第8話 壁にひどすぎる言葉&暴言地獄
一縷の部屋の壁に「ゴキブリよりも生きる価値のない男」、「地球の息を汚染させる息を吐く死んだほうがいい存在」、「生まれてきたことが不正解」、「我が家の大量破壊兵器」、「自殺しろ」、「疫病神」などの用紙が貼られている。よくもここまで考えられたものだと、別の意味で感心する。
スマホで証拠を残そうにも、母に没収されている。第三者に事実を伝えるのは、不可能となっている。
痴漢冤罪で苦しむ息子に、母はさらなる制裁を加える。
「今からトイレを使用禁止にするから。トイレをしたいなら、スーパー、コンビニまでいけばいきなさい・・・・・」
お風呂を禁止するだけでなく、トイレまで使わせないなんて。生理現象を我慢するのは、至難の業といえる。
「洗濯についても、今日からはしないからね。服を着たいなら、同じものを着ていけばいいの」
新しいカッターシャツの残りは2枚。3日後には、においのついた服を着ていくことになる。
「私たちの明るい未来のために、息をされては困るのよ。あなたの死こそ、家族にとって必要なことなの。高校生になったのだから、それくらいは理解してちょうだいね」
息子の死を必須条件と言い切れる母。本性を知ったことで、育ててくれた恩は完全に吹き飛んだ。
「痴漢を働いたくせに、生きるなんてありえないわ。女の敵はとっとと死になさい。あなたは骨になったとて、誰も困ったりはしないから」
母はライターをカチカチとさせる。骨という言葉を使われた直後だからか、火葬場で焼かれているシーンが思い浮かんだ。
骨になりなさいといった女は、人形が首をつっているところを見せつけてきた。
「このようになれば、生きる苦しみから解放されるわよ。素晴らしいアイデアに感謝しなさい」
首つり自殺を推奨してくる母の目は、血の気走っている。息子の死を本気で臨んでいるのは、火を見るよりも明らかだった。
「死ね、死ね、死ね、死ね、死ね・・・・・・」
スピーカーが狂ったかのように、妹は「死ね」を連呼する。兄を慕っていたころの姿は、完全に消えている。
「死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、死ね、とっとと死ね、死ね・・・・・・」
「痴漢犯罪者はすぐに死ねばいいのに。生きていることが、家族の迷惑になることもわからないの」
母は部屋の窓を開ける。
「死にたくなったら、窓から飛び降りなさい。自殺したら、こちらの手を汚さずに済むわ」
「そうよ。すぐに飛び降りればいいんだよ」
家族の死を心の底から願う母と妹。家族虐待は絵に描いた餅でないことを、はっきりと思い知らされた。
どんなに苦しくても、逃げる場所は0。親ガチャに外れた子供は、大人になるまで精神をガリガリと削られ続ける。
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