第55話 時間との勝負、四獣四鬼と一緒に食料を狩りまくれ


 僕はまずエルに、出来るだけ魔物を狩って食料を確保するように頼み、アグニスには、神聖多重結界から出られるように、僕が仲間だと認めた者だけが、結界から出られるように、アグニスにだけ全能之結界者の権能の一つ、結界無効化を使い、とにかくアイテムボックスのスキルの中に、ありったけの魔物を入れて欲しいと頼んだ。


 そしてここからが本番だ。僕はユニークスキルの瞬間移動で即座にルストまでの転移魔法陣を作ると、ルストに戻り思念伝播で四獣四鬼しじゅうしきを呼び集めた。


 ケルベロス、キングベヒーモス、フェニックス、イクシオン、イフリート、シヴァ、タイタン、オーディンだ。


 大橋建造の仕事を頼んだタイタンには、あっちだこっちだと振り回して申し訳ないが、今の最優先事項は、30万人分の飢えた吸血鬼の食料確保なのだ!


 そして、四体と四人の魔獣と魔人を連れて、再度、転移魔法陣で吸血鬼の街ミストスに着いた。


 僕は思念伝播で状況を説明し、とにかく食べられる魔物を狩って狩って狩りまくって欲しいと頼み、四獣四鬼は勇んで魔物狩りを始めてくれた。


 僕の役目は、エルと四獣四鬼が倒して持ってきた魔物を、片っ端からインベントリに押し込む役目だ。


 これで役割分担は整った。そして僕は、敢えて魔獣たちが従えているモンスターは、連れてこなかった。それは単純である。間違えて他の魔人たちが殺してしまうことを避けたからである。


 一応、仲間だとは教えてあるが、この非常事態に僕が片っ端と言ってしまったから、万が一にも殺してしまったら、四獣四鬼との関係に亀裂が入る恐れがあったからだ。


 そしてまず、ケルベロスのユニークスキル、超速行動をエルと四獣四鬼に行使して、全員が超速で活動できるようになった。


 【伝えます。個体名ピーター・ペンドラゴンは、能力複製のスキルによりユニークスキル、超速行動を獲得しました】


 スキル獲得も嬉しいけど──やるしかない! 30万人分の食料確保!


 「よし! 皆! 行くぞ!」


 僕の号令で、四獣四鬼がけたたましい雄叫びをあげた。


 そしてまず、キングベヒーモスとイクシオンが先頭に立ち、近隣の大森林全体にエクストラスキルの天雷暴風を炸裂させ、森の中にいた魔物3000匹を確保した。


 よし、最初はタックルホース1500匹にビッグウルフ1500匹。それらを僕は雷光疾走のスキルを行使して、雷の速さでインベントリに詰めていく。


 【伝えます。個体名ピーター・ペンドラゴンは能力複製のスキルにより、エクストラスキル、天雷暴風を獲得しました】


 アグニスも紫電疾走のスキルを使い、せっせとアイテムボックスに魔物を詰め込んでいる。


 【伝えます。個体名ピーター・ペンドラゴンは、能力複製のスキルによりユニークスキル、紫電疾走を獲得しました】


 何だか、スキルを獲得しに来たのか、食料を調達しに来たのか解らなくなってきたぞ。


 しかし……他国のお偉いさんが、一国の教皇と、その側近が、こんな姿を見たら何て思うだろうか?


 そんな事を一瞬考えてしまったが、今はそんな場合では無い!


 そして、森林の奥までケルベロスが走っていき、まさに山ほどの大きさのマウンテンコブラを挑発しながら、森林から平地まで走ってやってくると──タイタンの強烈な踏み蹴りで動きを封じ、最後はオーディンの斬鉄剣の一撃で頭と胴が一瞬で切断された。


 つーかデカい! デカすぎる! 余りに重いので、インベントリに入れる時に、タイタンに頼み手伝ってもらった。


 この巨大蛇一匹で5万人分ぐらいの食料か。さっきの合計3000匹は10万人分ぐらいだ。合わせると、15万人分ぐらいだな。アグニスを見て知っているが、吸血鬼は大食いだ。後半分、まだまだ狩るぞ!!


