第13話 新機能

 実質的にマンションは母さんのギルドメンバーの寮になった。

 僕たちは引っ越し業者のようにみんなの引っ越しを手伝う。


 すると感謝されるんだ。


「ありがとうオーウェン、これほんのお礼」

「いいんですか? ありがとうございますキース」


 ギルドの若手で黒いバンダナ姿のキースはお礼といって金貨3枚くれた。

 他のギルメンからも駄賃をいくらか頂いたし。


 何かの対価を得ることは嬉しい。


 ギルメンの引っ越しが終わった後はみんな通常業務に戻った。


 みんなと一緒にギルドハウスに向かい、今日も今日とて労働する。


 僕は母さんにユニークスキルの進化によって追加された機能を説明した。


 先ず、以前まで一日のタイムラグがあったけど、それが解消された。


「へぇ、いいわね」

「他にも配達先を指定できる機能も追加されたし」

「なるほど、他には?」

「購買の時に使えるクーポン券が発行されるらしいけど、こっちは確認してない。あと」


 最後の一つは【ネット通販】にこちらから売り物を出品できるようになったらしい。

 その新機能を伝えると母は真剣な眼差しで虚空を見詰め始めた。


「出品するものはなんでもいいの?」

「試してないからわかりません」

「じゃあ試してみましょう、例えばこの花瓶から」


 母さんは応接室のテーブル上に置かれた花瓶をネット通販の画面に入れる。

 すると以下のメッセージが出てきた。


『こちらの品をお売り頂くということでよろしいですか?』


 そのメッセージと共にイエスノーのボタンが出て来て。

 母さんはイエスを押すと、メニューに『返品』なる項目が出来て。


 直感的に返品メニューを選ぶと、売値のポイントを差し戻すことによって花瓶が返って来た。


 母さんは新機能の内容を確認して、英気に満ちた顔を取りこう言う。


「オーウェンに任せたい事業を思いついちゃった」

「は?」


 と言うと?


「ホーネットさんって覚えてる?」

「え、ええ、よくしてもらったので」


「いいオーウェン、貴方は私や父さんの子供だから今まで不自由なく過ごせていたの。だけど世の中には色んな事情から仕事に就けず、結果的に明日生き延びれるかどうかさえわからないって思えるぐらい貧しい生活をしている人もいるの」


 ホーネットさんはそのことを憂いていたらしく。

 彼の人生における命題とも話しているらしい。


「新しく追加された機能は、彼にとって朗報になると私的に思うのよね」

「僕に雇用を生めって言うんですか?」


 九才の自分が? とは思うが、やってやれなくはないとも思う。

 なぜなら僕には前世というアドバンテージがあるし。


 何より女神様から与えられたユニークスキルがある。


「今ホーネットさんへの書状を書くから、それを持って彼を訪ねなさい」

「……わかりました」


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