第2話 君

   *

「俺、アイツとは、本当に付き合ってたんだぜ。知らなかったの、お前だけだよ」

 高校を卒業してから、君が話した真実に、僕は少なからずショックを受けた。

 確かに、君が誰と付き合っていようが僕には関係のないことだった。しかし、君が同級生を好きだということを僕が知っている、ということを君は知ってい、僕の「あの子のどこが好きなんだ」という問いにも平然と答えていた君がだ、なぜか黙っていたことが残念だったのだ。

 しかし、考えてみれば、当時の君は可愛い奴だ。どんな理由かは知らないが、僕には、とにかく話したくなかったのだろう。一度、隠してしまったために、その後もずっと言いそびれていたのかも知れない。

 まあ、若い時には、いろいろ考えてしまうものさ。高校時代の君を思い出し、あれも成長の過程なんだろうと考えているよ。

 ところで、卒業した後、君は進学で都会に出ていったね。僕は地元の会社に就職した。

 実は、今、僕には君にまだ黙っていることがあるんだ。機会を見て、話そうと思っているけれど、タイミングが難しいんだ。

 僕は、君のお母さんとお付き合いしているんだ。

 地元の友達には、既にもう、結構知られてしまっている。知らないのは、君だけなんだ。

   *

 健康に気をつけて、学業を頑張れよ。いとおしい君よ。

   (おわり)

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