第13話 朝食抜き&家族からの暴言

 空腹の圧はすさまじく、睡眠をほとんどとれなかった。安眠するためには、おなかを満たしている必要があるらしい。


 おとうさん、おかあさん、妹の三人は朝食を食べていた。


「あんたの朝食なんてないからね。犯罪者は空腹で死ねばいいの」


 優愛の昼食があったからこそ、意識をかろうじて保てている。あれをもらえていなかったら、自宅で倒れ、真実は闇に葬られていた。


 昨日は弁当をもらえたけど、今日はどうなるかわからない。何も食べられなかったら、数日後には空腹で死ぬことになる。


 おなかぺこぺこで苦しんでいるところに、母はさらなる追い打ちをかけてきた。


「学校で飢死しなさい。そうすれば、高校のせいにできるからね。損害賠償をもらえば、こちらはウハウハだよ」


 息子を餓死させて、慰謝料をふんだくろうとするなんて。性根は完全に腐りきっている。


 妹も続いた。


「そうよ。自宅で死なれたら、多大な迷惑を受けるわ。私たちのためにも、見えないところで死んでくるように」


 とうさんも続いた。


「おまえは人間の欠陥品だ。生きる資格なんてないんだ」


 痴漢冤罪によって、ほとんどの人間を敵に回した。唯一の味方である、優愛の動向によっては死を覚悟せねばなるまい。


「ご飯を食べさせていないのに、なかなか死なないわね。ゴキブリ並みの生命力を持っている」


「ご飯はともかく、水を飲まなければすぐに死ぬわよ・・・・・・」


 妹の悲壮な声が聞こえる。


「高校にはウォーターサーバーがあるはず。そこで水分補給をされたら・・・・・・」 


「水を飲めたとしても、ご飯は抜きにしている。栄養不足でいずれは死ぬはずだよ。私たちはそのときが来るまで、じっと待っていればいいんだよ」


 父のとがった声が聞こえる。


「メンタル的に追い詰めていけば、いずれは死のうと思うはずだ。俺たちはそうなるように、暴言を吐き続ければいいんだ」


「そうだね。死ね、死ね、死ねと連呼してやろう」


「メンタル的に参ったときに、包丁をそばに置けばいいんだよ。のどをグサッといくはずだ」


「暴言ははいてもいいけど、暴力は振るわないようにしてね。傷跡が一つでも残ろうものなら、圧倒的に不利になるんだからね」


「そうだね。第三者に介入されるとややこしくなるものね」


 三人の頭の中にあるのは、一縷の死を待つことのみ。家族として生きていく選択肢は完全に消えていた。

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