風船みたいな心
奈美ちゃんは、妊娠をして今後どうするのか、オレはどうするべきなのか…奈美ちゃん宅に行けば少し良いヒントがあるんじゃないかって思ったけど…
いいヒントが思い浮かばなかったです。
…
それから一週間が過ぎました。
学校での奈美ちゃんは、とっても元気です。
もうすぐ出産という大仕事があるのに、奈美ちゃんは不安とかってないのか…?ってくらい元気です。それとも…から元気なのか…。
オレは休み時間奈美ちゃんに話しかけた。
そしたら、
「あ、くまさん無事に渡せたよ」
と言った。
⁈
渡したの⁇
誰に?
お祝いにもらったんじゃ⁇
「くまさんは…今どちらに?」
「え、お姉ちゃんちだよ。昨日旦那さんが車でお迎えにきて一緒に帰ったよ」
と教えてくれた。
…あー、あのくまさんはお姉ちゃんの出産祝いだったのか。
てっきり奈美ちゃんがもらったものだと…
あっさり謎が急に解けた。
ただのオレの勘違いでした。
…
そんなオレは、もうすぐ産まれる奈美ちゃんと赤ちゃんのことがとても心配だ。
赤ちゃんが産まれても奈美ちゃんは、オレとの交際を続けてくれるのだろうか。
…
夫婦はお互いを理解し、話し合うことが大切みたいなことを聞いたことがある。
空耳かもしれんけど。
だからオレは…奈美ちゃんと夫婦じゃないけど、きちんと話し合いたいと思う。
そして話し合いの結果によっては、奈美ちゃんのご両親に了承を得ないとならない。
もう、時間がない。
だから、オレは奈美ちゃんの部屋で話し合いたいと願い出た。
そして土曜日、奈美ちゃん宅へ向かった。
道路を曲がりもうすぐ奈美ちゃん宅っていうところで、誰かの話し声がした。
だれかいるのかな…
…
と、お庭を覗き込むと庭師さんがいらっしゃった。
庭師さんと親しげに話すお父様。
ってか、お父さんって…もしかして…あの格好からするに、庭師さんなんじゃね⁉︎
庭師さんか…。
そしておとなりにいるのがお弟子さんっぽいな。
木の切り方を教わっているようだ。
なのでオレは、お庭の庭師さんと奈美ちゃんのお父様にご挨拶をした。
すると奈美ちゃんのお父様が
「おう、よくきたな」
と笑顔で迎え入れてくれた。
…
素敵な笑顔のお父様。
太陽に照らされてより一層輝いてみえた。
…
お父様が庭師さんだなんてだれが予想していただろうか⁇
少なくともオレはまったく予想しておりませんでしたっ‼︎
まぁ…なぜか少しホッとした。
そして玄関では、お母様がお出迎えしてくださった。
やっぱり部屋着もお派手で…。
でも、優しそうなお母様だ。
笑顔でいらっしゃいと迎えてくれたり、この間はバタバタとお出かけしてしまって、なんのおもてなしもしないでごめんなさいね。とにっこり微笑んでくださったり…
いいお母様だ。
それこそ服装は、派手だけど…見た目とは裏腹に優しくわりと大人しめのお母様なのだと感じた。
どことなく雰囲気が奈美ちゃんっぽい。
…なぜかオレは手汗がすごい。
奈美ちゃんを妊娠させたのは、オレじゃないけど…なんか、なんかとってもお父様にもお母様にも後ろめたい気分でたまらなかった。
奈美ちゃんは、ずーっと言いたくても言い出せなくてしんどかったんじゃないかな…。
もう心は…パンパンの風船くらいになっているかもしれない。
爆発してしまう前にオレがきちんと守ってサポートしてあげなければ。
そう心に言い聞かせて、一段一段しっかり踏み締めて階段をのぼった。
奈美ちゃん、大丈夫だからね。
オレがもうすぐ奈美ちゃんの心をゆったりさせてあげるからね。
と。
そして部屋に入ると、やっぱり奈美ちゃんが言っていた通りに、くまさんがいなくなっていた。
そのかわり、キラキラした飾り物が飾ってあった。
日があたるところだから、より一層キラキラと輝いていた。
あのくらいに奈美ちゃんの心も輝かせたい‼︎と、オレは強く思った。
なのでオレは、奈美ちゃんの部屋に入るなりいきなり奈美ちゃんを優しく包み込んだ。
「奈美ちゃん。オレが奈美ちゃんたち二人を守りたい。」
と言いながら。
続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます