第42話 深夜の来客(優愛編)

 おとうさんは資料を見ながら、ブラックコーヒーを飲んでいた。


「おとうさん、話があるんだけど・・・・・・」


「優愛、どうかしたのか?」


 テーブルにボイスレコーダーを置いた。


「私の読んでいた通り、痴漢は冤罪だったよ。証拠となる、音声を入手してきた」


 おとうさんに収集した音声を聞かせる。


「山小鳥遊君は悪いことをしていないのに、殺されそうになったのか。平静を装っているけど、再起不能レベルの傷を負っていると思われる。結婚したいほど好きなら、大切にしてあげなさい」


 一縷を連れてきたときから、結婚願望まで読み取られているとは。娘のことを見ていないようで、しっかりとみているのを感じた。


「おとうさん、一縷には内緒にしてね。一方的に押し付けても、距離は開いていくだけだもの」


「そうだな。優愛の気持ちは、ゆっくりと伝えていけばいい」


 おとうさんと話をしていると、玄関のチャイムが鳴らされた。


「夜遅くに来客がやってきたみたいだね・・・・・・・」


 時刻は夜の11時を回っている。来客をするには、あまりに遅い時間といえる。


 おかあさんが対応すると、女性の声がこちらに聞こえる。


「一縷の母で、知恵といいます。息子の件でお話が・・・・・・」


 息子を殺害しようとしたくせに、こちらにやってくるなんて。置かれた状況の危なさを鑑みて、取り戻しに来たと考えるのが自然だ。


 おとうさんは資料を置いたあと、おかあさんに声をかける。


「こちらで対応する。おまえはさがっていろ・・・・・・」


 おとうさんは、全身から怒りオーラを発している。あまりに禍々しくて、近づくことすらできなかった。おかあさんも同じように感じたのか、おとうさんから知らず知らずのうちに距離を取っていた。

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