。


 「二人とも早いな。祭りは昼だぞ」


 「いや、ヒマだったんで早く来ちまったんだ」


 「ふ〜ん。所でテネブリスは?」


 「あいつだったら、まだピノネロと一緒に仕事してるぞ。多分、祭りが始まるギリギリまで仕事してるんじゃねーか?」


 相変わらずだな。てかピノネロも、テネブリスが仕事熱心なのを見抜いて、アイツを外務大臣にしたのかな?


 『ピーター様! 我ら四獣四鬼しじゅうしき、今日の祭りではピーター様の手足となって働かせてもらいます』


 うお。四獣四鬼も息ピッタリだな。しかも久々に見る擬人化の姿だ。甚平と着物もちゃんと着てるし、結構似合うな。


 「仕事はしなくていいよ。代わりの祭りを楽しんでくれ。四獣四鬼には日頃から助けてもらってるからな」


 『ハハッ! ではピーター様のご命令に従い、祭りを楽しみたいと思います』


 命令じゃないんだけど……。


 「おーう! 教皇様よお! 来たぜ!」


 「おっ! リコたちも来てくれたか!」


 「当たり前だろ! 今日はタダ酒が飲めるからな! おう! お前ら! 今日は飲みまくるぞ!」


 「「「解りました!」」」


 相変わらずテンション高いな。ガリョー四兄弟は。


 「ピーター君! 軍都の皆とアヴィドの皆を連れてきたよ」


 「アランたちも来て──って、凄い人数だな!」


 「なにせ900万人だからね。アドムとドリマとプレースも来てるよ」


 「教皇様! 祭りに呼んでもらって有難うございます」


 「おう。アドムも元気そうで──ん? 前よりも精悍な顔になったか?」


 「日々、アラン様から訓練指導を受けていますので!」


 確かに、アランの下で訓練していたら、そうなるか。


 「俺の事も忘れないで下さいよ! 教皇様!」


 「そうですよ! 教皇様!」


 「おお! ドリマにプレース。お前たちも前より精悍な顔になったな。それに体付きも前よりガッシリしてるし。とにかく皆、今日の祭りを楽しんでくれ!」


 「ピーター様。私の事も忘れてもらっては困りますよ」


 「おっ。ミストスのジジイ──じゃなくて、マラガール公! よく来てくれた! それに後ろの団体さんは、ミストスの街の20万人の吸血鬼か!」


 「そうで御座います。ピーター様が魔王竜に進化され、ミストスの街の20万人の吸血鬼も陽光克服のスキルを獲得し、全員が准真祖になれました。本当に有難う御座います」


 「いやいや。お礼なんていらないよ。それよりも、せっかく太陽の下でも活動できるようになったんだ。今日は思いっきり楽しんでいってくれ!」


 「ぴ、ピーター様あああ!」


 「うお! お前は確か近衛兵団長のランドンか」


 「そうであります! この度はテレサヘイズ近衛兵団も、祭りに参加する許可を頂き、感謝の極みで御座います!」


 「お、大袈裟だな……ランドンや近衛兵団の皆も今日は楽しんでいってくれ!」


 はぁ……まだ朝なのに、みんな来るの早いな……挨拶だけで疲れた……。


 「教皇様。お久しぶりです」


 「うわ! 凄い久しぶりだな。リスタの女鑑定士さんじゃん」


 しかし、相変わらずの巨乳で御座いますな。


 「リスタの皆さんも、集まってますよ」


 「え? そうなの? まだ朝なのに早いね」


 「それだけ今日のお祭りを、楽しみにしていたんでしょうね」


 まあ、娯楽に飢えてたってことか。


 「教皇様! 我らメセスのグリフォン隊10万人と、メセスの住人もお祭りに参加させてもらい、誠に有難う御座います!」


 「メセスの皆も来てくれたのか! 今日は楽しんでいってね!」


 あれ? 祭りは昼からなのに、こんな朝早くにテレサヘイズの街やドラゴンの里から、たくさん人が来てるって事は……誰も警備の人がいない、ガラ空き状態じゃないか!


