第31話 高熱が出てしまった

 38度の高熱を出し、学校をお休みすることとなった。


 頭には冷たいタオルを巻いている。熱を下げるにあたって、大きな意味を持つアイテムだ。


 療養するための場所として、優愛の姉の部屋を使用中。優愛の部屋では休みにくいとはいえ、第三者の部屋を勝手に使用することに引け目を感じる。


 熱を下げるために、ロキソニンを一粒飲んだ。一時間ほどで効き目があり、六時間くらいは効果が持続するらしい。


「山小鳥遊君、調子はどうなの?」


「よく眠ったこともあって、回復傾向にあるみたいです」


 明日に学校に行けるのかは、何ともいえない状況である。立場の悪さからすれば、あと、一、二日くらいはずる休みしたいところ。 


「あの子のわがままで、いろいろと疲れたでしょう。熱を冷ますまで、姉の部屋で療養してね」


 優愛のわがままで発熱したのではなく、家族から食事をもらえなかったことによるもの。水分も与えられなかったために、体に大きなダメージを残すこととなった。


「塩雑炊を作ってきたの。これを食べたら、少しは元気になれると思うわ」


 病気になったら、手厚い看護を受けられる。食事抜き生活を送ったために、当たり前のことが頭から抜け落ちていた。


「おかあさま、ありがとうございます・・・・・・」


「アイスクリーム、ヨーグルトなども買ってあるわよ。たっぷりと食べて、元気を出してね」


 家族からご飯を与えられなくなった男は、第三者から生きるための栄養をもらえる。誰の子供として、生まれてきたのかわからない。 


「おねえさんの部屋をお借りして、本当に申し訳ありません。髪の毛一本のこらないよう、きれいに掃除させていただきます」


「許可はとってあるから、山小鳥遊君は気にしなくてもいいわ。元気になったら、優愛のために力を貸してあげてください。山小鳥遊君にしかできない、とっても重要な役割があるから」

 

「そ、そうですか・・・・・・」


「はい。わがままな娘ですけど、よろしくお願いします」


 優愛のおかあさんの作った雑炊を口にする。これまで食べてきた雑炊よりも、塩分は少し多めだった。

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