第三部:冒険者の国編
第41話 三人の王子
ある日、父から帰省するよう要請が入った。
父からのメールによると。
『国王ギムレット様のご子息であらせられる王子たちがお前に会いたがっているようだ。先方はお前の都合に合わせてくれると言ってくださっている。出来るだけ早急に王子たちと面会して欲しい』
とのことで、僕は国の王子様たちと合わなくちゃいけないらしい。
王子がデキる人であれば、冒険者ギルドに入ってくれないかな?
といった幻想の一つぐらい持ったって罰は当たらないだろ。
さて、件の王子は三人いて。
それぞれに僕に用事があるようだ、問題はどこで面会したものか。
王子たちには護衛を付けるとして、S級冒険者が先ず一人必要。
王子たちがハクレンに一目惚れでもしたら大変なので、アルベルトが適任か。
今アルベルトには行方不明になったジミーの遺体を捜索してもらっているけど。
クエストを中断させ、帰還してもらうとしよう。
なので僕はすぐさまその旨を伝え、アルベルトに帰って来てもらった。
自室兼、宰務室でいつも通り業務に没頭していると。
「俺だ、入るぞ」
アルベルトは僕の部屋を訪れたのだが、妙にピリピリしているな。
クエストにあたっている時さながらの緊張感を兄弟子はまとっていた。
「空気がピリついてますね、どうしました兄弟子」
「ジミーの遺体捜索だが、なんとなくきな臭くてな」
「……」
ジミー、君は一体どこに行ったんだよ、誰にさらわれたんだ。
遺体になってまでジミーが利用されている状況に腹が煮えくり返りそうだ。
兄弟子は僕の嫌悪感を悟ったのか、それまでまとっていた緊張感を解いた。
そしておうような仕草で僕の頭に手をやり。
「ジミーは俺が絶対見つけ出してみせる、闇ギルドに何かされる前にな」
「頼もしいお言葉どうも」
兄弟子が帰って来たことだし、本題に入ろう。
「今回兄弟子に一旦帰還して頂いたのには理由があります」
「この国の王子たちの警護だろ? ひいてはお前の」
「そうです、王子は三人いまして、いずれも腹違いだそうです」
「ややこしいな」
「くれぐれも僕らの口から王子たちの出生について聞かないよう気を付けてください」
問題は王子たちと面会する場所だけど、どこがいいかな。
僕の自室にはできる限り知らない人を入れたくない。
向こうは王子だし、何かしらのアピールにつながればいいと思うんだけど。
「兄弟子は王子たちとの面会場所にご希望ありますか?」
「……ぱっと思い浮かばないな、つまりどこだって一緒だ」
「ですよね、それだったら故郷の村でもいいかな」
父が監督する領地で、僕が積極的に革命の手を入れたあの村でいいだろ。
そう思い、父伝えに王子たちに連絡して、向こうの承諾も得れた。
◇ ◇ ◇
後日、僕は三人の王子たちと故郷であるヴァレンタイン領で出会った。
待ち合わせ場所は領内にある大きなログハウスに構えられた喫茶店だ。
その髪色から赤王子として有名な長男のイーグルは先に店でコーヒーを頂いていた。
今年で十七歳になる彼は昔からおてんばが過ぎることで有名だった。
「お噂はかねがね聞いてるよ、革命王オーウェン」
「お会いできて光栄ですイーグル様、ご兄弟のお二人はどちらに?」
「訳あって俺が先に来た、弟たちは後から来る」
訳と言うのは一体?
僕も多忙の身だし、手短に用件を聞きだしたかった。
「オーウェン殿、俺は――王位継承権を放棄したいんだ」
彼に事情を聴き、奇遇にも僕は他二人の王子からも同じことを言われ。
結果的に思わぬ事態になることを、この時は知らなかった。
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