第39話 ユニークスキル【重力操作】
「ジミー!!」
僕がジミーと対峙していると、学校の方から魔族化した女性がやって来た。
先日、ジミーから許婚として紹介されたルーシーさんだろう。
「ジミー、学校の方は駄目だ、全て先回りされてて、計画がバレてた」
「ああ、その話はオーウェンから聞かされたよ。しょうがねぇなぁ」
ふと、閃光が瞬いた。
稲妻のように一瞬輝くと、ジミーの隣に剣を構えたユーリがいて――ッ!
ユーリはジミーの首元に刃を走らせる。
ジミーはユーリの剣を二本指でつまむように止めていた。
「チ、やるじゃないジミー」
「このくらいは出来て当然だろ、俺はA級冒険者だったことだしな」
ユーリはとっさに剣の柄から手を離し、僕の隣に並び立つ。
「A級冒険者だったって何? ジミーは寝返ったの?」
「見たらわかるだろ、俺は魔族化したんだ」
「馬鹿じゃないの?」
「標的の一人から出向いてくれたことだし、二対二になったな」
彼の台詞に僕は聖剣を握る手に力を込めて構えた。
ユーリが僕の前に出て、守るようにしている。
「オーウェンが戦えないのは知ってるでしょ、一対二よ」
「だってさオーウェン、お前ユーリからも戦力外あつかいされてるじゃねーか」
少し傷つく。
けど状況が状況なので、僕は吠えるしかなかった。
「ユーリ、今の僕は昔とは違うんだ、一緒に戦おう!」
僕はジミーと戦う、戦わなくちゃいけないんだ。
だからユーリはルーシーさんを頼む。
ユーリは僕の言葉を信じてくれたようで、ルーシーさんに剣を構えた。
ルーシーさんはユーリの剣を恐れたようすで、ジミーの外套を引っ張る。
「だ、駄目だ、私じゃああの女には勝てない」
「んん? そうなのか?」
「天然! こんな時まで間の抜けた声を出すな!」
ルーシーさんから突っ込まれた時、ジミーは黒い聖剣を逆手で握りしめていて。
剣はルーシーさんの胸を貫いている。
「え……え?」
「ならお前要らないってことだよな」
ジミーに刺された彼女は口から酷く吐血して、前のめりに倒れて動かなくなった。
倒れた許婚にジミーは目もくれず、ユーリを見ていた。
「ユーリのユニークスキルで助けられるかな?」
「……無理、魔族には私たちのユニークスキルは効果しないから」
「残念だ、俺はまた、ユーリのせいで大事な人を失った」
「――ッ!」
ユーリはジミーに肉薄すると、どこからか取り出した光る剣で突いた。
胸の中央目掛けて放たれた突きにジミーは後ろに飛びのき、
それと同時にジミーはユニークスキル【重力操作】を発動させる。
「ユニークスキル!?」
ジミーは自分の手前に重力の穴をつくり、ユーリを引き寄せ。
彼は右手の拳でフック調に鋭く殴りつけた。
ユーリは吹き飛ばされ、右にあった都の家屋の壁に穴を開けた。
「っジミーも、ユニークスキルを」
ダメージを負って倒れているユーリにジミーは強者の足取りで近づく。
「お前は俺の手で殺す!!」
「させるはずがないだろ」
「っ!?」
ユーリに迫ったジミーに、僕は横から突進を仕掛けた。
ジミーはまた誤解していたみたいだ、組み付いた僕に驚きを隠せない様子だ。
背後に伸びる緩やかな上り坂に身体を打ち付けるも、ジミーは体勢を整える。
「村に居た時とは立場が逆になっちまったな」
「そうかもね、僕はユーリにちょっかいをかけて、ジミーが守って」
「今だから言うけど、俺はお前に感謝してるんだぜ」
僕は彼と言葉の応酬をしつつ、聖剣を構えた。
「あの時、お前は家の権力をつかっていれば、俺を始末することだってできたんだ」
「いや、あの時の僕の家にそんな権力はないよ」
「そうかぁ? 俺がお前の立場だったら親父さんに泣きついてたぜ」
二人で会話していると、背後からユーリの声が木霊した。
「上!」
言われて上を向くと、黒い大きなボールがあった。
あれはジミーがユニークスキルで作った重力の塊だ。
「ここでそんなものを使うなあああああああッ!」
その塊が落ちて来れば周囲の家屋は潰され、中にいるだろう住民が死ぬ。
標的となっていた僕は上空に跳躍し、被害をおさえようとした。
ジミーはちゅうちょなしに僕に向かって重力の砲弾をぶっ放していた。
「じゃあなオーウェン! 貴族だからって調子にのるなバーカ!」
不慣れな戦闘、それもやったこともない空戦だったから。
街に被害を出さないことで頭がいっぱいで。
僕はジミーの攻撃を避けられそうになかった。
しかし――彼が放った重力の弾は不思議なことに目前で消滅する。
ジミーはおかしいなと首を傾げていると――っ。
「……あらら、ユーリ」
ジミーはユーリから逆袈裟斬りのかたちで身体を両断されていた。
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