第3話 家族から強烈に非難される

 家の中に入った直後、母は鬼の形相を向けてきた。


「一縷、学校で痴漢したみたいだね。高校から連絡があったわよ」


「そんなことはしていない・・・・・」

 

 女が痴漢されたといえば、嘘であっても事実認定される。性犯罪については、世間は完全に女の味方だ。


「痴漢をするような男に育てた覚えはないわ。私はあんたに裏切られたのね」


「だから・・・・・・」


 母はまったく話を聞かなかった。


「痴漢男の夕食はこれで十分だわ。これを食べたら、明日の朝まで部屋から出ないように。恥さらしに自由に動かれたら、こちらが息苦しくなる」


 母に渡されたのは、30くらいの米粒と、30ミリくらいの水。赤ちゃんですら満腹になりえない食事量。息子を生かそうとしているのではなく、あの世送りにしようとしている。


 未来を案じていると、母はさらなる制裁を加えてきた。

 

「痴漢犯罪者はお風呂に入らないでね。お風呂そのものが腐って、使い物にならなくなるわ」


 満足に食べられないだけでなく、お風呂にも入れないなんて。大量の汗を吸った体は、全身にかゆみを与える。


「洗濯ものについては、温情で洗ってあげるわ。きれいな服を着られることに、心から感謝しなさい」


 母と話をしたとて、話をよい方向に導くのは難しい。今日はあきらめて、部屋に向かおうかなと思った。


 母に背を向けた数秒後、妹が帰宅する。


「おかあさん、ただいま・・・・・・」


 母は「おかえり」をいう前に、痴漢をした事実を吹聴する。


「おにいちゃん、人間として最低だね。生きていること自体が、恥ずかしくなるレベルだよ」


 昨日まで慕っていた妹の姿は完全になくなり、敵意300パーセントの視線を向けてくる。


「痴漢犯罪者の顔は見たくないわ。すぐに部屋に行きなさい」


「そうだよ。部屋に閉じこもっていればいいんだよ」


 交際する彼女を間違えたばかりに、人生がめちゃくちゃになるなんて。おつきあいする相手を選ぶときは、細心の注意を払う必要があるのを学んだ。

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