第17話 自己強化はオマケ

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ルーム機能一覧


 ルーム 小  解放済

 ルーム 中  未解放  魔石値不足

 食料保存室  未解放  魔石値不足

 キッチン   未解放  魔石値不足

 浴室     未解放  魔石値不足

 トイレ    解放済


 自己強化 残 一

 「自己を残の値の数だけ強化する」

 体力 五

 腕力 五

 耐久 五

 器用 五

 五感 一

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 トイレとルーム小の確認が終わったから、最後は「自己強化」だ。


 金属板の「自己強化」に触れると「自己を残の値の数だけ強化する」と表示される。


 まんまじゃねぇか。

 具体的に詳細を教えろよ。文字数増やしただけじゃねぇか。


 項目にある「体力」「腕力」「耐久」「器用」「五感」の意味は、語感からもなんとなくわかる。


「体力」は、「長時間活動するための持久力」

「腕力」は、「瞬間的に力を発揮するための瞬発力」

「耐久」は、「健康を害することへの耐性」

「器用」は、「繊細に動き安くなる体の制御力」

「五感」は、「視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚」


 金属板の各項目に触れるとそれぞれ表示はされるけど……「五感」はなんなのその表示? それくらいは知ってますが?


 もしかして神か「ルーム」さんに、教養が無いなんて思われているのだろうか。


「一つだけ上げられるようですが、ロルはどうなさるの?」


「五感を上げようかと思っているよ。もし次があるなら、そのときに必要だと思った物かな」


「なぜ五感に? 他の四つの方が戦闘で有利になりそうですのに」


「ユリアって意外と好戦的? そうだなぁ。いざ戦うぞ! ってなったらもちろん他の四つがいいけど、五感がわずかでも敏感になれば危険なことに早めに気が付けるんだ。

 冒険者で斥候せっこうの上手い人って、恩恵で五感の優れている人が多くてさ。上位の人なんて、びっくりするほど遠くからの接近に気が付くんだよ」


 この国に入ってからはユリアも人目に付かない所では「ルーム」外に出て、冒険者の練習をしながら一緒に移動している。


 彼女は魔法がとんでもなく強力なので、遠距離戦ならオレよりも確実に強い。全く勝てる気がしない。


 しかし、追放令嬢とその夫だ。オレたちには秘密が多すぎて傭兵や冒険者を護衛で雇えずにいるから、戦力がない。


 基本は逃げだ。


 余裕を持って勝てる戦闘しかしないし、怪我を負うような戦闘は極力避けるべきだからね。

 道中でいやというほど学んだよ。今やオレの逃げ足はちょっと自慢できるほどだ。


 ユリアの「納得ですわ!」と眼をキラキラする表情が眩しい。光の妖精かな?


 ということで「自己強化」は「五感」に「残」を使ってみることに。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ルーム機能一覧


 ルーム 小  解放済

 ルーム 中  未解放  魔石値不足

 食料保存室  未解放  魔石値不足

 キッチン   未解放  魔石値不足

 浴室     未解放  魔石値不足

 トイレ    解放済


 自己強化 残 無

 体力 五

 腕力 五

 耐久 五

 器用 五

 五感 一 ◇

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「どういうことなの」


 数値が増えると思ったら菱形ひしがたの印がついた。どういうことなの。


「ロル。何か印が付きましたけど、どうです?」


「うーん。なんとなく。五感が鋭く……なっている……ような? 気がする? 今までの力が張るのと同じで、上昇幅は微々たるものみたいだ」


 眼を凝らしたり耳をすませたりしてみるけど、本当に微々たるものだ。


「それはそうですわねぇ。ロルの恩恵はルームですもの」


 ユリアの言うとおりだよね。「自己強化」はオマケで、オレの恩恵は「ルーム」だからな。


 五感以外の四つも「五」と表示されているけど、五倍どころか五割すら上がっていない。

 身体強化系の恩恵で一番弱いものよりも、出力はかなり低いと思う。


 無いよりは断然良いんだけどね。



 いろいろ終わるとまだ昼前。微妙な時間だなぁ。


 検証や実験は何事なにごともなく終わったから、三泊も宿を取らなくてよかったけれど、ユリアの安全には替えられない。


 宿泊時に食事は自前で取るからと伝えたので、宿の朝食昼食を食べに階下に降りなくても怪しまれはしない。


 というよりも、オレとユリアは逃亡中の身だ。安全が確保できるまで、外食をするつもりは一切ない。


 場所によっては宿や町の一部が、丸ごと追いぎに荷担しているヤバイ地域もあって、食事に毒を混ぜられることがあるからなぁ。


 知らん町じゃ警戒は解けないのだ。

 でも、知らない地域の情報を仕入れないわけにもいかないから、町や冒険者ギルドを素通りも出来ない。


 公爵閣下からいただいた高性能の魔法鞄に、保存可能期間の長い飲食物が大量に入っている。


 新鮮な物は狩りや採集、宿場町の商店や朝市などの市場いちば、行商からの購入で事足ことたりる。二人分だから量も必要ない。


 このまま宿の部屋で「ルーム」にこもりっぱなしは、もしも宿の人間が掃除やらで来たら変に思われる。


 よし。宿を引き払って進むか。



「お客さんもう行くんですか?」


 三泊の客が、一泊で出ていくなんて気になるよね。


「うん。この宿が嫌になったとかじゃないから安心して。ゆっくりと休めたよ。ありがとね。連れの体調が悪そうだったから三泊取ったんだけど、一晩ゆっくり休んだら元気になったみたい」


 という感じでユリアには、昨日より元気っぽく振る舞ってもらっている。「また密偵のようで楽しそうですわ」と張り切っていらっしゃいますね。かわいい。


「お気遣いありがとうございます。お連れさんは線が細いですから、街道の移動でお疲れだったのでしょうね。女の子に無理させちゃだめですよ。では、ちょいとお待ちを……はい。こちら返却分です」


 うん。これはオレが無理させているように思われているよな。計画通り!


「はい。確かに。また寄ることがあったらよろしくね」


 来れないけど。でも悪い宿じゃなかったから、次の国でもこのくらいの宿があるといいなぁ。


「お客さんもお連れさんも気を付けて。あ、ちょいお待ちを。お客さん街道を南から来たんでしたよね。北に進むんだろうけど、北側は国境の森が近くなるから魔物が変わるよ。冒険者ギルドは地元だからあまり気にしないだろうけど、初めて通る人は驚くかもしれないから。次の町より先に行くなら十分に気を付けて」


「げっ。マジかぁ。すげぇいい情報ありがとね。これ返却金だけど情報料で取っといて。マジで助かったから受け取って欲しい」


 これはマジで助かる。

 各地の冒険者ギルドで情報は入れて知っていたけど、現地の人の生の情報はすごい価値がある。


 冒険者ギルドも余所よそから来た身としては、現地の魔物や習慣の違いで戸惑うこともあったからなぁ。


 また商隊にでも紛れ込めるといいんだけど。


「遠慮なくいただきますよ。宿やってると、話せるお客さんが道中でなんかあったって聞くこともあってねぇ。なかなか心にくるもんなんですよ」


 あー。これは他の町の宿の人も言ってたな。

 やっぱ顔見知りになんかあるって、気分が良いもんじゃないからな。


 宿のおばちゃんありがとね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る