第28話 優愛の過去

 優愛は買い物に出かけるも、元気を完全に失っていた。痴漢をされた傷は、数時間程度では微塵も解消されないらしい。 


一人でくつろいでいると、優愛のおかあさんが部屋に入ってきた。


「山小鳥遊君、話があるんだけど・・・・・・」


 すぐに体を起こすと、母の前で正座をする。


「おかあさま、どういったご用件でしょうか?」


 真っ先に思い浮かんだのは、家から出ていけという内容。赤の他人を受け入れるも、面倒になったというパターンだ。


「山小鳥遊君、優愛を見ていてどのように思う?」


 母親の目は、真実を知りたいと訴えかけている。


「人を寄せ付けないイメージです。僕と会話をするまで、学校で誰かと親しくしているところはほとんど見たことはありません」


「そっか。あのことを引きずっているんだね」


「あのこと・・・・・・」


 母は一拍置いてから、優愛の過去を説明する。


「昔はいろいろな人になついていたんだ。仲間もすごく多くて、笑顔いっぱいな女の子だった」


「優愛はどうして、人を寄せ付けなくなったんですか?」


「人気者だったことで、クラスのボスに目をつけられたの。ボスだった女は、学校中にありもしないような嘘を流した。あの子はそれで孤立してから、人を全く寄せ付けなくなった。家族ですら、話をするのは稀だった」


 学校での拒絶ぶりは、小学校時代に作られたもの。


「普段は人にまったくなつかないだけに、二人で過ごすといったときはびっくりしたよ。同性ではなく、異性だと知ったときはさらにびっくりした」


 優愛のおかあさんの目つきは、優しいものに変化した。


「心を崩壊させたと思っていただけに、あの子に人間の心が残っていたのは嬉しいよ。あの子の心のピースを取り戻すためにも、仲良くしてあげてくださいね」


「僕なんかでよければ・・・・・・」


 母はため息をついた。


「あの子の裸を見せられたら、男としては・・・・・・」


「おかあさんの想像された通りです」


 視線は無意識のうちに、優愛の胸、〇○○などに向かっていく。美しい体を前にして、男の本能に打ち勝つのは無理である。


「優愛は学校で痴漢にあいました。傷は深いので、今日だけは優しくしてください」


「山小鳥遊君、貴重な情報をありがとう」


 二人で話していると、優愛の「ただいま」という声が聞こえる。優愛のおかあさんはすぐさま、痴漢を受けた娘に応対していた。

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