第35話 破局(葛音編)
「おまえとはもう付き合えない。悪いけど、すぐに別れてくれないか」
「私と別れたら、冤罪事件をでっちあげてやるからね・・・・・・」
冤罪ぶちまけを交渉材料にして、男の心をつなぎとめようとする。思い通りにならないときは、脅すのが一番である。
「冤罪事件を流したいのであれば、勝手にやっていればいいさ。資産家の力をもってすれば、おまえを消すのはたやすい」
祐大の父親は、日本を代表する実業家。敵に回したら、将来の就職も危うくなる。
祐大は唇をなめる。
「元クラスメイトから聞いたんだけど、俺たちの会話が複数の動画で流れているぞ。痴漢をでっち上げた女に対して、すさまじいほどの反響があるから・・・・・・」
痴漢をでっちあげた話を、複数の動画に流されている。
「そ、そんなことは・・・・・・」
祐大はスマホを取り出す。
「すぐに聞かせてやってもいいぞ」
動画から聞こえてきたのは、まぎれもなく自分の声だった。学校にいる何者かに音声を録画され、配信されたようだ。
「おまえといたら、加担したとみなされる。俺の将来のためにも、おまえといるわけにはいかないんだ」
祐大と結婚して、悠々自適な生活を送るプランが崩れ落ちていく。
「祐大君だけが頼りなの。私のそばからいなくならないで・・・・・・」
体を押し付けようとするも、祐大に完全拒絶された。
「じゃあな。おまえとの関係は今日で終わりだ・・・・・・」
私のプランは完璧だったはず。どうして、こんなことになってしまったのか。
「一つだけ教えてやる。優愛と打ち合わせをして、おまえの信用を落としたのは俺だ。痴漢冤罪をぶちまけたことで、堪忍袋の緒は完全に切れていたんだ」
最愛と思っていた彼氏に、完全に裏切られていたなんて。その事実を知り、心のピースは一つずつ壊れる音がした。
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