第15話 あいつとどのようにして別れるか(祐大編)

 彼女である葛音は、痴漢冤罪のでっちあげを行った。クラスメイトのほとんどは噂を信じ、一縷に対して集中攻撃を行っている。自分が正義のヒーローになったかのように。心の中にある劣等感を、和らげるみたいに。


 あいつの動機はおそらく、元カレの存在が邪魔になったから。目的を達成するためなら、どんなこともやりとげる史上最低クラスの女。こいつのそばにいるだけで、運気はすべて逃げていく。痴漢をでっちあげる女は、フグの毒よりも危険といえよう。


 一縷に視線を送ってみる。ご飯を食べていないのか、顔はおおいにやつれていた。あのままなら、数日後には栄養失調であのよおくりだ。 


 助け舟を出してやりたいところだけど、大多数を敵に回すのは避けたいところ。あいつの命が助かるよう、心から祈ることしかできない。


 一縷のところに、学校一美人で無口な女性が近づいていく。痴漢冤罪があってから、二人の距離は急に近くなった。


「一縷君、普段よりも早く起きて、ご飯をたっぷりと作ってきたんだ。いろいろと辛いだろうけど、食べて元気を出そうね」


 赤の他人のために、早起きしてご飯を作る。彼女の心は、完全に一縷に傾いている。


「優愛さん、ありがとう・・・・・・」


「水も飲んでいないんでしょう。水分補給だけはしておこうよ」


 食事を食べていないだけでなく、水も飲ませていないとは。一縷の家族は邪魔者を消去するため、ありとあらゆる手段を用いている。


「優愛さん、ありがとう・・・・・・」


 一縷はペットボトルの水を喉に押し込んでいく。水分を一滴も摂取していない男の飲みっぷりは、大食いファイターさながらだった。


 祐大のところに、疫病神がやってきた。一縷と優愛に意識を取られていたため、逃げるのに遅れてしまった。


「祐大君・・・・・・」


 もっともらしい理由をつけて、奴からすぐに離れることにした。


「トイレに行ってくるわ・・・・・・」


「私もついていく・・・・・・」


「女が男のトイレについてきてもしょうがないだろ」


「そうかもしれないけど・・・・・・」


 こいつとかかわるのも面倒になってきた。厄介になる前に、親の力で社会的に抹殺しておいたほうがよさそうだ。

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