 お、イフリートからの思念伝播だ。


 (「お伝えしますピーター様。ハイオークの群れ1500匹を見つけましたので、すぐさま燃やしました。しっかり肉を残した状態で軽く燃やしたのでご安心を。つきましては確保をお願いします」)


 (「解った! すぐに行く! でかしたぞイフリート!」)


 (「ハハッ! では私は引き続き、魔物の群れを探しますので、一旦失礼します」)


 いよっし! 次はハイオーク1500匹だ! 普通のオークよりもハイオークは三倍ぐらい大きいから、かなりの大手柄だ!


 しかも、思念伝播の長所は、なんと言っても、今どこで会話しているか判る所だ。よーし! 待ってろよハイオーク1500匹いいい!!


 僕は進んだ、森林の奥を──そう、ハイオーク1500匹をインベントリの中に押し込むために。


 いたいた。うおー! イフリートのやつ、ミディアムレアの状態で倒してくれたのか! 今すぐ食べれそうだ! よし、早く1500匹のハイオークをインベントリに押し込め!


 これで5万人分ぐらいだ! 残るは10万人分だな。


 おっ! また思念伝播だ。今度はシヴァからである。


 (「ピーター様。フレイムタイガーの群れ2000匹を見つけたので、全て氷漬けにしました」)


 (「ありがとう! よくやってくれた!」)


 (「では、私はまた魔物の群れを探してきます」)


 今度はフレイムタイガーか。それも2000匹だぞ。

 というか、もう森林の中の魔物達は狩り尽くした感じだな。


 魔物の生態系が崩れませんように……。


 とまあ、その前に、早く捕獲だ!


 2000匹を確保するときに、時間短縮の為にアグニスを思念伝播で呼び、二人で、フレイムタイガーをインベントリーに押し込んだ。


 フレイムタイガー2000匹か。これで5万人分ぐらい──合わせて25万人分だ!


 残るは──5万人分の食料だが森林は狩り尽くしたし、海もないしなぁ……。


 おっ、また思念伝播だ。今度はフェニックスか。


 (「ピーター様。巨大な湖の中にサハギンを見つけましたので、湖ごと炎で蒸発させた所、サハギン5000匹を確保しました」)


 (「そうか! ありがとう! これで30万人分に届くと思う! 今すぐそっちに行くよ!」)


 (「ハッ! では我は念の為、まだ魔物がいないか探してきます」)


 よし! これで30万人分だ! てか湖まで遠いな、あいつかなり遠くまで探しに行ったのか。まあ光速疾走があれば一瞬だが、量が5000匹か、アグニスにも手伝ってもらおう!


 そして、5000匹の焼きサハギンと、炎で蒸発して一滴も水が残ってない湖まで来た。


 しかし量が多い。またアグニスに頼んで一緒にインベントリに押し込むか。


 インベントリに押し込んでいる最中、アグニスはずっと魚臭いと文句を言ってたが、自分の故郷の事を思ったのか、せっせとインベントリに押し込むのを手伝ってくれた。


 さてと、後は──あいつの出番だな。


 僕は思念伝播でエルを呼び出した。


 その時に、何とエルは最果てのバルルマヌルまで行っていたようで、何とコカトリスの群れ1万羽を確保していたようだ。


 だが、あいつには、やってもらいたいことがある。それはウォーターブレスで干上がった湖を復活させてやることだ。


 これじゃあマジで生態系が崩れてしまう。


 そして、エルが超速行動で戻ってくると、すぐにウォーターブレスで湖に水を大量に放出し、元の湖に戻った。


【伝えます。個体名ピーター・ペンドラゴンは、能力複製のスキルによりエクストラスキル、ウォーターブレスを獲得しました】


 またスキルを獲得してしまった、が。最後の大仕事だ!


 僕とエルとアグニスを連れて、瞬間移動の転移魔法陣ですぐさま大砂漠のバルルマヌルまで行くと、1万羽のコカトリスをインベントリに押し込むだけ押し込んだ。


 これは10万人分の食料になるぞ! まあ、保存食的な意味と、迷惑料的な意味で、多めに食料の魔物を持ってきた事にしよう。


 だあああああ!! 疲れたあああ!!


 てか、ケルベロスの超速行動のスキルのおかげで、三十分ぐらいで全て確保できた……!


 これで何とか、武力蜂起は避けられそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る