 僕は急ぎ思念伝播で、1億匹のグレーターデーモンにテレサヘイズ全体の、警備の命令をした。


 ふぅ……危ない。まさか、こんな朝早くから、国民たちが集まるとは思っていなかった。


 「ピーター様! アグニスとボデガスと、吸血鬼さんたちを連れて来ました!」


 「エルか! 最近忙しくて会って無かったな。元気してたか?」


 「もちろんですとも!」


 「ピーター様。モンテスの警備をしている我々まで、祭りに招待して頂き有難う御座います。ですが、警備の方はどうなさるのですか?」


 「ボデガス君。良い質問だ。その事については抜かり無いよ。1億匹のグレーターデーモンがテレサヘイズ全体を警備しているから」


 「い、1億匹ですか……やはり教皇様の力は偉大ですね」


 「は? アナタ、1億匹も悪魔召喚したの?」


 「そうだけど……アグニスはもう悪魔召喚するなよ」


 「するわけ無いでしょ! あんな酷い目に遭ったんだから!」


 やれやれ……アグニスは朝から元気だな。


 「ピーターさん! 俺っちたちも、来たっすよ! 親戚のウバラも一緒っす」


 「ウーグ三兄弟にウバラも来てくれたか。てか、ウーグ。お前、立法府の仕事サボってきたろ」


 「そ、そんな事ないっす! 昨日の内に今日の分の仕事もやったんすよ!」


 「な〜んか嘘くさいな……まあ、いいや。今日は祭りだ。楽しんでいけよ!」


 「教皇様。テネブリスさんが早く仕事を終わらせてくれたので、急ぎ駆けつけました。何か不足なことはありますか?」


 「おお。ピノネロにテネブリス! 不足なことは無いよ。ちゃんと準備したから」


 「そうです。私もピーター様に微力ながら、祭りの手伝いに参加させて頂きましたから」


 「そうなんだよ。テネブリスにも手伝ってもらったんだ。二人とも、今日は楽しんでいってね!」


 ふぅ……残るは……。


 「ピーター! ダエージュとグドルーはどうなった?」


 上空から猛スピードで飛んで来たのは、リリーゼと四聖天ししょうでんの、ライマ、リョクイ、セーギュー、シャユーだった。


 「大丈夫だよ! 逆にダエージュとは盟友になった! グドルーはまだ現れて無いけど」


 「め、盟友だと!? あのダエージュが……」


 「まあ、詳しい話しは今度するから、今日は祭りなんだし、楽しく行こう!」


 「そ、そうだな。おい貴様ら! 今日はピーターの祭りだ! 面倒事を起こすでないぞ!」


 「「「「解りました!」」」」


 いや僕の祭りじゃなくて、巨大城郭都市モンテス完成記念の祭りなんだけど……まあ、いいや。


 残るは……。


 「遅参すまぬ! 余の盟友、ピーターよ!」


 この大地を揺るがす野太い声は、ダエージュだな。

 僕が上空を見上げると、遠くの方から純白のペガサスに跨がるダエージュの姿があった。


 そして、モンテスの街から離れた平地に、上空から降りて下馬すると、地響きとともに、やってきた。


 「いや〜! 遅参すまぬな!」


 「おいおい、まだ朝だぞ。祭りは昼過ぎだって!」


 「おお、そうであったか。まあ、細かい事は良いではないか! ん? あれは……もしやリリーゼか!? 坊主! リリーゼも呼んだのか! でかしたぞ!」


 そう言うと、ダエージュはリリーゼの方に向かって言った。


 「リリーゼよ! さぁ余と婚姻を──」


 「婚姻はせぬ! 何度も言っておるであろう!」


 「そう照れるでない!」


 「照れてないわ!」


 なるほど。四凶会議の時に、僕と婚姻するとリリーゼが言った時に、ダエージュはリリーゼが照れ隠しで言ったと、誤解しているのか。


 「まあまあ、二人とも。婚姻の話しなら、いつでも出来るだろ? それよりも、今日は祭りを楽しんで言ってよ」


 「うむ! 確かに坊主の言う通りだな! 今日は祭りを楽しむとしよう!」


 そして僕が、周りを見ると、国民たちはダエージュの巨大な姿に驚いている。だが、ここは僕の国だ。国民たちは、テレサヘイズの教えがあるので、驚きはするものの、怖がる者は誰一人としていなかった。


 さてと、全員集まった所で──お昼に祭り開始のスピーチを軽くして、全国民が集結した大祭りの始まりだ。

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