第70話 大会議を終えて、その後の皆の活躍


 執務室での、主要メンバーを集めた大会議が終わり、あっという間に一ヶ月が過ぎた。

 六怪のドラゴンたちが、空輸部隊として活躍してくれているので、物資が街に届く速さが一段と早くなった。が、どうしても僕は鉄道を作りたいと思っている。



 だが、それには凄まじい数の人が必要だ。蒸気機関車を作るのは、物質想像ですぐに作れるが、線路作りは労働問題改善の為に、国民にお願いしようと思っているのだ──が、まだまだ人手不足が否めない。


 それはそうと、やっとルストの街で料理人が見つかり、豚骨ラーメンの店を開く事ができた。それも、かなりの数の料理人を見つけたので、まさにラーメンは我が国での名物料理になり、チェーン店も多数作り、将来的に他国にもレシピを売り、フランチャイズ展開をしようと思っている。



 さらに、豚骨ラーメンの他に、味噌ラーメン、醤油ラーメン、塩ラーメン。さらに餃子やチャーハンも成分分析をして、分析結果からレシピを作成し、まさに中華料理は自国の大人気ファーストフードとも言える料理になった。


 個人的には、今後はハンバーガーなんかも作り、ファーストフードとして、売り出したいと思っている。だが、またここで問題が。料理人不足である。やはり最終的な問題は人材確保に繋がっていくのだ。ただ、まだ改革を始めて一ヶ月ほどなので、そこまで焦ってはいない、むしろ焦るべきは有事の際の兵士集めだ。



 その兵士集めだが、ピノネロに訊くと、どうやら元々が中立国家だったので、常備兵が他国に比べ圧倒的に少ないそうだ。いつも有事の際だけ、傭兵に金貨を払い雇う形を取っていたらしい。なので、僕は大金を出し、どうせなら、その傭兵を常備兵として雇う計画を出した。


 つまり前世で言う所の、派遣社員ではなく、終身雇用制度を導入すると言うことだ。

 ピノネロは常備兵にすれば、より強い兵士が集まると言っていたが、問題は常備兵に払う賃金である。だが、まだ改革途中ではあるが、僕は急ピッチで迎賓館や、貴族専用の娯楽施設付き公衆浴場を作り、なんとか賃金の問題は解決できた。



 そう、お金は持っているものから、搾り取るのが僕の考えなのだ。それに娯楽施設には、美容院やマッサージ店なども作り、中でも僕が心血を注いで大宮殿さんと一緒に作ったボーリング場は、貴族たちの中で大絶賛され常に満員御礼の大賑わいであり、そこから入ってくる金貨を財務大臣に計算してもらい、その金貨を賃金として傭兵を雇い常備兵として、自国の常備軍に出来たのだ。



 しかし嬉しい報せもある。なんと難民が5万人も集まったのだ。

 これでまた、労働者の数が増えると言うもの、ただ、今さらになって考えたが、戦争孤児の子供に急に住居を与えても、どうしていいか解らないだろうから──僕はすぐに戦争孤児用に5万人が住める巨大児童福祉施設を建造……というか物質創造で作った。


 加えて、親を失った悲しみを少しでも忘れさせる為に、貴族専用の公衆浴場の作りにし、娯楽施設に前世での漫画も物質創造し、貸し出しという形で、施設内に配備したのだが──これには、我ながらやり過ぎた。



 と言うのも、余りの快適な住み心地のせいで、戦争孤児で施設に来た2万人の子供たちが、なんと心優しい里親に来た者たちを拒否して、施設内での暮らしから離れないのだ。


 まあ、ちゃんと学校には行ってるみたいだが──どうしたものか……。


 とまあ、あれこれ問題は抱えているが、街道の整備や、治安維持、学校や病院に、これからもっと増やす計画のグルメ計画書も万全である。



 グルメといえば、一週間ほど前にエンシェントドラゴンから、やっと宴会の準備が出来たと言われたので、ミストスで振る舞ったタレを大量に持参して言った結果。やはりミストスと同じ反応で、余りの美味しさに食い倒れるドラゴンたちの山ができるほどだった。


 エンシェントドラゴンも気に入ってくれて、月に一度は宴会をしようと頼まれたが、流石にやる事が山積みなので、全て片付いてからと言うと、悲しい口調になり、落ち込ませてしまった。



 まあ、僕は宴会の為に改革をしている訳ではないので、そこは理解して欲しい所だ。

 さらに、中華料理店の他に、このタレを使い肉料理専門店である、ステーキ店や焼肉店もオープンさせた。


 商人ギルド内には解体屋も多いことから、この国では肉を解体することに長けた料理人の方が多いそうだ。

 ただ、ラーメンと違い少し高級路線になるので、今ではもっぱら貴族たちに肉料理専門店を占拠されてしまっている……いずれは国民全員が気軽に入れる、肉料理専門店を作るのも課題の一つになってしまった



 そして僕の服も新たに、ガリョー四兄弟のリンから新調してもらった。

 その服は黒のノースリーブパーカーである。しかもジッパー付き。


 これで戦闘の際に、教皇の服が邪魔にならずに済む。

 なので今は、大きなイベントがあり、国民の前に出る時以外は、黒のTシャツに黒のノースリーブパーカー、そして紺色のジーパンに真っ白なスニーカーを履いている。


 因みに、リンにジーパンのベルトも新調できないか頼んだら、魔物であるアサルトブルの皮があれば、特製のベルトを作れると言われたので、僕は急ぎアサルトブル一頭を狩ってリンの元まで持って行き。ベルトまでゲットした。


