第45話 戴冠式とその後
「と言っても、ユニークスキルは数日後には使えるようになりますのでご安心ください」
某日、僕は三人の王子にユニークスキル封じの薬を服用させた。
三人にサンドイッチを作ってもらい、その中に混ぜたんだ。
薬は無味無臭で透明に出来ているから、気を付けないと危ない。
薬によってユニークスキルを封じられた一人、青王子のラスカル様は腰を下ろした。
「……性質の悪いおふざけは止めていただけないか」
「その台詞は僕の方こそ言いたい」
「何?」
「事情があるにしろ、三人はそろって王位継承権を放棄すると言いましたが」
――おふざけが過ぎるのではないでしょうか。
「国の未来を左右するようなことを、三人はゲームのようにしていたので。僕は一人の国民としてその言葉を耳にした時、不愉快に感じました。ですのであえて言います、性質の悪いおふざけはもう止めましょう、三人とも」
僕の言葉に感化されてなのか、後日、僕はラスカルの戴冠式にまねかれた。
彼女の後援者である父は万感の思いでその光景を目にし。
「私はもう死んでも何も後悔しない」
とまで言っていたほどだ。
僕もいち早く冒険者の国を立ち上げたいんだけどなー。
そうなった時、父はどんな思いで見守ってくれるのだろう。
戴冠式が終わった翌日には例の新聞社が三人の王子たちのスクープ記事を掲載。
『ラスカル国王が生まれた背景にはオーウェンの痛烈な一言が存在した!?』
この記事によって僕は少数の支持を得られたので結果よし。
さらに、今回の件で赤王子のイーグルは本当に冒険者になった。
イーグルが冒険者になったことで、彼を支持していた層も冒険者になり。
五万人だった冒険者の数があっという間に七万人まで増加した。
これだから国政は舐めて掛かることができない。
冒険者となったイーグルを仕事部屋に呼ぶと、いつもとは人が違って見えた。
「やぁオーウェン殿、久しぶり」
「今日貴方を呼んだのはあることが聞きたたかった」
「どうぞ、オーウェン殿には二つの恩があるし、なんでも答えるよ」
「じゃあ聞くけど、なぜ放蕩貴族を演じていたので?」
以前のイーグルはちゃらんぽらんな性格で何事にもずさんな人間性だと思った。
しかし冒険者となった後の彼は卓越した目の持ち主として早くも評価されている。
それは彼の隠されたユニークスキルが関係していそうだった。
「……俺はね、ある特殊な目にずっと悩まされていたんだ」
「ユニークスキルですか?」
「そう、俺の目を通したら正しいことが見えてしまう。元々王族でその長男に生まれた俺の人生は一本道でさ、それ以外の人生観を知りたくなったんだ。そしたら周囲から放蕩貴族だと誤解されるようになっただけ」
演じていた訳じゃないさ、それが俺の本質だっただけで。
ユニークスキル持ちと言っても長短ある。
彼はそのいい例だった。
しかし今の彼は例のユニークスキルを封じる薬によって毎日生き生きとしている。
それまで歩んできた一本道がいくつにも広がり。
普通の人なら持っている迷いや、人生の問題にようやく接することが出来た。
「ありがとうイーグル、貴方の今後の活躍に期待します」
「期待しててくれオーナー、一刻でも早く新大陸を発見して、君に伝える」
これだけは誰にも譲れないクエストだ。
イーグルは例の大型クエストに挑む気満々だった。
熟年の冒険者も、相手が相手だけに鼻で笑い飛ばすこともそうはできないだろう。
なら彼からの吉報を心待ちにして。
僕も悪ふざけがすぎないように、仕事を全力で頑張ることにしよう。
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