第48話 テレサヘイズの今後の戦略と、新たな動乱と戦火


 「ドラゴンの里で宴会だ!!」


 「他国の情報収集と財務っす!!」


 「兵士訓練と実技戦術です!!」


 「「「ぐぬぬぬぬ……!」」」


 今、なにをしているかと言いますと、これからの国家戦略の会議をしています。


 まあ、僕はそろそろ疲れたから、ドラゴンの里で宴会したいんだけど。

 だって結構頑張ったんだし、少しぐらいご褒美があってもいいと思うんだよね。


 だが、ここは真面目になるか、ってかあの食い倒れドラゴンと真祖見習いの上から目線令嬢はどこ行きやがった!!


 きっとまたどこかで、買い食いをしているに違いない。


 「教皇様!」


 「だからピーターでいいよ!」


 「じゃあピーターさん! 世界地図はこの国にあります?」


 え? いきなり世界乗っ取るの? まぁ夢が大きいことは悪いことじゃないけど。


 「まだ、宝物庫の整理が終わってないから、ちょっとメイドさんに訊いてくる」


 あれ? これ教皇の仕事なのか? ええい! 細かいことは考えるな!

 僕は王宮内のメイドさんに宝物庫の鍵を貰い、そのまま宝物庫にいくと──金銀財宝が……いかんいかん。今は世界地図だ!


 って、あの二人も呼んでこよう。


 「うひゃああ! すんごいお宝っすね〜」


 だよね〜最初はそっちに目が行くよね〜。


 「二人とも真剣に探して下さい。世界地図がなければ、今後の戦略方針を練ることができません」


 ピノネロに言われるがままに探す、僕とウーグであった。


 「あった! ありましたよ! 世界地図が」


 「やった〜! じゃあ世界地図も見つかったことだし、宴会を──」


 「では会議室に戻りましょう」


 ですよね〜。


 ピノネロが世界地図を広げ、なにやら思案している。僕も世界地図を見るのは初めてだ。


 ほうほう、この世界は三つの大陸と一つの島があるのか


 てかテレサヘイズって一番デカい大陸の中央かよ。だから商業都市だったのか。しかも領土も意外とデカい。その左がリリウヘイズで、我が国の真下がマギアヘイズか。マギアヘイズも領土が広い。てか意外だが、右に位置するエンジェルヘイズの領土は狭いが、なんとあのリリウヘイズもエンジェルヘイズ並に領土が狭い。


 と言うか、リリウヘイズよりも左の大地は広大だが、大雪原地帯やら大湿地帯やら大煙塵地帯やら、およそ人が住める大地では無いようだ。


 まだ誰も入ったことがない、未開拓の大地なのかもしれない。


 話が少々逸れてしまったが、そのエンジェルヘイズのさらに右が、大陸の終わりになって海に面しているダミアンヘイズ第三帝国ね。この国も領土が広いな。そして日本みたいに小さな島国がクーロンヘイズか──って、なに!? あの砂漠のバルルマヌルってクーロンヘイズにあるのか! じゃあ危ない島なのかな?


 というか、残りの南の大陸と北の大陸には名前がなかった。


 「なあピノネロ。お前この地図の南の大陸と北の大陸の名前知ってる?」


 「ああ、そこは元々名前はありませんよ。四凶よんきょうの大陸ですから。南の大陸が、巨人王ダエージュの大陸で、北の大陸が、深淵王グドルーの大陸です。大陸全てが国なので名前が無いんですよ。ですけど、最近のことですが、噂で聞いた話しだと、ダエージュとグドルーが自国の大陸に名前を付けたそうです。なんでも、ダエージュの大陸がギガントヘイズで、グドルーの大陸がアビスヘイズらしいです」


 ふ〜ん。いつか出会う時が、ありませんように……!!


 「所で、なんで世界地図なんて必要なんだ?」


 「戦略を練る時は、世界地図。戦術を練る時は、戦火を交える場所の地形図。基本です」


 流石は参謀長だ。なにも言い返せない。


 「国の基盤となるためには内外に目を向ける必要があります。私が外に睨みを利かせ、お二人には国家の基盤を盤石にしてもらわないと、まずは、立法、行政、司法です」


 「あっ! それ知ってるよ。三権分立でしょ? でもなぁ〜最近思うんだよ。前の国王から引き継いでた奴らで、なんか悪巧みしてそうなやつがさ。でも尻尾見せないんだよね〜」


 僕の発言を聞くと、ピノネロは驚き言った。


 「まさか、教皇様も三権分立の発想をお持ちだとは!」


 「だからピーターでいいよ。それでさ、僕なりに大臣制度で行こうと思ってるんだ。いっそのこと、全部新しくしちゃおうと思って。でもちゃんと考え方の基盤は、立法や行政や司法も入ってるよ」


 「そうですか。では国家内の戦略はピーターさんに任せるとして。問題はエンジェルヘイズです」


 「え? エンジェルヘイズだったら、ピーターさんがこの前、同盟を結んだばっかっすよ。何で問題なんすか?」


 ウーグの質問にピノネロは答えた。


 どうやら、リリウヘイズのような絶対君主制の国との同盟は、絶対の王の判断だから、すぐに同盟破棄をしようものなら、王が混乱していると思い、部下がついてこないから、当分のうちは同盟が決裂することはないそうだ。


 問題は、他の大臣たちも王に意見できる、エンジェルヘイズこそが、同盟破棄をすぐに言ってくる危険性があると言うことらしい。


 他の大臣が、あらぬ噂を王に吹き込み、時には飴で、時には鞭で、王を影から操る大臣が必ずいるそうだ。


 ダミアン第三帝国の現在の内乱が良い例である。


 軍部の大佐が内乱を起こし、現在は名前が変わり、大佐が閣下になり、名前もダミアン第三帝国に変わった。


 つまり、ピノネロがウーグに伝えたかったことは。絶対君主制では無い国との同盟は危険を伴うと言うことらしい。


 でもな〜。そんなに、すぐに同盟を破棄なんて……。


 「もう一度、エンジェルヘイズには使者を送り、同盟が確固たるものであると──」


 「会議中失礼致します!!」


 ピノネロの言葉が遮られ、近衛兵団長が飛んできた。

 普通、こう言う時って参謀補佐とかが飛んでくるんだけど──まだまだ適材適所の、人集め政治には時間がかかりそうだ。


 「んで? どうしたの?」


 「も、申し上げます! え、エンジェルヘイズが一方的に我が国、テレサヘイズとの同盟を破棄し挙兵しました。その数およそ100万! 加えて、エンジェルヘイズはマギアヘイズと同盟を結んだとの報告が入っています!」


 そして、一礼すると、近衛兵団長は会議室から出て言った。


 うわ〜ピノネロ先生の言う通りになっちゃったよ。何とか頑張って三国同盟が結ばれた矢先にこれだもんな。


 エンジェルヘイズめ! いきなり過ぎるだろ! あのタヌキオヤジめ覚えてろよ!!


 しかし、ここまでピノネロの考えと現実に起こっていることが一致すると、ちょっと怖くなるな。


 「ピノネロ! 何か戦略は?」


 「あることには、あります! ただ、同盟破棄までの流れが早すぎる……。これはエンジェルヘイズの大臣ではなく、マギアヘイズの圧力と見て間違い無いかと!」


 「解った! 鍋蓋なんちゃら作戦は出来ないけど。まだ他に戦術はあるんだろ?」


 「もちろんです! ですがこれは逆にチャンスかもしれません! 最初から同盟を結ぶ気が無い国だと判り、尚且つテレサヘイズに対し一方的な侵略行為! これは、早々に小国であるエンジェルヘイズを攻め落とす、大義名分が出来たことに他ありません! 毒蟲は早めに駆除するべきかと思います!」


 まさかのエンジェルヘイズを毒蟲扱いかよ! 言う時は言うね! やっぱりピノネロもエンジェルヘイズの軍事学校の在り方には、不満があるんだろうな。しかし大きく出たな! 小国とは言え、一気に国取りですか!


 こうなったら、天才参謀長の実力と僕のスキルも全開に使おう。実は最近、ユニークスキルやアルティメットスキルを獲得し過ぎて、少し戦闘中に遠慮して、フルパワーのスキルを使ってなかったし。それにまだリリーゼからの加護の力と、アルティメットスキルの爆炎之終焉者の権能も使ってみたいと思っていた所だから、丁度いい。


 「じゃあ、緊急事態だ! 僕はすぐにリリウヘイズに行って応援を要請してくるから、戦術をまとめておいてくれ! 国取り戦術、期待してるぞ! 天才参謀長!」


 「天才でもありませんし、まだ仮の参謀長ですが──解りました! 身命を賭して、必ずや神聖魔教国テレサヘイズに勝利を!」


 言ってくれるねぇ! 結構ノリノリじゃん。隠しても無駄だよ? この戦略戦術大好きっ子が!


 そして、僕とピノネロの会話に入れず、無言で小さくなっているウーグ。


 「ウーグ」


 「……」


 「おいウーグ!」


 「ああ! すいませんっす! 頭が混乱してしまって!」


 「混乱する気持ちも解るけど、ウーグには、エンジェルヘイズが攻めてきたことを隠す扇動をしてもらいたい! 何でもいい! 大軍勢の使者が来たとか何とか、大ボラを吹いて民衆の混乱をできる限り鎮めてくれ!!」


 「わわわ、解ったっす!!!!」


 まさか、こんなにすぐに、同盟が破棄されるとは。


 現実の国家作りは、ゲームみたいに上手くは行かないか。


 とにかく、僕はリリウヘイズに行って助力を得られないか、頼みに行かないと!!


 あとエルとアグニスはこの超緊急事態の時に、どこで油を売ってやがるんだ!!

 見つけたら説教してやる!!

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