第73話 ガルズ三大スラムが、新たな国に
「ごめん! お待たせ!」
「遅いぞピーター! 妾を待たせるでないわ!」
結構早く戻ってきたつもりだったんだけどな……。
もしかして、翼亜人ってせっかちなのか?
まあいいや。女帝様を怒らすと怖いからな。僕は急ぎ、リリーゼと
しかしまあ、リリーゼの前だと四聖天が大人しいな。首輪をつけて、よく躾された犬みたいに大人しい。流石は絶対君主制の国だ。女帝の前で言葉を交わし、もしリリーゼの怒りを買ったらと思うと、何も言えないのだろう。
迎賓館に向かう途中、リリーゼが街の中を案内しろと言うので、取り敢えず案内できるだけの場所は案内してみた。その中でもリリーゼが一番気に入ったのは、何と学校だった。
どうやらリリーゼは子供が好きらしい。てか……その横でイフリートが緊張しまくっている。
無理もない。だってリリーゼは星創級の力の持ち主だ。いくらイフリートが強くても歯が立たないだろう。と言うか、相手にもされないと思う……。安易な例えだがイフリートが炎なら、リリーゼはその炎を丸呑みにする大業火だ。
「よし。ではそろそろ迎賓館に向かうか!」
行くのは構わないけど、温泉を気に入って街に入り浸ることはやめてもらいたい。
「おお! 中々に見事な作りだ。この建物内に温泉があるのだな」
「そうだけど、あんまり長く入ってると──」
「よし! 行くぞ! ついて参れ! ライマ、リョクイ、セーギュー、シャユー!」
「「「「解りました!」」」」
やれやれ、子供かよ。あんなに興奮しちゃって。まあ僕も朝風呂を入ろうと思っていたから丁度いいか。
そういえば、迎賓館に入るのって、初めてだな。正確に言えば、僕が想像し、物質創造で作って中の飾り付けなどは、全て丸投げ状態だったから、ちゃんと機能している迎賓館に入るのは初めてなのだ。
てか、中に入ると、まるでホテルのようだった。接客とかはマニュアルを渡しておいたが、見事なまでの接客だ。
それに風呂! 何か公衆浴場よりも広いし、毎日三回の風呂掃除で浴場内はピッカピカだ。
うむ。これならリリーゼも気に入るだろう。
────二時間後────
「いや〜露天風呂とは良いものだ。まさに極楽だな」
遅い……どんだけ長風呂してんだよ。僕はもう、一時間前には出ていると言うのに。てか全員が浴衣姿だ。浴衣もついでに物質創造で作って、作り方のレシピをガリョー四兄弟のリンに見せて、作るようにお願いしておいてよかった。
なぜなら……リリーゼの浴衣姿が凄くセクシーだからだ。
「リリーゼって長風呂なんだな。余り長く入ってると、のぼせるぞ?」
僕は五人に冷たい水を持って行くと、五人ともそれを一気に飲み干した。本当はコーヒー牛乳の方がいいんだけど……まだまだ改善しないといけない点が多いな。
「すまない。少し悪い情報が入ってきて、このバカどもと話していたのだ」
「悪い情報?」
「ああ。先ほど話した、西側に位置する最果ての島の事は覚えているだろ?」
「えっと、世界から見捨てられた三大スラムだっけ?」
「そうだ。その三つのスラムの名は、トルソー、ヒドゥン、コンキスタ。この三つのスラムが、まさかとは思ったが共和国を作り、レイジヘイズ共和国を作り、世界に向けて宣戦布告の準備をしているらしい」
「いやいや、でも罪人の集まりの国でしょ? リリーゼの国の方が強いんだから、すぐに壊滅できるんじゃない?」
「妾も最初はそう思ったがな、奴ら罪人だけあって抜け目ない事をしているようだ。妾の国と交戦するために、教皇国マギアヘイズとダミアンヘイズ第三帝国の二つの国と同盟し、三国同盟を結びよった。それにダミアンヘイズには古代の遺産である、巨大機械兵のバーラーを多数保有している」
巨大戦闘用機械兵──もしかしてそれってロボット!? ロボットだよね? いや絶対にロボットだ! 男の子の憧れロボットだよ!
「ん? 何を興奮している?」
「え? いや、あの。許せないよね! レイジヘイズ!」
「そうなのだ。武装独立国家ラヴィーネヘイズが背後からダミアンヘイズを攻撃すれば良いが、ラヴィーネヘイズの連中の敵はクーロンヘイズに限られている。なので、いくらダミアンヘイズがガラ空きになっても、攻撃はしないであろう」
「って事は、三方から囲まれたってことか。でもさ、リリウヘイズの西側は、誰も住めない過酷な土地なんでしょ? そんな場所から攻撃を仕掛けても、逆に地の利があるのはリリウヘイズだと思うんだけど」
「ピーターの言う通り、確かに天然の要害ではある。しかし、何かしらの方法で、ダミアンヘイズが巨大機械兵をレイジヘイズに輸送可能であるならば、状況は変わる。何せ、巨大機械兵は破壊力に加え、空中を猛加速できるからな」
うおおおお! やっぱりロボットだよ! 嗚呼、見てみたいな〜。いっその事、ダミアンヘイズに宣戦布告して、ロボット全部貰おうかな。
そしたら、夢が広がるぞ。
「まあ、巨大と言っても、貴様が従えているタイタンに比べれば、子供のような大きさだがな。しかしだ、空中から自在に攻撃できる翼亜人の強みを相手も持つとなれば、戦力をレイジヘイズとマギアヘイズに向けなくてはならない。それにピーターの国もダミアンヘイズとマギアヘイズの両方から狙われるのだぞ」
まあ、確かにマギアヘイズだけでも厄介なのに、ダミアンヘイズまで相手にするのは、正直キツイよな。
しかも世界に向けて宣戦布告か。
これってメッチャ戦う気が満々って事だよな〜。
まだ改革が終わって無いのに、いらんことしやがって!
「と言うわけで、妾は早急に我が帝城に戻り、軍事会議をせねばならん。本当はもっと、くつろぎたかったが、焼肉やステーキや娯楽施設で遊ぶのは戦争が終わってからになるな。貴様も今すぐ会議を開き有事に備えよ! また来る!」
そう言って、リリーゼと四聖天の四人は浴衣姿のままで、自国まで飛んでいった。って、おい! 浴衣返せ! 浴衣作るの結構大変なんだぞ!
とは言っても、今は浴衣より戦争の用意だ。
僕は急ぎ、思念伝播を主要メンバー全員に飛ばし、全員執務室に集まるように、非常召集をかけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます