第27話 唯一の味方が痴漢された
一縷、優愛の二人は教室に戻ってきた。
「心さん、そいつは痴漢犯罪者・・・・・・。葛音と同じように痴漢されるぞ」
優愛は毅然とした態度をとった。
「本当に痴漢したのであれば、警察に通報されているはずでしょう。しないということは、でっちあげなんじゃないかな・・・・・・」
反論の難しいことをいわれ、男は口をつぐんだ。
「それは・・・・・・」
優愛はクラスメイトに強烈な視線を送った。
「痴漢のうわさに便乗して、人をたたきたいだけなんだよ。弱い者いじめをする点では、より悪質だと思うけどね・・・・・・」
たくさんの女を泣かしてきた男が、優愛を抱きしめようとする。
「痴漢男といるよりも、俺と一緒に過ごそうぜ・・・・・・」
優愛は激しく抵抗したあと、スマホを取りだす。その後、あるところに電話をすかさずかける。
「すみません。○○高校で男子生徒に痴漢されました。すぐにかけつけていただけないでしょうか。住所は○○○○市○○町〇-〇-○です」
教師に相談せず、真っ先に警察に通報する。学校の先生に対する信用は完全に0だ。
優愛は要件を済ませると、電話を切った。
「警察にかけたのはジョーク・・・・・・」
「さっきの電話は本当だよ。痴漢をされたんだから、警察に通報するに決まっているでしょう。警察は間もなくやってます。あなたの人生はこれでゲームセットですね」
一縷に優しく接していた女性は、痴漢をした男には容赦しなかった。
パトカーのサイレンが聞こえる。優愛に抱き着こうとした男は、教室から慌てて逃げ出そうとする。
「一人の高校生ごときが、警察から逃げられるわけないでしょう。往生際の悪いことはしないように」
警察に捕まりたくないのか、男は必死に逃げ出そうとする。クラスメイトの視線は、無様な姿に注がれていた。
優愛は人目をはばかることなく、一縷の胸に飛び込んでくる。傷があまりに深すぎて、学校であることを忘れてしまったかのようだ。
「一縷、苦しいよ、辛いよ」
「優愛・・・・・・」
「昼休みが終わるまで、ずっとこのままでいてね・・・・・・」
クラスの男たちから、数えきれないほどの殺気を感じる。それでも、命の恩人を無碍にすることはできなかった。
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