くまさん

 奈美ちゃんは、誰からぬいぐるみもらったの?の質問に

 

「え?」

 と返してきた。

 

 なのでオレは、

「ん?」

 と聞いた。

 

 すると奈美ちゃんは、

「リボンついてるんだよ?」

 と答えた。

 

 

 …

 

 あれ?

 ぬいぐるみが男の子?女の子?って話に変わってる?

 

 リボンついてるとか…なに?

 メスっていうこと?

 

 性別聞いてないんだけどな…

 

 オレの質問が悪かったのか?

 

 誰にもらったとか聞いたからうざかった?

 

 …

 

 誰にもらったの?リボンついてる。ってどういうこと?

 

 話のラリーは?

 

 ん?

 

 オレがおかしいのか?

 

 理解力ゼロってやつっすか⁉︎

 

 えっとー…誰にもらった?…からのリボン…

 

 

 む、難しい…

 

 

 さっきは、ベビーベッドの謎もオムツの謎も簡単に謎解きクリアしたのに…

 

 

 こんどのぬいぐるみ事件は、難しいぞ。

 

 

 リボン…このリボンっていうワードだけが鍵を握っているに違いない。

 

 

 くまさん…大きい…リボン…

 

 

 …

 

 わからない。

 

 あ、待てよ…

 

 奈美ちゃんは、誰にもらったかをオレに言いたくないのか?

 

 だから話を逸らした⁉︎

 

 そういうこと⁇

 

 

 それなら…深入りしない方が無難かな。

 

 

 言いたくないのに、そんな詮索するようなことするのは、申し訳ないもんな。

 

 それに奈美ちゃんは、妊婦さんなんだもんな。

 

 精神的に刺激するのもよくないよね。

 

 やめておこうか。

 

 さっきも、うっかりゴミをみて…誰のオムツ?って危うく聞きそうになったもんな…。

 

 いちいち人の家に来て詮索ばっかりするのは、気持ち悪いもんな…。

 

 

 オレは名探偵を引退するときがきたんだと諦めて、大人しく紅茶を啜った。

 

 名探偵…一日で終了。

 いや、数時間かな。

 

 

 

 なのでオレは、

「リボン、かわいいね」

 とあたり障りない返事をしておいた。

 

 

 そこで話が終了するんだろうと思っていると奈美ちゃんは、

「でしょ、女の子だからピンクもいいかなって思ったんだけど、黄色もかわいいでしょ」

 とくまさんをみて微笑んだ。

 

 

 え?

 

 奈美ちゃんが自分で買ったみたいに聞こえるのは…オレだけ?

 

 

 出産祝いなんだよね?

 まだ産まれてないけど…お祝いにいただいたくまさんなんだよね?

 

 え?

 

 てか、女の子なん?

 

 奈美ちゃんのお腹にいる子女の子なん?

 

 …

 

 

 奈美ちゃん…オレはもう…あや跳び失敗して絡んでしまった人くらいに心が絡んでおります。

 

 

 …

 

 わからない…

 

 

 オレはかなり困惑していた。

 

 

 このまま…くまさんの話続けててもいいん?

 

 それすらも謎だ。

 

 

 そんな困惑中のオレに奈美ちゃんは、

「くまさん…置く場所あるかな?子供部屋あるよね。てか、車乗れるかな」

 といきなりのひとりごとが開催されていた。

 

 

 ん?

 もう部屋…あるよね?

 

 くまさん…置く場所バッチリあるよね?てか、すでにドッシリ部屋に居座っておりません⁇

 

 

 てかさ、車って何⁉︎

 

 このくまさんって…中に誰か入ってる⁉︎

 

 まさか…ムックリ立ち上がってオレのこと、投げ飛ばしたりしないよね?

 

 

「あのー…奈美ちゃん」

「なぁに?」

 

「こ、このくまさん…触ってもいい?」

 と聞くと奈美ちゃんは、

「うん、全然いいよ」

 と言ってくださったので恐る恐る触ってみた。

 

 

「ふふ、壮太…くまさん苦手?」

 と笑われた。

 

「えっ?」

「だって……めっちゃ腰ひいてるいてるからさ」

 とまたも笑う奈美ちゃん。

 

 

 …

 

 言われれば…腰がひいている…

 

 恥ずいわ。

 

 

 

 でも、くまさん…触った感じは人間入ってなさそうだった。

 

 

 あーよかった。

 

 

 てかさー…車って何よ?

 

 

 くま、くるま、リボン…

 

 

 統一性のない言葉たち…

 

 

 わっかんねー‼︎

 

 

 とにかく飲まなきゃやってられないぜ‼︎ってことで、一気に紅茶を飲み干した。

 

 

 そんな様子を見て奈美ちゃんは、

「おかわり持ってこようか?」

 と気の利くお言葉をオレにかけてくれた。

 

 

 なんて気配り上手なことでしょう。

 

 でもさ…

 

 せっかくお姉さんきてるし…ご両親ももう帰ってくる頃なんじゃなかろうかね。ってわけでオレは退散することにした。

 

 

 謎を残しつつ…解散。

 

 

 とりあえず奈美ちゃんが今日も笑顔で元気なのでなによりです。

 

 

 家族の様子伺いだったけど…驚きの連続だったな。

 

 謎も…解けないままだし…

 

 

 

 

 

 続く。

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