第2話 敵だらけの中にいるたった一人の味方

 机には「死ね」、「学校に来るな」、「くたばれ」、「人間のクズ」、「今すぐに死ぬべき男」などと書かれている。犯罪レベルの言葉は、一人の男子高校生を傷つけるには十分だった。


 暴言を書いた人間は、痴漢の事実の真偽など気にしていない。第三者をたたくことによって、劣等感を解消することを目的としている。インターネット上の誹謗中傷と構造は同じだ。


 いたずらを残したまま、授業を受けるのは難しい。消しゴムで落書きを消すことにした。


 落書きを消そうとするとき、一つのメッセージを見つける。


「一縷君、絶対に負けないで。困ったことがあったら、すぐにやってくるからね。心優愛」


 励ましのメッセージを書いた女性は究極の無口で、誰とも戯れていない。学校という空間において、一人世界を生きている。


 心優愛は学校一の美人で、いろいろな男から告白される。誰にもOKを出さず、彼氏はいまだにゼロのまま。難攻不落の彼女を、落とすのは誰になるのかといわれている。

 

 痴漢冤罪をでっちあげられたことで、学校一の美少女とかかわりを持つようになるなんて。彼女も過去に同じ経験をしたのかな、とちょっとだけ思った。

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