第16話 五大保安官・黒木順輔

五大保安官・黒木順輔と、ダーウィンズオーダーの戦いが始まった。


「言っておくが、俺はこれでも五大保安官の中で一番弱え。だから俺に勝てない組織は野望なんか叶えられねえってことだ」


黒木はそう言いながら周囲に銃を放つ。僕はあれだけ鍛えた回避スキルでなんとか避けたけれど、他の銃を向けられた人はみんな眉間に当てられて死んでしまった。


「手応えねえなお前ら。俺は銃以外持ってないぜ?」


一崎さんはナイフで自分を傷つけ、傷口から血の弾丸を飛ばす。しかし、それも当然ながら避けられてしまう。


「お前らこんなもんかよ?」


「それ、ホーミング式だから」


一崎さんは銃弾の性質について説明しながら、どんどん血の銃弾を飛ばす。


「ふん。避けられないのならば、防げばいい」


黒木の隣にいた女性がそう言い、空に向けて手を伸ばす。すると黒木の方に向かっていた血の弾丸が透明な壁にベチャベチャとくっついた。


「私も混ぜてくださいよ、みなさん。私の能力で空気を固められるんです」


しまった……彼女のことはノーマークだった。しかし、一崎さんはそれでも慌てない。


「それならこうする」


一崎さんはなんと、自分の腕に大きな切創を作る。痛みで少し顔が歪んでいるけど、それでもかまわずに血を噴射する。それが空気の壁に衝突し、透明な壁は見えるようになってしまった。


「一崎さん、大丈夫ですか?」


近くにいた人が一崎さんを気にかけるけど、一崎さんは余計なお世話だとでもいうかのように前に進み、さらに血液攻撃を仕掛ける。


血液の攻撃が両腕の急所に当たり、空気の壁を作っていた女性は腕が使えなくなってしまった。


「クソッ……こんなはずじゃ」


「サヨ、お前はもう休んでおけ。こっからは俺が行く」


そう言って黒木は前に進んでいく。そして両手に銃を構え、次々とこちら側の頭部を狙って射殺していく。


「ぎゃあああああああ!」


「うわあああああああ!」


あちらこちらに断末魔が響き渡る。しかし、そんな状態も長くは続かなかったようで、ついに銃弾が切れてしまった。


「おーっと、ついに弾が切れちまったか。銃の使いすぎも良くないもんだな。あいにくうちは銃弾に規定があってな。これ以上持っちゃいけない決まりになってるのよ〜。さあて、銃を探すとするかな〜」


そういいながら死骸の上をくまなく探し回る黒木。その前に洞坂さんが立ち、黒木の動きを止める。


「うっ!動けなくなっちまった……」


僕はそのうちにダッシュし、黒木の元から銃を素早く奪い取る。そして、その銃を逃げながら遠くに投げ捨てた。


「おい、お前!なんてことをしてくれて……おかげでバカが釣れたよ、ありがとーさん♡」


動けるようになった瞬間、黒木は洞坂さんの腹を勢いよく蹴飛ばした。洞坂さんは血を吐きながら倒れている。幸い胸板が上下に少し揺れているので、息はしていて生きているようだ。


「よーしよーし、これであとは大将ボスの首を取るだけだ」


黒木がそういうと、周りの生存者たちがニヤリと笑いかける。


「うちの大将ボスの首ぃ?んなもん取れるわけねえじゃん!」


「現実見せてあげましょうよぅ、エボル」


「はははっ、面白いなー。いくら五大保安官でも大将ボスには勝てないでしょー」


周りの人たちの笑い声に包まれながら、うちのボスが登場する。


「おお、五大保安官の1人として有名な黒木くんじゃないか。君程度これで十分だ。まずは縛ってあげよう」


エボルはそういうと、口から白い糸を蜘蛛のように吐き出し、巣を作って黒木を固定した。


次に金属の杖を取り出し、そこから電気を流して黒木を感電させ、気絶させてしまった。


そして最後に黒木の腕を持ち上げて、それに牙を生やして噛み付く。何が起こっているのかわからない。


「よし。これで黒木くんは昏睡状態になった。私たちの勝ちだ」


その発言に周囲は喜ぶ。中にはエボルを称賛したり、その場で飛び上がったりする人もいた。そんな中、僕はあることが気になってエボルに質問する。


「あの、エボル」


「なんだい?」


「エボルの能力は一体なんなんですか?」


「それを聞くか。私の能力は【進化エボリューション】。あらゆる動植物の力を借りることができるのさ。無論、体を元に戻すことだってできる」


「じゃあ、さっきのはどうやってやったんですか?」


「そうだね、一つ一つ説明してあげよう。まず、最初に吐き出した糸はもちろん蜘蛛の能力だ。蜘蛛といっても徘徊性の蜘蛛と巣作りをする蜘蛛がいて、私が使ったのは後者だ。次に使ったのはデンキウナギ、発電能力を持つ魚だ。そして最後に数種の有毒生物の能力を借り、新種かつ強力な毒を使って敵を倒した、というわけだ」


話をダラダラと聞いている。しかし、とにかくすごいことをしているという実感は湧いた。


「そういえば、負傷者はいるかな?いたら訓練場に来なさい。復活させてあげよう」


「わかりました。えーと、一崎さんと洞坂さんです」


「わかった。じゃあみんな、2人をやさしく訓練場まで運んでね」


「わかりました!」


そうして負傷者2人は訓練場に運ばれていった。

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