第87話 アヴィドのリーダーと、有事の三大将軍


 翌朝、僕はアランと一緒にアヴィドの街に向かった。

 その理由は今後の詳しい話しをするのと、元三大スラムのリーダーである、アドムとドリマとプレースに500万人の腕に覚えがある人材を集めてもらう事だ。


 そして僕とアランがすぐにアヴィドに向かうために、転移魔法陣を作り瞬間移動すると──朝っぱらからアドムとドリマとプレースが口論していた。


 こいつら……今度は何だ?


 「おい! 三人とも! 何やってるんだ!」


 「「「教皇様! おはようございます!」」」


 「うん。おはよう──って違う! お前ら朝っぱらから、何の口論をしてたんだ?」


 すると、アドムが答えた。


 「お恥ずかしながら、この街のリーダーを決めようと思って話し合いをしていたら、口論になってしまいまして」


 その言葉を聞いて呆れてしまった。


 「あのなあ。ここは三大スラムの大陸じゃなくて、テレサヘイズの国なんだ。皆が仲良くする教えがある事は言ったよな? それともまた、あの不毛な大陸に行きたいのか?」


 「す、すいません! もう口論はしません。ですが……誰をリーダーにするべきか話しが纏まらなくて」


 「だから、そう言う時は、僕に質問してこい! 何でお前らが勝手に決めるんだ!」


 アドムは僕の話しを聞くと、返す言葉も無く黙ってしまった。

 全く、こいつらときたら。少し目を離すとケンカをしやがって。


 だが、僕にも考えがある。昨夜のうちにアヴィドと、これから出来上がる軍都のリーダーである。この二つの街は人間だけの街であり、兵士にしようと思っている者たちも人間である。


 つまり魔物では無く、人間だけの軍隊なわけだ。

 そんな事を昨夜、考えていたら丁度いい人材がいた


 仕事量は増えてしまうが、司法府長官のアランに兵士育成を頼もうと思ったのだ。まだ本人には言ってないが、まあ、アランならやってくれると思う。


 それに剣聖アランが軍事訓練をしてくれるのだ。これなら屈強な兵士の軍隊になる。

 それにアランには有事の際に、人間の軍の大元帥になってもらう事も考えている。


 「なあピーター君。なぜ私をここに連れてきたのか、教えてくれないか? 朝早く重大な用事があるからと言われて、一緒にきたが、もしかしてケンカの仲裁かい?」


 「いや、そうじゃなくて、アランには今、ルストの街の司法府長官になってもらっているだろ? それとは別に、コイツらの街のリーダーになってもらいたいんだ。コイツら目を離さすとすぐに争いをするから。それと、まだ先の話しだけど、これからこの街の中で腕に覚えのある奴を500万人集めて、軍都を作る計画をしているんだ。出来ればアランにそいつらの軍事訓練や兵士育成の教官をしてもらって、有事の際は500万人の軍隊を纏める大元帥になってもらいたい」


 すると、アランは少し考え込んでから、話し始めた。


 「まあ、見るからに荒くれ者の集団だから、司法府長官としてアヴィドの街のリーダーになる事は構わないよ。その代わり、少しでも教えを破る無法者がいれば、すぐに裁判をするけどね。それと、私はずっと一人で旅をしてきた流浪人だ。軍事訓練や兵士育成の教官はできるが、果たして私に500万人もの大軍勢を指揮する事が、できるだろうか……」


 なるほど、考え込んでた理由はそれか。


 「大丈夫! アランには大元帥になってもらうけど、一人で軍隊を動かすわけじゃない。ピノネロも一緒に行動させるから」


 それを言うと、アランは二つ返事で承諾してくれた。


 「ピノネロ君も一緒なら心強い。では私は、平時の際は司法府長官とアヴィドの街のリーダーと、これから建設される軍都での軍事訓練と兵士育成の教官をして。有事の際は、ピノネロ君と一緒に行動し、私は500万人の軍隊の大元帥になるよ」


