第9話 ポイントの入手方法
これまで想像もしてなかった。
ぼんくらだと思っていた師匠の推察だと。
僕のユニークスキル【ネット通販】で必要なポイントはモンスターを倒しても入手できる。
師匠はそのことを証明するように村から離れた危険地帯に僕を連れて行った。
湿地帯のそこは多種多様なモンスターが生息している。
兄姉弟子のアルベルトとハクレンが師匠の言いつけでモンスターを討伐していた。
「やってるな二人とも」
師匠は二人に声を掛けると、僕も参加させるよう命じた。
アルベルトは眼下に映る僕に対し。
「オーウェンは戦闘したことないんだよな?」
「はい」
「俺とハクレンの後ろに隠れて、まずは見ることに徹した方がいい」
アルベルトは剣を鞘にしまうと、ハクレンに声を掛けた。
ハクレンが杖を地面に打ち付けると強烈な衝撃波が周囲に駆け巡る。
その衝撃波で湿地帯の地面にいた土壌モンスターのオオミミズが顔を出す。
すかさずアルベルトが抜刀し、オオミミズの胴体を両断していた。
すると画面左上に表示されていたポイントは100ポイント増加した。
「し、師匠、師匠の推察は本当でした」
「よっしゃ! 敵の強さに応じてポイントが増えるんだな?」
「はい」
確認を取った師匠も戦闘に加わり。
元々勇者だった彼は鬼人の如き強さを見せつけるよう、湿地帯のモンスターを一掃していた。
僕はネット通販の画面越しに三人が駆け巡る姿を目にし。
その日生まれて初めて羨望をおぼえた。
師匠と兄姉弟子の獅子奮迅の活躍のかいあって、夕方には80万ポイントほど溜まっていた。内50万ポイントを使用して師匠の言いつけ通り転移魔法の魔導書を注文した。
翌朝、転移魔法の魔導書はガレージの細い本棚に置かれていた。
師匠に渡して使い方を聞こうと思い、居間に向かう。
彼は僕から渡された魔導書をじろじろと観察していた。
「本物だな、これさえあれば転移魔法が使えるぞ」
「ど、どうやって使うんですか?」
例の兵士の娘さんの誕生日プレゼントを抱え、あせって聞いたら。
「オーウェンの魔力量じゃ使えないよ」
「なんだよ期待させやがって!」
「はははは、ハクレンなら使いこなせると思うぜ、頼んでみな」
師匠に呼ばれた姉弟子のハクレンは透き通った丈の短い白髪をふわっとなびかせ、こっちを向いた。師匠の手から魔導書を奪い取り、彼女にお願いすると虚空を見詰めていた。
「……替えの服が欲しいんだよね」
「この後で購入させていただきます!」
ハクレンは僕の頭をよしよしと撫でて、魔導書を手にし、件の都市へと転移してくれた。
しかし困った、あの兵士さんのお宅ってどこ!?
都市は僕の住む村とは違い、大勢の人が行きかっている。
通りに面した建物が右に左に軒並みをつらねていて。
この多くの家屋からピンポイントで見つけ出すなんて不可能だ。
困っていると、ハクレンが後ろからぼそっと声を掛けた。
「私、他にも占いとか得意だよ」
「占い?」
「占いでその人の家を導きだせるよ」
それってダウジングロッドみたいな感じかな?
わらにもすがる思いでハクレンの顔を覗き込むと。
「新しい装備品とか、下着とか、色々欲しいんだよね」
「この後で購入させていただきます!」
そう言うとハクレンはまた頭をよしよしと撫でてくれた。
して、僕はハクレンの占いでお目当ての兵士の家の前まで向かう。
道中ハクレンの占いは信じられるのか疑問視していたけど。
家の前にホーネットさんがいたので、即座に声を荒げた。
「ホーネットさん! よかった、あの、一日遅れてしまいましたが、これ例の品です」
「おお、わざわざ届けに来てくれたのか、しかし」
ホーネットさんは僕が差し出した箱をいぶかしがった様子で見詰めている。
「何か問題ありましたでしょうか?」
「例の誕生日プレゼントであれば、お母様よりすでに頂いているよ」
……?
じゃあ僕が手にしているこれはなんだ。
「開けてみなさい、責任なら私が取ろう」
「は、はぁ、じゃあごめんなさい、開けてみます」
箱の包みを破って中を見ると、母からと思わしきメッセージカードが入っているだけだった。
『残念賞、息子である立場を利用して私からお客を引き抜こうとしないこと、これが今回の代償ってことで、ちゃんちゃん』
思わず、気が狂いそうだった。
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