第16話 今日もご飯を恵んでくれる美少女

 生きていられるのは、優愛がご飯を分けてくれたおかげ。あれを食べていなかったら、栄養失調で倒れていた。


 意識が遠のきそうになっている男のそばに、優愛がやってきた。


「優愛君、お弁当を準備してあるよ」


 大相撲の力士が食べるような、超ビックサイズ。あまりに大きすぎる弁当に、思わず声を漏らしてしまった。


「デカ・・・・・・」

 

「家ではまったく食べていないんでしょう」


「うん。昨日から、食事抜きにされたんだ。水分もとらせてもらえていない」


 優愛はうーんと唸った。


「昨日の話を聞いている限りでは、さらにやばい状況になっているね」


「父、母の目を見ていると、本気で殺そうとしているのを感じる。あまりに怖くて、家から逃げ出したい気分だよ」


 優愛は息を吐いた。


「おとうさん、おかあさんに事情を説明したよ。優愛が信じるのであれば、一緒に住んでもいいといっていた。たいしたことはしてあげられないけど、同じところで生活してみよう」


 家族に殺されそうになっている男に、突如現れた救世主。彼女には感謝しても、感謝しきれない。


「新しいところの生活も不安なんだけど・・・・・・」


 赤の他人による虐待率は、実家よりも遥かに高い。新しい家において、命を奪われる場面が頭をよぎった。


「一縷君はそれをいえる立場なの。実家に戻ったら、すぐに殺されるかもしれないんだよ」

 

 実家は絶賛炎上中。ほとぼりが冷めるのを待っていたら、あの世に直行することになる。


「すっごくありがたいんだけど、優愛さんはどうして、そこまで尽くしてくれるの?」


 優愛は視線をちょっとだけずらした。


「いずれ、わかるときがくるよ」


 おなかがすきすぎているのか、意識は薄れつつある。


「おなかがすいているでしょう。お弁当を早く食べよう」


「あ、ありがとう・・・・・・」


 優愛の作った弁当を、怒涛の勢いでかきこんでいく。


「一縷君、ゆっくりと食べたほうがいいよ」


 頭では理解していても、食欲をストップさせられなかった。


「あまりにおなかがすいていて・・・・・・」


 昨日食べたのは、弁当一つ、パン2個とわずかな米粒だけ。男子高校生にとって、完全にエネルギー不足といえる。


「水分も準備してあるよ」


「優愛さん、ありがとう・・・・・・」


「礼は家でしてほしいな・・・・・・・」


 三食分を一気に食べても、腹痛を起こすことはなかった。丸々一日食べていない胃袋は、


 おなか一杯になった男は、おおきなあくびをする。昨日は未来のことが不安で、ほとんど眠れていなかった。


「一縷君、睡眠をとろう。膝枕してあげるよ」


 意識の遠のいた男は、優愛の膝の上で横になっていた。眠っているときに、太ももを触っていたことは、あとになってから知らされた。


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