第53話 親方ー、地下からダンジョンがー!
徹夜明けの朝陽は眩しく、とてもすがすがしい気持ちで迎えられた。
僕やトビト以外のメンバーは冒険者なので、一日の徹夜ぐらい平気なようだ。
しかし僕は眠い、とても眠かったので。
「悪いけどメリコ、僕ちょっと仮眠取るね」
「仰せのままに、そのまま永眠にならないよう私達も気を付けますよ」
「君は相変わらずだね」
一夜漬けで作った街の説明はおいおいさせてもらうとして。
今はとにかく寝させてくれ!
◇ ◇ ◇
夢を見た。
それは数奇な縁を持ったユーリと、今はもういないジミーが手を取る光景。
眩くて、心の底から望んだ光景につい、涙を流す。
ジミー、君は今頃どこで何をやってるんだ?
夢に出てきた彼に問うと、持ち前の大輪の笑顔で答えた。
――お前らのそばにずっと居たいって言ったアレは嘘じゃねぇんだ。
彼の言葉は夢だというのに妙に現実味があった。
彼が最期に遺した言葉だけに、その光景は生きていた。
夢心地はとてもよかったけど、次の瞬間、僕は起こされてしまう。
「大変です坊ちゃま」
僕を夢から覚ましたのは料理ハンターのメリコだった。
「……お早う、何か起きた?」
「坊ちゃまが作った冒険者の国ですが、大変な欠陥があることが判明しました」
「欠陥? どんな?」
気づけば外から他の冒険者のざわめきが聞こえる。
――親方ー、地下からダンジョンがー!
「ここの地下でダンジョンが発見されたの?」
「ええ、さようです。さすがは坊ちゃまが見初めた大地ですね」
異世界で言うところのダンジョンとは、ハイリスクハイリターンな建造物で。
世界各地から発見例が出ている。
ダンジョン、と一言でいっても多種多様にあって。
例えば金銀財宝の山といったお宝ダンジョンもあれば。
例えばモンスターハウスといったアルベルト好みのものまである。
ダンジョンはある条件下で超常的に発生されるとされ。
今回は冒険者の国が地上に出来たことで、地下深くに続く大迷宮が出来ていた。
「ダンジョンの調査はしてるの?」
「目下調査中ですが、ピラミッドのようになっているらしいです」
報告によれば見つかったダンジョンの入口は狭く、付近にいるモンスターも初級。
しかし深部に行けば行くほど広大になっていき、モンスターも手強いらしい。
「アルベルト様が自主的に調査しているみたいですが、相当手強いらしいです」
「兄弟子がそういうってことはドラゴンもいるんだろなー」
ドラゴンは兄弟子の一番の好敵手らしい。
空を飛んで逃げるし、爆撃機のように魔法落としてくるし。
ドラゴンの皮膚は固くてナマクラ装備だと刃がとおらないとぼやいていた。
兄弟子の活動が気になり、ふと【ネット通販】にログインした。
そしたら所持ポイントがえげつない増え方をしていたので。
僕は急きょ兄弟子と連絡を取った。
冒険者手帳の最新型についている通話機能を使ってっと。
「もしもしアルベルトですか? 今もダンジョンですか?」
『ああ、ここは世界でもまれな難攻の怪物がモブ並みに湧くぞ』
「そうなんですね、熱中している所悪いんですけど引き返してもらえませんか?」
『理由は?』
「兄弟子が今いるダンジョンですが、冒険者の国の売りの一つにしたいんですよ」
ですから
「ということでご納得いただけませんか?」
『ふぅ、わかった。お前の頼みでなければ拒んでいたけどな』
「ありがとうございますアルベルト」
アルベルトとの通話を終え、件のダンジョンがどんなものか見に行った。
ダンジョンの入口は30年ローンのマイハウスのすぐ近くにあった。
一人がやっと通れる細く長い下り階段がダンジョンの入口だったようだ。
そう言えばトビトがあそこらへんを匂っていたな。
試しにダンジョンの入口から初級モンスターが湧くという地下一階に潜った。四方七メートル超の四角い部屋に低級モンスターが湧くモンスターボックスが壁に埋め込まれ、ゴブリンやコボルト、アサルトラビットなどが出現した。
僕の隣にいたメリコがA級冒険者の腕前をひろうするように瞬殺してみせる。
二階に行くと今度は部屋が二つあった、それぞれの部屋に傾向があって。
手前側の部屋はトラップ解除しないと進めない構造で。
奥手の部屋はちょっと難易度が上がった低級モンスターの巣になっていた。
やはり推測通りだ。
冒険者の国の地下に生えたダンジョンだが。
ダンジョンからモンスターが出て来ることもなく、基本は野放しでも管理できそうだ。
さらにダンジョンの性質は冒険者を手解きするような構造になっている。
トラップもあるし、恐らく宝箱も用意されているのだろう。
だから命名しよう、このダンジョンの名前は『冒険者の大迷宮』に決定だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます