第57話 エルフ族 その3

 冒険者の国で教鞭をとってくれる人材を求めてエルフの里にやって来た。


 彼らは今食糧難にみまわれている。


 その理由を村長に聞くと。


「グレイトドラゴン――彼の竜が近辺で猛威を振るい始めた」

「ドラゴンですか、何でも非常に厄介な相手らしいですね」

「ああ、我らの魔法も竜鱗によって弾かれ通用しなければ、弓も通らない」


 ドラゴンは冒険者たちも口々に相手にしたくないモンスターとして名を上げる。

 戦闘狂のアルベルトも好敵手として認める手合いだ。


 なんでも猛威を振るっているグレイトドラゴンは縄張り争いに負けた個体らしく。


 ドラゴンもドラゴンで生き延びるために、大森林公園に行き着いたようだ。


 本来ならグレイトドラゴンがここらに来ることはないという。


 村長はこの事態を数百年に一度あるかどうかだと言っていた。


 ならここは、冒険者ギルドにドラゴンの討伐依頼だしますかね。


「お主らであれば倒せるというのか、あれを」

「募集掛けることはまずしますよ、内にはドラゴンを倒した実績もそこそこあるので」

「末恐ろしいことになっているな、人族は」


 と言うことで、トビトに言って今回のドラゴン討伐の査定額を出してもらった。

 トビトは懐からそろばんを出してじゃっじゃっじゃと査定額を算出。


「大体このようなものかと」

「いつもよりも査定額が多いけどどうして?」

「討伐依頼の見返りが大きい分、増額対象となりました」


 ちゃっかりしているな。

 まぁこの額であればB級以上の冒険者がすぐに集ってくれるだろう。


 二時間後、緊急のドラゴン討伐依頼にS級冒険者がやって来た。


「ドラクロアさん、この依頼であれば貴方の出番ですよね」


 現在の所、僕の冒険者ギルドには総勢で六人のS級冒険者がいる。

 引退勇者イクシオン、アルベルトにハクレン。

 最強執事のビィトに、彼――ドラクロアと言う名の仮面騎士だ。


 ドラクロアさんは僕から贈られたガスマスクを装着して、くぐもった声で言う。


「ドラゴン使いの私にとっては垂涎すいぜんのクエストだった」

「今回もよろしくお願いします」


 他にも腕に覚えのある冒険者たちがぞろぞろとエルフの集落にあつまり。

 あるものはエルフと仲良くなり、フルーツポンチを差し出されていた。


 ってあれユーリじゃないか。


「ユーリにエレナさんとポーラさんにアカネさん、君たちも来てたんだ」


 僕から声を掛けられると、ユーリは普段通りの明るさで応じる。


「オーウェン? ちゃお」

「ドラゴン討伐に参加するの? 気を付けて」

「大丈夫よ、私たちさらに強くなったんだから」

「頼もしいけど、怖くもあるね」

「任して、メリコさんのバフ料理も乗ってることだし、今回は大金星あげるわ」


 メリコも参加しているのか、参加人数が多くて見分けがつかないけど。

 集ってくれた冒険者にはエルフから詳細を聞き出してもらい、さっそく出発してもらった。


 僕が出来ることは冒険者の依頼達成を待つことで。

 トビトやハクレンと一緒に村長の家屋で待機していた。


 村長からお茶を持て成され、村長の対面にあった木造りの席に座る。


「すみません、エルフの集落に僕らのような部外者が立ち入ってしまって」

「例外中の例外だ、あれを倒すには主らの力が必要なのでな」

「その期待には応えますよ、所で一つ質問してもいいですか」

「答えられる内容であればな」


「では率直にお聞きしますが、村長さんはエルフではないですよね?」


 僕の質問に村長は白い眉をぴくりと動かした。


「そのことをどこの誰から聞き得た?」


 僕の目に村長は他のエルフ同様に映っている。


 長い四肢に長身で全体的に細い体格をしていて。

 顔のりんかくも細く、切れ長の目を持ち、外耳がいじはとがっている。


 僕からすれば彼の変装は看破できたものじゃない。

 が、こちらには女神から愛護される亜人のトビトがいる。


 トビトからの情報によると、村長のグラハムの正体は。


「貴方の正体はドラゴンの化身なんでしょ? どうして仲間を売るような真似を?」

「……貴様、本当にどこからそのことを聞き及んだ」


 そう言うグラハムの声音には怒気が乗っていた。

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