第2話 ダーウィンズオーダー
木佐が殺されてから数日が経過した。
僕はあの時の彼女に渡された地図をたどり、目的地に来ていた。
「なんだこの施設……」
しばらくすると、あの時木佐を殺した少女がやって来てこういった。
「……来たんだ。こっちに来て」
そういって背を向ける彼女に僕はついていった。
するとそこには、いかにもな秘密結社のアジトがあった。
「どこですか、ここは?」
「話はまだ先。今はとりあえずここに座って。私が手続きをしておくから。あなたの名前は?」
「矢橋 洋です」
彼女はそういってどこかに消えてしまった。一体何が始まるのだろう……?
よく見ると僕以外にも2人座っている。両方とも僕と同じくらいの子で、片方は男の子、もう片方は女の子だ。
しばらくすると奥から黒いスーツを着た30代ほどの男性がやってきて、学校の教卓のような形をした机を前にして座った。
「ようこそ、ダーウィンズオーダーへ。私はここのリーダーを務めている。名前をエボルという」
「エボル?」
「ああ。英語で『進化する』という意味からとった言葉だ」
ダーウィン……進化……。
「はいっ!エボル先生!」
「エボルでいい。……なんだ」
「ダーウィンズオーダーの目的は一体なんなんですか?」
「……今それを話そうとしていたところだ。私の目的……それはすなわち『
「奴らは自分では何ももたらすことができないのに権利と介助ばかり求め、腐敗し……今や我が物顔で私たち異能者を酷使し奴隷だと思っている」
「君たちも見たからここに来たんだろう?自分の方が格上だと思っていた忌まわしき連中が我々の構成員によって粛清されていく様を」
確かに僕は見た。僕の彼女を殺しておいて無罪になったあの木佐を、あの女の子が殺した姿を。
「私も過去に似たようなことがあってね。それで
「で、でも……エボル様……私には戦える力がありません……」
「安心して欲しい。私は部下には細心の注意を払う。今から行く任務には、それぞれ1人ずつこちらの精鋭を割り当てる。君たち3人に1人ずつつくから、合計6人で行ってもらうことになる。あと私を呼ぶときに様付けは必要ない。エボルでいい」
「「「わかりました」」」
「これは君たちの入団試験でもある。もしこれで生き残れないようならば、君たちにはダーウィンズオーダーに入る資格がない」
「はいっ!エボル先生!作戦はいつ行われるんですか!」
「エボルでいいと言っているだろう。今から2週間後の、7月13日を予定している。その間にこの施設の隣にある廃アパートに泊まっていくように。安心して欲しい、1日3食の食事と寝る場所、あとは風呂やトイレもある」
「「「わかりました」」」
「それでは、今日はここまでにしよう。それぞれ指定の部屋に行くように」
そういうと、エボルは三枚の紙を取り出して、一枚ずつ僕らに渡す。僕が渡された紙を広げると、「302」という数字が書かれていた。
廃アパートに行く途中、僕たち3人はお互いの名前を名乗った。
「そういえば、名前言ってなかったな。俺は
「じゃあ私も名乗っておこうかな。
「僕も一応……矢橋 洋って言います」
その後も雑談を続けていると、僕たち3人はこの施設の隣にある廃アパートに辿り着く。そこは本当に「廃」なのか疑ってしまうほど綺麗に掃除されたところだった。
302……ということは三階か。僕は書かれた番号と同じ号室のところに行く。
ドアを開けると、そこには数日前に木佐を殺した女の子がいた。
「あ、どうも」
「……久しぶり」
僕がこの部屋に入った時、彼女はゲームをしている途中だった。
「なんでいるんですか?」
「ここが私の部屋だったから。私がアンタのことを担当することになったみたい」
「……名前はなんていうんですか?」
「
「よろしくお願いします、一崎さん」
僕と一崎さんは軽くお辞儀をする。その後、一崎さんはゲームを再開した。
一方、僕はスマホで電子書籍を読んで時間を潰した。持って来たものがスマホぐらいしかなかったから、しょうがなくだけれど。
午後6時になった時、僕の肩を一崎さんがポンと叩いてこう呼びかけた。
「夕食の時間が来た。食堂に向かおう」
そう言われて僕は立ち上がり、一崎さんの後をついて行った。
そこにはたくさんの人がいて、中には黎人くんやアミちゃんの姿もあった。
「メニューはどこにあるの?」
「ない。この食堂ではなんでも頼める。非戦闘員にそういう異能者がいるから」
よくそんな便利な異能者を、こんなところに呼べたな……。
「ご注文は?」
「レバニラ炒め、アサリとほうれん草のパスタ、ひじきと大豆の煮物をお願い」
「何なのその組み合わせ……」
「私は血を使うから、鉄分が豊富な料理がいいの。あなたは何が食べたい?」
「じゃあ……ハンバーグとオニオンスープとご飯」
「了解しました」
15分くらい後、僕と一崎さんの前にそれぞれが注文した料理が置かれた。
僕はそれを黙々と食べる。思ったより美味しいご飯で、少し安心した。
半分くらい食べた時に一崎さんの方を見ると、もうすでに食べ終わっていた。一崎さん、食事が早いなぁ……そう思って僕は残りも食べ始める。
出されたご飯を全て食べ終わると、僕らは各自食堂を出て、それぞれの部屋に戻る。一崎さんは僕が食べ終わるまで待ってくれていた。
「……一つ話がある」
「何ですか?」
「明日から、この施設の訓練場で私があなたを鍛えるわ」
まあ、そりゃそうか。
1日にペットボトルに収まるくらいの量の水を生み出せるだけの僕が、このままで戦えるわけがないか。
「あなたの能力は何?」
「水を生み出すことができます」
「わかった。じゃあ、明日から特訓を始める。今日はお風呂に入って寝て」
「わかりました」
僕は一崎さんにそう言われ、お風呂に入ったあと、布団を敷いて眠りについた。
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