第6話 痴漢をでっちあげた理由(葛音編)

 痴漢冤罪でっちあげは、想像以上の反響があった。


 痴漢を学校中にでっちあげた理由は一つだけ。新しい男とつきあうにあたって、元カレの存在自体が邪魔になったから。あんな奴と交際していたら、未来は完全に真っ暗だ。


 警察に通報しなかったのは、冤罪だと発覚させないため。痴漢冤罪は損害賠償の対象になりうる。


新しい彼氏の実家は、超がつくほどの大金持ち。挙式をあげられれば、巨額の富を入手できる。あらゆる手を使って、婚約者になってやるんだから。


「祐大君、ハグをしようよ」


 大金持ちの男のお嫁さんになるには、恩を売っておくのは重要だ。


 祐大は誘いに乗ってこなかった。


「パス・・・・・・」


「どうしてなの?・・・・・・」  


「お前とハグをするのは、とてつもなくリスキーな行動になりえそうだから・・・・・・」


「どうして、そんなことをいうの?」


 祐大は胸に手を当てた。


「自分の胸に聞いてみるといいさ・・・・・・」


 祐大はこちらに視線を向けない状態で、スマホで時刻を確認する。


「大切な友達を待たせてあるんだ。今日はこれくらいで失礼するよ」


 痴漢の話をでっちあげてから、彼の対応は一気に冷たくなった。余計なものを排除したのに、どうしてこんなことになったのか。


 彼氏がいなくなったあと、空は急に暗くなった。二人の関係を示しているようで、心はちょっとばかし暗くなった。


*葛音=本音が屑という意味です。

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