 やっぱりアランは話しが解るやつだ。そして良いやつだ。


 「あのう──」


 僕とアランの会話にアドムが割って入ってきた。


 「先ほどから、教皇様と話している方は、人違いなら申し訳ないのですが、剣聖アラン様ですか?」


 「そうだけど。何か不満なことでも?」


 そう言うと、アランは剣神覇気のオーラを飛ばした。

 その覇気にアドムは声も出ず、余りの恐怖に身震いしている。


 「ちょ、ちょっとアラン! 相手はまだ訓練していない単なる無法者だ! アランのオーラで言葉も出せない状態だから、早くオーラを消してくれ!」


 するとアランは、剣神覇気のオーラを消した。きっと、無法者を相手にするには、どちらが格上かを教えてやる事が、一番早い手段だと解っているのだろう。


 「じゃあ僕が今日からアヴィドの街のリーダーになる、アラン・サンドロスだ。文句がある者は前に出ろ」


 「も、文句なんてあるわけ無いですよ! 私の名はアドムです。今日からアヴィドの街のリーダーをお願いします。アラン様! お、おい! ドリマにプレース! お前らも文句ねーよな?」


 「「ありません!」」


 やっぱり力には力だなぁ……。

 んじゃ、そろそろ話しを纏めようかね。


 「お前ら! 話しはこれで終わりだ! 今日からアヴィドの街のリーダーはアランだから、宜しくな。それと、できるだけ早く、腕に覚えがある500万人を集めること。そして、アランは司法府長官で凄く忙しいから、迷惑をかけずに皆ちゃんと仲良くすること。それと最後に、お前らはリーダーじゃないが、有事の際にアランがお前らに命令できない時があるかもしれない。なので、そう言う緊急時の場合だけ、アドムとドリマとプレースは、アヴィド三大将軍として皆を守ってくれ。でも、ケンカはするなよ」


 するとアドムが瞳をキラキラさせている……気持ち悪いな……。


 「我々が三大将軍……解りました! 緊急事はケンカせず、三人で力を合わせてアヴィドを守ります! 腕に覚えのある500万人もできるだけ早く集めます!」


 「解った。それとアヴィドのリーダーはアランだが、アランはルストでの仕事もある。だがお前らがちゃんと、教えと法を守ってるか、ちょくちょく監視しに来るからな」


 「「「解りました!!」」」


 はぁ……やっと終わったか。


 「じゃあ、今日の所はもう帰るけど、ケンカするなよ」


 「「「解りました!!」」」


 でも、まだ最後の仕事が残っている。

 アランがいつでも、ルストとアヴィドを一瞬で往復できる、転移魔法陣を設置することだ。


 「なあアドム、この街は元は共和国の街だったんだろ? じゃあ公邸があるよな? 案内してくれないか?」


 「公邸……あっ! あの一番大きな建物ですね! 解りました!」


 僕とアランは、アドムに公邸まで案内させた。

 すると、思ってた以上の立派で豪華な建物だった。


 「今日からこの建物が、アランの部屋だから掃除の時以外は立ち入り禁止な」


 僕がそう言うと、その場にいた全員が大きな声で返事をした。

 コイツら返事だけは良いんだよな……。


 さてと、どこに転移魔法陣を作るか──寝室でいいかな。


 そして僕は、寝室に転移魔法陣を作り、転移先をアランの部屋の寝室にした。


 「アラン。ここの公邸がアヴィドでのアランの部屋で、ルストにあるアランの部屋の寝室から、いつでも一瞬で往復できるように、転移魔法陣を作っておいたから、いちいち馬車で向かうとか、そんな事はしなくていいよ」


 「転移魔法陣!? ピーター君。キミは瞬間移動のスキルの転移魔法陣が使えるのか?」


 「ま、まあ……」


 てか、余り深く考えないで、いつも転移魔法陣を使ってきたが、かなり高度なスキルなんだよな。アランも驚いてるし。


 そして、僕とアランは公邸の寝室からアランの寝室まで転移し、僕は転移魔法陣を解除せず、アランがいつでもすぐに、アヴィドに行けるようにした。


 アランはそのまま司法府まで行ったが、僕にはまだアヴィドでやるべきことがあったので、すぐに転移魔法陣でアヴィドまで戻った。


 しかし、流石に有事の際に500万人の軍隊の大元帥に、なってはくれないと思っていたが……まさかピノネロの名前を出したら承諾してくれるなんて。


 やはり、参謀総長だけあって、信用されているんだな。


 そして、なんで僕がアヴィドに戻ったかと言うと──どうしても、確認しなくてはいけない事があったからだ。

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