第7話 家族はガチで殺そうとしている

 自宅に戻った瞬間、母はすさまじい目を向けてきた。おまえなんか、とっとと死ねといわんばかりだ。


「痴漢を働いたくせに、よく家に戻ってこれるわね。存在自体が邪魔だから、家から出ていきなさいよ」


 母の目は血走っており、冤罪であると伝えても信じる確率はゼロ。ほとぼりを冷めるのを、待つしかなさそうだ。


「あんたのご飯はなしだからね。犯罪者を養う義理なんて、私たちにはないんだから・・・・・・」


 ごはん抜き=「とっとと死んでしまえ」。親からつきつけられた、死刑宣告に目の前は真っ暗になった。


「あんたを生かしておいたら、家族に深い災いをもたらす。ご飯を食べなかったことにして、死んでもらうことにするわ」


 殺害しておいて、自殺したですませるつもりなのか。知恵を身に着けた、大人のやることはあまりにもえげつない。


「情報を拡散されると厄介だから、スマホを没収しておくわね」


 唯一の手段を取り上げ、鼻息を荒くする母。ボクサーが相手を殴り倒して、興奮しているかのようだ。


「電気は使用禁止ね。約束を破った場合は、荷物をまとめて出て行ってもらうわね」


 ご飯を食べさせてもらえないだけでなく、電気まで使わせてもらえないなんて。地獄さながらの生活を強いられる。


「布団についても、没収しておくわね。痴漢犯罪者は地べたで眠ればいいのよ。家で寝られるだけ、最大限の感謝をしなさい」


 母は押し入れに入っていた布団を、ひとつ残らず没収。今夜からは床で寝ることを余儀なくされた。


「ご飯を買えないように、お金も全額没収しておくわ。痴漢犯罪者がお金を持ちたいなら、アルバイトすればいいんだわ。痴漢する男なんて、雇う会社はないと思うけど・・・・・・」


 高校生の息子にアルバイトで自活しろという母。育てるのを完全放棄し、あの世送りにすることだけを考えている。おなかを痛めて生んだこと、愛情をかけて育てたことは完全に忘れ切っているみたいだ。

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