 ガリョー四兄弟の長男であるリコからは、肉は持って行かないのかと訊かれたので、お礼に肉は上げると言い、ついでに焼肉のタレも上げると、翌日の朝早くにガリョー四兄弟から、焼肉のタレがとても気に入ったのか、もう少し分けてくれと交渉されたので、それは今後のお前らの仕事振り次第だと言うと、慌てて工房に戻り今まで以上の速さで、最高の武器防具を作るようになった。



 そして、なんと言っても米が食べたいので、エルとアグニスに米作り用の田んぼも作ってもらった。アグニスに米作りは非常にデリケートだから、スキルの多重結界を使い雨風から守ってもらうように頼むと、見返りに焼肉のタレを寄越せと言われた。やれやれ、やはりタダで仕事はしないアグニスである。


 米の作り方は、大宮殿さんに聞きながら手順表を作成した。何せ前世でも農業とは無縁だったので、大宮殿さんの膨大な知識をフル活用させてもらった。これで米問題は解決したのだ。



 しかしアグニスのやつ、ホットケーキがよほど気に行ったのか、養蜂場も酪農もしっかりと国民と一緒になり、仕事をしてくれている。ルストの街の外に広がる大森林の半分は畑になり、野菜や果実の畑になっている。なんだかんだ言って、エルもアグニスもやる時はやってくれる、頼りになる仲間である。



 それと、戦争で壊したリスタ川の大橋だが……なんと前よりも立派な大橋がリスタの暴れ川に建造されたのだ。これには国民も大喜びだった。なんと言ってもタイタンの功績が大きい。

 しかし王宮の大聖堂作りには、まだまだ時間がかかるようだ。何せ王宮を丸ごと大聖堂にする大仕事なのだから、一ヶ月程度でできるとは、僕も思っていない。


 さらに驚くことは、学校で教育指導をしているイフリートの人気である。しかも擬人化ではなく、元の鬼のような巨躯の姿で教えているのに、怖がられる所か──なぜか生徒たちから好かれているのだ。


 うーむ、子供の感性は解らないな。


 それにフェニックスも病院で大人気だそうだ。まあ、大怪我も一瞬で治す回復薬いらずの癒しの炎のおかげで、病院は冒険者たちの溜まり場になってしまい、国民の治療の順番が回ってこないので、フェニックスの治療は予約制にした。


 加えて、僕は病院内で回復薬の研究施設も作った。

 その施設での研究は、僕のアルティメットスキルの治癒之大精霊の権能の一つ、万能霊薬を行使して、エリクサーを現出させ成分分析のスキルを使い、分析結果から回復薬のレシピを作り、エリクサー、メガポーション、ハイポーション、ポーションの作成を研究する施設である。



 そして見事、病院まで足を運ぶことさえ困難な、病人や怪我人に服用させる、エリクサー、メガポーション、ハイポーション、ポーションの作成に成功した。まだ大量に作れるのは、ハイポーションとポーションに限定されるが、これを冒険者ギルドで販売すれば飛ぶように売れるだろう。つまり益々国家の財力が潤うわけだ。


 将来的に見れば、この回復薬は我が国の特産品になるだろう。


 さらに忘れてはいけない、大事な三権分立だが──今の所、ちゃんと機能しているみたいだ。最初こそ何から手をつけていいのか解らず、毎日あっちだこっちだと動き回って忙しないウーグだったが、今では慣れた手付きで職務を全うしている。


 ピノネロに関しては──まぁ言うまでも無い。四獣四鬼の中でオーディン以外の、全ての魔獣と魔人のトップに立ち仕事の指揮を執っているが、大まかな職務だけ伝えて背後から見守り、決して自分は目立って偉そうなな指示を出したり、大きな態度は取らない。まさに理想の上司である。


 最初は四獣四鬼の殆どを、ピノネロに丸投げしてしまい、もし手に追えないようなら手伝おうと思っていたが、僕の杞憂だったようだ。



 それとウーグと相談して、立法府が直接国民の声を聞いて、改善点を発見できるように、匿名で投書できる目安箱も街の至る所に設置した。

 これで政治にとって重要な、法律の落とし穴を見つけられる。


 偉い立場にあるものは、弱い立場の者の目線になって考えるのが難しい。そこで弱者の味方である目安箱の登場と言うわけだ。


 最後にアランとオーディンのコンビだが、これが意外と上手く機能している。この剣聖と軍神のコンビは犯罪者や犯罪組織を震え上がらせた。


 オーディンが逮捕し、アランが裁判すると言う単純な流れだが──考えてみると、犯罪者目線から見てオーディンに敵う訳もなく、逮捕されれば、アランの容赦ない裁きが待っている。



 噂が噂を呼び、今では街の中はおろか街道を行き交う馬車も、盗賊や山賊からの襲撃が無くなった。


 しかし、まだ全ての改革が終わった訳では無い。やるべき事は山ほどある──が、あの大会議からたったの一ヶ月で、ここまでの成果を上げられたのは全員が一つになり、国家改革に尽力してくれた事に他ならない。


 そして特に語り尽くせない程、四獣四鬼の全員が国家改革に全力で邁進してくれたのだ。


 僕は掛け替えのない仲間たちに感謝し──今日もまた、国民が笑って暮らせる国家を作るために、改革の道を歩み続けるのだった。



 第7章・完

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