第6話 実戦訓練①

初任務まで残り3日まで迫った僕たち3人は、お互いの能力を教え合っていた。


「なあ、まずお前の能力はどんな能力なんだ?洋」


「僕はこうやって水を出したり操ったりできるよ」


僕はそう言ってコップの中に全体の半分くらいの水を生成する。


「そうか。俺は体を武器に変えられる。弓とか銃とか、飛ばす系の武器はまだ無理だけどな」


黎人くんは右腕をブレード状に変形させて見せつけるように腕を動かしながら言う。


「私は……瞬間移動ができます」


アミちゃんはそう言いながらどこかに消えてしまった。


「どこに行ったんだ、アミ?」


「あ、あの……ここにいますけど」


その声を聞いて僕と黎人くんが振り向くと、そこには僕らと反対側のところに移動したアミちゃんがいた。


「もしかして……転移能力を見せたかったの?」


「はい……急に消えて本当にごめんなさい」


小さく丸まりながらそういうアミちゃんの姿は正直少し可愛らしかった。


「で……でも……こんな私がいても足手纏いですから……。それに私の能力、結構体力を消費しますし……」


「でも、空間を移動できるのはすごいと思うぞ」


「あ、それはありがとうございます……でもこれ、どうやって攻撃に使えばいいんですかね……?」


確かにそれは結構重要な課題だ。なのでそれについて夜通し議論し、作戦を立案することにした。


————


7月11日、午前5時。


僕たち3人はそれより早く起きて、訓練場に到着していた。しかし、一崎さんたちは僕たちよりも先に来ていた。そして、観客席の方にはなんとあのエボルがいた。


一崎さんの両隣にいるのは爽やかな見た目の人と、とても背が高くて目つきの悪い30代くらいの人で、両方とも男性だった。


「来たんだ。おはよう」


「あっ、おはようございます」


僕は挨拶をしながらお辞儀をする。それに続いて、黎人くんとアミちゃんもお辞儀と挨拶をする。


「みんな揃ったことだし、ルールを説明しよう。時間無制限で戦ってもらって、10秒間倒れたまま立てなかったら脱落。脱落したら再生しても立たないでね。先に全員脱落したチームの負けだ」


僕から見て一崎さんの右側にいる、爽やかな見た目のお兄さんが言った。


「あ、あの……とりあえず、自己紹介した方がいいと思うんですけど……」


「ああ、そうだね。アミちゃん、じゃあボクたちから先に挨拶をしよう。ボクの名前は洞坂ほらさか ぎんだよ」


「私の名前は一崎 由依果」


「俺は郷戸こうど 番三郎ばんさぶろうだ」


「じゃあ次は俺たちからだな!俺は雲垣 黎人、よろしくお願いします!」


「私は陸原 アミです……」


「僕は矢橋 洋と言います、よろしくお願いします」


「オッケー、みんなの名前、ちゃんと覚えたよ。それじゃ、実戦を始めよっか。それでは、そこにいるエボルさん、カウントしてくれますか?」


「わかった。3、2、1……開始」


その合図とともに、洞坂さんが目を開く。すると、僕の体は固まって動けなくなってしまった。


「な、何、これ……」


「ああ、これかい?可哀想だから教えてあげるね。僕の能力は【縛るものザ・バインダー】。目を合わせた人を10秒だけ拘束することができる。一度使ったら同じ人には15分間使えないけどね」


洞坂さんがそう喋っているうちに、僕は郷戸さんから攻撃を受ける。動けるようになったので立ち上がってみると、そこにはなぜか郷戸さんが3人いた。


「え……?郷戸さんが、3人……?」


僕がそう声を出すと、黎人くんがそれに対して返事した。


「それが郷戸先輩の能力、【三つの顔トリプルフェイス】だ!先輩は同時に2人まで分身を作ることができるぞ!」


ということは……3対5?数的にすごい不利だ、ありえない……。


いや、それどころかアミちゃんは練習場の端から端へと縮こまりながら転移している。ということは2対5。数的に勝てるわけがない。


しかも、相手はみんなこの道に慣れている人たちだから……


「止まって考えてる暇があるなら、せめて攻撃を避けなさい」


一崎さんの声が聞こえた直後、僕の背中に鋭い痛みを感じた。おそらく一崎さんに切られたのだろう。


そしてしばらくすると立っているのも難しくなり、その場に倒れ込んでしまった。


「ぐぅ……」


しばらくすると残りの二人もやられたのか、エボルが戦いの終わりを告げてきた。


「そこまで。第1戦は洞坂と一崎、郷戸の勝利だ」


「まぁ、第1戦だから仕方ないね。チャンスはあと8回もあるから気にしなくていいよ」


「とりあえず今から4時間、作戦を考える時間をあげる。それまでになんとか考えてきなさい」


僕たちはそう言われたので、3人から離れて次の作戦を立てる。


しかし、どんな作戦を立てたとしても、相当の戦いで積み重ねられてきた「精鋭」の技量の前になすすべもなく、何回挑んでも倒されてしまった。


「また負けたな……本当に勝てるのか?」


「すいません……私が弱気なばかりに……」


「これで8回目だな。次俺たちが勝ったら、お前らはクビになるぞ?」


「…………」


僕たちは3人になんとしてでも勝利するために、4時間必死に作戦を考えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る