第17話 最後の自宅
「ただいま」をいうよりも先に、母から罵声を浴びせられた。
「犯罪者のぶんざいで、よくも帰ってこれたわね」
妹が続いた。
「性犯罪者は、すぐに死ねばいいんだよ。死ね、死ね、死ね、死ね・・・・・・」
「そうよ。すぐに死になさいよ。自殺だと面倒だから、トラックに轢かれなさい。電車は後々に面倒だから、絶対にやめるように」
電車で自殺すると、遺族に損害賠償をされる。それゆえ、自殺をするのは車が推奨される。
「あんたは生きていることが、社会の害悪なんだ。頭にそのことを叩き込ませなさい」
血の気だっている二人に、簡潔に事情を説明する。
「○○さんの家で、お世話になることになった。ここには永久的に戻ってくることはないから・・・・・・」
息子が出ていくと知ると、母は満面の笑みを作った。これまで見た中で、一番輝いている。
「あんたの面倒を見なくていいと思うと、最高の気分だわ。二度と戻ってこなくてもいいわよ」
妹は万歳三唱を繰り返す。兄がいなくなることを、500パーセントの喜びで表現している。
「万歳、万歳、万歳、万歳、万歳、万歳、万歳・・・・・・」
「残された荷物は捨てておくね。あんたの私物を処分できると思うと、せいせいするわ」
息子の私物を完全に捨てる母親。完全に逝かれてしまっている。
「永久的にさようなら・・・・・・」
「痴漢犯罪者と縁を切れて、いたせりつくせりだね」
「今日の夜はステーキにしましょうか」
「ステーキを食べられるの。うれしい」
息子を追い出し、ステーキで祝福する母と娘。そんな姿を見ると、大きなため息をつかずにはいられなかった。こんな母に育てられたことについて、ものすごく恥ずかしい気分にもなった。
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