第11話 プレミアモード
ハクレンとユーリを交えてユニークスキルを堪能している。
ユーリは慣れ切ったようすで身を乗り出し、ハクレンの衣装を選んでいた。
「ハクレン姉さんには水色が似合うと思う」
「ユーリさんは黄色のイメージだから、これとかいい?」
はっふはっふ、ハッフルパフ!(意味不。
楽園気分に浸かっていると、珍しく父がやって来た。
「オーウェン! と、お二人さん、お楽しみの最中悪いがちょっと家の息子借りるな」
父は僕の腕をつかんで廊下に連れて行く。
「何かあったのですか?」
「イクスにお酒を飲ませたか?」
「いいえ、師匠は勝手に飲んでいました」
「あれの酒癖は本当に悪い、今後は飲ませないよう注意して欲しい」
ああ、納得。
「それはそうと、イクスが言っていたのだがな」
「はい」
「お前のユニークスキルには伸びしろがあると、何か変わったことはあったか?」
「あ、師匠のおかげでスキルに関する新しい発見がありました」
それはスキルで使用するポイントはモンスターを討伐しても入手できること。
父にそのことを伝えると、安堵していた。
「つまり、イクスをお前につけた成果はあったんだな?」
「えっと、そうなりますね」
「おいおい、イクスは俺が無理言ってお前の家庭教師になってもらったんだ」
だから、なるべく歯切れの悪い返事は寄越さないでくれるか。
などと、父も父で苦労しているみたいでご苦労様です。
その時父と二つの約束を交わした。
一つは師匠にお酒を与えないこと。
もう一つは師匠に関する報告は断言することだった。
そこにユーリがひょっこりと顔をだし、僕の服のすそを引っ張った。
「もういい?」
父も彼女にはでれっでれで、目じりを下げて応対していた。
ユーリに手を引かれ、とてとてとした足取りで戻り。
二人は先ほどの続きをし始め、お互いの衣装を選び合っていた。
ハッフルパフ。
父が遠巻きにその光景を見届け、にやけ面を残して立ち去ると。
一階から異臭がした、この酒臭さは師匠が帰って来たらしい。
僕の家に臭いがこびりつく前に対処したくて。
【消臭スプレー 800ポイント】
ネット通販で消臭スプレーを購入したのはいいが、届くの明日の朝じゃんか!
僕のユニークスキルは便利だけど、このタイムラグだけはなんとかならないかな?
「へっへっへ、ただいまぁ」
「師匠、今すぐにお風呂に入ってください、今すぐにです、これは強制です」
「なら一緒に入ろうオーウェン、ユーリにハクレンも」
おま!?
なんて言うことがあり、僕は理性と葛藤させられてしまった。
その後、師匠を連れて僕はお風呂に入った。
ハクレンとユーリは僕たちの後に入るようお願いする。
理性が勝ったのだ、褒めて欲しい。
師匠と一緒に湯船につかり、酔い覚まし効果のある商品を探していた。
師匠はまぶたをつむり、うぃ~、とジジイ臭いことになっていた。
その時だった、僕のユニークスキルが――
『ユニークスキル、ネット通販を日ごろからご利用くださりありがとう御座います』
「し、師匠、スキルが勝手にしゃべり始めたんですが?」
「んー? スキルだって言葉の一つや二つ喋るだろ」
そうなの? こんなこと今まで初めてで。
『普段からご愛顧くださるオーウェン様に感謝の意を込めまして、ネット通販のプレミアモードが解放されました。プレミアモードのご説明をお聞きいたしますか?』
は、はい。
説明によると、ネット通販のプレミアモードとは一か月の利用料500ポイントを払うことで利用可能で、そのモードに加入しておくと購入した品はそくざに配達されるらしい。
これは革命的なことだと僕は僕のスキルに起こった異変――進化を喜んだ。
『またプレミアモードに加入して頂くと副産物として以下のサブスクリプションが付いてきます。合わせてご確認ください』
「えっと、1:ネット通販に使用する倉庫の拡張機能、2:毎月発行されるクーポン券の利用機能、3:所有物をネット通販で売却することが出来る機能……これはすごい」
毎月500ポイント払えばいいんだろ?
絶対に入り得だと思った僕はプレミアモードに加入したんだ。
その後、師匠と一緒にお風呂から上がる。
「うぃー、いー気持ちだぜ。ハクレンとユーリちゃんもお風呂いかが?」
師匠がお風呂をすすめたけど、二人は二階のベランダから外を眺めていた。
「ユーリ、何見てるの?」
「オーウェン、外にでっかい建物が出来てる」
え? そう言えばネット通販のサブスクリプションで倉庫の拡張機能がどうのこうのってあったような……予感がした僕はベランダへと向かうと、右手の方向にビルが建っているのだった。
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