第68話 改革の為の大会議、執務室に全員集合


 僕は執事さんにメイドさんを呼んで、いち早く執務室まで行き、大会議の準備をした。


 さらに物質創造で大量の焼き菓子である、クッキーも円卓に山盛り並べて、紅茶まで用意した。

 と言うのも、今現在でルストにいる面々の中から、適材適所の人材を決めるには、一度は大会議を開く必要があると思っていたからである。


 まずは、三権分立の長官たち三名。

 立法長官のウーグ、行政長官のピノネロ、司法府長官のアラン。

 さらに、ウーグ三兄弟の金勘定が得意な次男のウガル、建築が得意な末っ子のウドー。


 それに、武器防具以外にも衣類専門のドワーフがいないか、相談するために凄腕の鍛治職人ガリョー四兄弟を思念伝播で呼んだ。


 さらにアグニスとエル。この二人は先ほど仕事が決まったが、有事の際の事も決めておこうと思い呼んだ次第である。


 さらに思念伝播で六怪のドラゴンたちに、四獣四鬼も呼んだが……ドラゴンは擬人化できるから良いとして、四獣四鬼って擬人化できるのか?


 【伝えます。伝説級以上の魔獣や魔人は全て擬人化できます】


 え? そうなの? まあ、人型サイズの魔人とかは、別に擬人化する必要はないと思っていたが──魔獣が全員、擬人化できるのは有り難い。


 そして再度、六怪のドラゴンと四獣四鬼の魔獣や魔人たちに、執務室に入室する際は、人型の魔人以外は全員擬人化するようにと伝えた。


 はてさて、一応全員には伝えたが、どんな擬人化で登場することやら。


 最初に入ってきたのはシヴァだった。

 擬人化しているのだろう──全身氷の肌が真っ白な人間の肌になっている、さらに着物に被帛ひはくを纏った姿は、どことなくリリーゼを彷彿とさせる雰囲気がある。


 続いては、巨躯に筋骨隆々の二人組だった。一人は身の丈3メートルはありそうな坊主頭のふんどし姿のオッサンだった。流石に半裸にふんどしはマズいので、ハーフパンツを物資創造して穿いてもらった。

 そして二人目の巨躯の人物も身の丈が2メートルを超えた、今にもパンクバンドのライブをしそうな、全身レザーのジャケットにズボンに革靴を履いた、モヒカン頭の兄ちゃんだった。


 「あのさぁ。モヒカン君。もしかして、キングベヒーモスか?」


 「そうですピーター様。我はキングベヒーモスです!」


 「そ、そうか。取り敢えず、好きな席に座ってくれ」


 「解りました!」


 おい……擬人化って言ったけど、魔獣はこんなのが連発してくるのか?

 まあ、ふんどし姿のオッサンは一目でタイタンだと解ったが。


 「おう! 教皇様! なんでい? 大事な話ってのは!」


 おっ! ガリョー四兄弟も来てくれた。全員が長いヒゲを蓄えていて、仕事着のまま来ているから見分けるのが難しい。

 一つ言える事は、一番偉そうにしているのが長男だ。


 さらに、ドラゴンの六怪が続々と入室してきた。

 執事姿の黒い瞳が特徴的なファフニールに、鎧を纏った色黒で金髪のバハムート、半裸に青いマントを纏い青いズボンを穿いているリンドブルム、黒衣の僧侶姿をしたニーズヘッグ、六怪の中では唯一女性に擬人化している、純白のドレスを着たティアマト。


 そして最後に……九つの頭を持つ剣闘着姿のヒュドラ。


 エルの擬人化を見慣れてる所為で、六怪のドラゴンたちの擬人化のイメージが全て、ゴスロリの女性姿を連想していたが、意外とバリエーションが豊富なのに驚いている。


 続いて漆黒のローブを纏った、三つの頭を持つケルベロスが入室するなり、執務室内に異様な闘気が広がった。それはケルベロスがアランを見て警戒したからだ。しかし、僕がケルベロスに事情を説明すると解ってくれたのか、闘気が消えた。


 やれやれ、魔獣事情も色々あって疲れる……。


 後──まだ来ていないのは……。

 僕が執務室内を確認していると、赤髪赤眼のまるで大貴族のような服装の少年が入ってきた。


 「えっと……どちら様?」


 「我ですよ! フェニックスです!」


 「マジかよ! お前フェニックスだったの? まあいいや、好きな席に座ってくれ」


 「解りました!」


 いや〜まさかフェニックスだとは……。


 「遅れました。すみません」


 その声のする方を見遣ると、黒髪に厳つい顔をした、漆黒のマントを纏い軽装鎧の姿をしたものがいた。


 だから誰だよ……。


 「ごめん。擬人化した姿を見るのが初めてなんだ。誰だか解らないんだけど……」


 「私です。イフリートです!」


 えええ! イメージ崩れるな〜。もっと炎の魔人だぜ! 的なイメージだったのだが。まさかイフリートだとは。


 「じゃあイフリート。好きな席に座ってくれ」


 「解りました!」


 返事は全員、解りました。なんだな。


 「遅参すまぬ。ピーター様」


 ん? このフルプレートの騎士はまさか……。


 「もしかして、オーディン? いつもよりかなり小柄になったな」


 とは言っても、身の丈は擬人化したキングベヒーモスに並び、かなりの長身である。


 「私は擬人化と言っても、小柄になるだけなので」


 「まあ、最初から見た目が人間に近いからか。んまあいいや、好きな席に座って」


 「解り申した」


 お、何だか騎士っぽい返事。てか騎士なんだけど。


 さて、最後の遅刻者はイクシオンか。

 馬なのに遅いってどう言うこと?


 「遅れてすいません!!」


 「もう! 遅いよ、イクシオ──ん?」


 見ると、青い拳法着姿の青年が息を切らして立っていた。真っ白な長髪をポニーテールのように後ろで結んでいる。

 だから、何だかイメージが崩れる。もう擬人化させるのやめようかな……。


 「じゃあ皆揃ったね。イクシオン、好きな席に座ってくれ」


 「解りました!」 


 そして、僕を含めた総勢23名の大会議が開かれた。

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