第53話 新しい未来に向かって(ラスト)
机に悪口を書いた生徒は、警察に逮捕された。他人をたった一度叩くためだけに、人生を棒に振った形となった。
逮捕された生徒は、形式上の自主退学or退学の方向で話は進められている。学校はイメージダウンを避けるために、犯罪に手を染めた学生を切る方針をとった。トカゲのしっぽ切りがピンとくる。
元カノについては、既に退学していた。噂の域を出ないものの、施設に預けられているらしい。痴漢冤罪の風評被害を流したことで、親から愛想をつかされた。あいつがいなくなったことで、健全な学校生活に大きく近づいた。
警察に通報するように進言したのは、ご飯を恵んでくれた優愛である。スマホの記録は決定的な証拠となり、生徒たちは言い逃れできない状況となった。
両親は殺人未遂とあって、懲役刑以上となる見込み。刑期を終えるまでは、牢獄の中で時間を過ごす。
しょうねは14歳未満ということもあり、重い罪には問われないらしい。未成年だからという理由で、軽い刑で済ませるのはおかしい。殺そうとしたという意味では、同じくらいの刑に処すのが自然だ。
自宅の周辺をうろついたら、実家は売却済みと書かれていた。ローンを払えなくなったことで、実家を売り払ったらしい。
誰もいなくなった家を見て、すべてを清算できたのかなと思った。過去にとらわれることなく、前向きに生きていけるといいな。
空を眺めていると、背中に柔らかい感触があった。
「一縷、どうしたの?」
「優愛、いろいろと考え事をしていたんだ」
「実家がなくなったのは寂しい?」
「それはないかな。あの家に戻ろうものなら、生きる希望を完全に吸われる」
数日間の虐待によって、人生に幕を閉じるところだった。深い闇の記憶は、永久的に封印してしまいたい。
「一縷、伝えたいことがあるといっていたよね。ここで伝えてもいい?」
「優愛、いいよ」
「一縷、交際しよう」
一瞬も迷うことなく、彼女の気持ちにこたえた。
「ああ、わかった」
「高校を卒業したら、籍を入れて夫婦になろう」
こちらについても即答した。
「ああ、わかった・・・・・・」
「一縷、深く考えなくてもいいの?」
「優愛がいなければ、僕はおそらく死んでいた。残りの人生のすべてを、命の恩人に将来を捧げてみようと思う」
彼女の弁当は命綱となった。あれがなければ、確実にあの世に旅立っていた。
「一縷、ありがとう・・・・・・」
元カノに痴漢冤罪の風評被害を流されてから、いろいろなことがありすぎた。これからは落ち着いた生活を送っていけるといいな。
「一縷、外でデートをしてみよう」
「そうだな。どこに行きたい・・・・・・」
「○○○○○○がいい・・・・・・」
「わかった。そこにいこう」
固い絆で結ばれたカップルは、幸せな未来を築き上げることができる。目的地に向かいながら、そのようなことを考えていた。
*ここまで読んでくださり、ありがとうございます。もしかしたらですけど、途中で没になったものを番外編として載せるかもしれません。(痴漢冤罪女が一縷にもう一度告白する場面など。優愛のお姉さんについても、書こうとしたことはありました)
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