第40話 社長に連絡(優愛の父編)
スマホを手に取ると、あるところに電話をかける。
「おとうさま、忙しいところ失礼いたします」
父は会社の社長をしている。
「息子、夜分遅くにどうしたんだ」
社長に対して、事実だけを簡潔に告げる。
「わが社の山小鳥遊君は、息子を殺害しようとしたみたいです。証拠もあるので、お聞きください」
娘が証拠として録音した、テープを聞かせる。
「なるほど、これはひどすぎる」
「娘の話によると、食事と水分を取らせず、風呂、電気の使用も禁止され、洗濯物も放置されていたようです。山小鳥遊君は事実を隠ぺいするために、こちらに嘘をつきました」
「事実だとすれば、情状酌量の余地はないな。明日の朝一番に、退職させなさい。懲戒解雇を突っぱねた場合は、殺人未遂罪で警察に届ければいい。殺人未遂を犯すような男は、わが社には不要だ」
「おとうさま、承知いたしました・・・・・・」
「生きる希望を失った、娘はどうしている。部屋に閉じこもって、独り言をぶつぶつといっているのか」
「山小鳥遊君がやってきてからは、笑顔になる機会が増えました。昔の元気さを取り戻すかもしれません。」
電話の向こうから、社長のオホンという声が聞こえる。
「娘のためにも、山小鳥遊君をきっちりと育てるようにしなさい」
「おとうさま、かしこまりました・・・・・・」
社長は電話を切った。それを確認したのち、冷蔵庫に向かった。体が疲れたことで、冷たいものを欲するようになったらしい。
娘のはしゃぎ声が聞こえる。あんなに元気な声を聞いたのは、本当に久しぶり。たった一つの出来事で、別人みたいに暗くなっていた。
「一縷、胸マッサージしてあげるね・・・・・・」
優愛が心を開いたのは、同じ苦しみを味わうことになった男に親近感を抱いたから。一縷の犠牲によって、元気を取り戻すことにつながった。
「優愛、生で・・・・・・」
「わかったよ。一縷は性欲旺盛な男だね」
「優愛、ありがとう・・・・・・」
「一縷、絶対にいなくならないでね。生きるのが嫌なんて思わないでね」
「わかった・・・・・・」
娘は失われた5年間を取り戻すかのように、元気な声で笑っている。娘を育ててきた父として、溜飲が下がる思いだった。
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