第51話 さらなる地獄(一縷の父編)

 知恵と離婚したあと、しょうねにも見放された。これまでの労力は、すべて水の泡となった。


 家族がバラバラになったのは、知恵、しょうねの行いによるもの。二人のやった後始末を、どうして俺がとらなくてはならないのだ。


 無職の状態では、ローンを払うのは無理。借金を膨らませないよう、すぐに売却の手続きを取った。


 実家の売却額はわずか100万円。7000万前後で購入した家は、市場価値を完全に失っていた。


 新しい家を探そうとするも、スムーズにはいかなかった。息子を殺害しようとした男として、不動産会社から徹底的にマークされていたのだ。


 家が見つかるまでの間、ネットカフェを利用していた。路上で睡眠をとるのは、絶対に避けるべきだ。ノーガード状態での睡眠は、生命を危険にさらすも同然だ。


 個室でボケっとしていると、ネットカフェの店員に声をかけられた。


「お客様のことで、警察が話を聞きたいといっています。すぐに対応していただけないでしょうか?」


 息子にご飯を食べさせなかったのは、知恵、しょうねである。俺は罪に問われることは何もしていないはずだ。


「山小鳥遊さんですね。お話がありますので、署までついてきていただけないでしょうか?」


 丁寧な口調で話しているものの、目はお前は犯罪者であると語っている。このままではやばいと思い、警察官を振り切ることにした。


「山小鳥遊が逃げようとしているぞ。すぐに追いかけろ・・・・・・」


 20メートルくらい走ったところで、足は一歩も動かなくなった。デスクワークを続けたことで、体力は地に落ちていた。


 警察官は冷徹な笑みを浮かべながら、


「警察まで同行願えますか?」


 といった。おまえのことはすべて、調べがついているといわんばかりだった。


 さらに抵抗しようとするも、複数人の前では無力だった。両手に手錠をつながれた状態で、警察に連行されていった。

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