第58話 番外編5 計算外(知恵編)

 ご飯を与えていないはずなのに、痴漢犯罪者の顔色はよくなっていた。


 この状況で考えられるのはただ一つ、第三者が学校でご飯などを与えているというもの。痴漢犯罪者を合法的に殺害したい家族にとって、史上最大の敵が出現したことになる。


 痴漢をするような虫けらに、手を差し伸べようとする人間がいるのは、一ミリも計算していなかった。長いものに巻かれることの多い国では、少数派となる痴漢犯罪者を完全に排除すると予想していた。

 

 痴漢犯罪者殺害を邪魔する輩をリサーチしたいけど、学校内に理由なく立ち入るのは不可能に等しい。そんなことをすれば、不法侵入で警察に通報される。


 学校内で効果のあるアクションを起こせない以上、息子を援助しようとする虫けらを抹殺するのは不可能。ゴミを延命させるろくでなしを、指をくわえてみているしかない。


 学校が無理だとしても、自宅なら好き放題にやれる。死にたいと思えるように攻撃していけばいい。金、権力のない高校生は、親の奴隷になるしかない。子供の働けない国では、親は絶対権力を有している。


「ただいま・・・・・・」


「しょうね、痴漢犯罪者に対する圧を強めよう。徹底的にたたき続ければ、生きることをやめようとするはずだよ」


「そうだね。あんな屑が生きていたら、我が家の災いとなりかねない。あいつの死後は周囲の同情を誘えるよう、巧みな言葉を使っていけばいいよ」


 二人で痴漢犯罪者の部屋に向かった。血の気だっているのか、目からは大量の欠陥が浮いている。


 痴漢犯罪者の部屋につくと、二人は一斉攻撃を浴びせる。


「死ね・・・・・・」


「痴漢したくせに、生きるなんてありえないわ・・・・・・」


「窓から飛び降りろ・・・・・・」


「生きる価値のないクズ男」


「あんたが生きていると、周囲に顔向けできないんだけど・・・・・・」


「そうだわ。痴漢をした男のせいで、白い目を向けら得ているんだけど・・・・・・」


 痴漢犯罪者のメンタルを破壊するため、二人は徹底攻撃を続ける。あいつは傷ついていないふりを装うだろうけど、内心は確実にボロボロになっているはず。暴言を吐かれて、平気でいられる人間など地球にはいない。

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