第52話 留置場で思わぬ人物と再会(知恵編)

 警察官に不当逮捕され、留置場に不当監禁された。


 息子がご飯を食べなかったのは、自らの意思によるものである。こちらは家庭内の事件において、何も関与などしていない。そのように警察に主張するも、まったく信じてもらえなかった。


 取調室に連行される途中、思いがけない人物と顔を合わせる。相手もこちらに気づくと、強烈な眼を飛ばしてきた。


「あんたのいうとおりにしたら、警察に逮捕されたじゃない。どのように責任を取ってくれるのよ」 


「実行に移したのはおまえたちだ。馬鹿正直にいうことを聞くから、とんだ災難にあったじゃないか」


 自分の非を認めず、責任の100パーセントを転嫁するクズ男。こんな男と結婚したことを、強烈に後悔するも後の祭りだった。


 娘についても、警察で取り調べを受けている。殺人未遂犯とみなされたからか、未成年であってもなかなか釈放されないようだ。


「出世に響くから、殺しておけといったのはあんたでしょう」


「おまえ、女の分際で男に逆らうつもりか」


 女は男の機嫌を取るための道具。全国の女を敵に回す、許すまじの発言だ。


「知恵、しょうねがすべての罪を被れ。俺は何も悪くないと裁判のときに証言するんだ」


「あんたこそ、罪を全部かぶりなさい。あんたのくだらない思いつきのせいで、人生を棒に振ることになったのよ」


「女の分際で生意気なことをいうな」


 元夫は顔を数回ビンタする。その様子を見ていた警察官は、ついに口を開いた。


「おまえたち、いい加減にしろ」


 二人はそれぞれの警察官に、別々の取調室に連行される。お互いは顔が見えなくなるまで、殺意の火花を散らしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る